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精神医学分野

概要

精神医学は精神疾患から健康人の精神衛生まで、ヒトの認知・行動を広く扱う臨床医学の一分野で、探求の手段もその目的に応じて生理学、生化学、薬理学、公衆衛生学といった伝統的なものから、心理学など人文学的なものや、認知行動科学、コンピューター解析など多彩です。精神障害は21世紀の人類の健康を損ねる最大の疾患群のひとつとしてますます重要視されています。精神医学が扱う領域は大きく広がり、病態や治療法の解明などの研究成果が生み出されて行くことに、社会からの期待が非常に高まっている分野であります。研究の意欲にあふれる学徒には学問的充実感・達成感が得られる、興味の尽きない研究分野であると思います。

研究可能テーマ

1.臨床精神薬理学
  各種精神疾患に対する合理的な薬物療法の探求、薬物療法の標準化・最適化を目指した研究分野です。具体的なテーマとしては、薬物療法の効果測定や、有効性、安全性の予測因子の抽出、評価尺度の妥当性の検討などを行っています。
 
2.精神薬理学(基礎)
  精神科薬物療法の最適化には基礎的な治験の集積も欠かすことはできません。当教室では、専用の実験設備を備え、基礎医学的実験手法を用いて合理的な薬物療法の探求も継続して行っています。現在は、ストレス・記憶・発病脆弱性といったことを主要テーマとして、統合失調症モデル動物における、ストレス負荷時の脳内ドパミン変動や向精神薬の効果検証を行っています。われわれの実験室から得られた知見は、臨床薬理学に応用され、当教室の考える薬物療法の最適化に寄与しています。
 
3.リエゾン精神医学、緩和ケアに関する臨床研究
 当教室は伝統的にリエゾン精神医学に力を入れてきました。さまざまな診療科と協力し、積極的な研究活動を行っています。現在、臨床研究が進行中の領域としては、臓器移植(腎臓、肝臓、心臓)、全身性エリテマトーデスなどの膠原病・リウマチ疾患、循環器疾患、せん妄などがあります。また、がん緩和ケアチームの一員として、診療科の垣根をこえた研究活動も行っています。

スタッフ紹介

西村勝治 教授・基幹分野長 専門領域 リエゾン精神医学
赤穂理恵 准教授      専門領域 
稲田 健   准教授        専門領域 精神薬理(基礎・臨床)
高橋一志 准教授(附属八千代医療センター兼務) 専門領域 臨床精神薬理
押淵英弘 講師(兼務)   専門領域 精神科薬理学、リエゾン

基礎研究臨床研究

■基礎
・ストレス脆弱性モデルラットの情動記憶障害に対する向精神薬の薬理学的効果解析
・NMDA受容体機能低下モデル動物を用いた薬理学研究
 
■トランスレーショナル
・精神疾患の診断におけるepigenetic biomarkerの開発
・双極性障害におけるセロトニントランスポーターのエピジェネティック制御
・セロトニントランスポーターの遺伝子多型と疾患・治療反応性との関連
・気分障害における炎症関連蛋白との関連
・GABA機能障害仮説に基く1H-MRSによる初発統合失調症の定量的診断の確立
 
■臨床

・治療抵抗性統合失調症に対する治療戦略のためのデータベース構築に関する研究
・アルコールを含めた物質依存に対する病態解明及び心理社会的治療法の開発に関する研究
・薬物依存症及び中毒性精神病に対する治療法の開発・普及に関する研究
・睡眠薬の適正使用及び減量中止のための診療ガイドラインに関する研究
・睡眠障害治療薬の臨床試験及び評価方法のあり方に関する研究
・統合失調症と感情障害の中間型に対する疫学調査
・臓器移植希望者(レシピエント)に対する心理社会的評価のためのガイドラインの作成
・生体臓器ドナー候補者の自発的意思を確認するためのガイドラインの作成
・生体腎移植ドナーの意思決定と満足度に関する前向きコホート研究
・腎移植患者におけるアドヒアランス不良の早期発見・介入のためのツールの開発
・小児思春期に腎移植を受けた患児と家族への心理教育に基く支援に関する研究
・植込み型除細動器患者の心理的適応と認知行動療法的心理教育の効果に関する研究
・集中治療室におけるせん妄の評価方法と治療に関する研究
・コンサルテーション・リエゾン・サービスの効果検証に関する研究

医学研究科