東京女子医科大学

当科は、先々代の福山教授、先代の大澤教授らの功績により、小児神経・筋疾患領域において世界的にも有名で、全国からたくさんの患者さんにいらしていただいております。最近増加している不登校など児童精神の問題にも力を入れており、心理士3名が常駐してカウンセリングなど対応に当たっています。2013年から、病棟の診療グループに専門性を明確するため、神経・発達、てんかん、筋疾患、免疫・アレルギー・消化器、代謝・内分泌・糖尿病の各診療班を立ち上げ、効率的かつより広域な診療分野に対応しております。また新たに、2015年度には「血液・腫瘍班」を新生しました。本院では当科の他に、循環器小児科、腎臓小児科、新生児科、小児外科、脳神経外科小児部門と統合し「小児総合医療センター」を2010年に発足し、さらに附属足立医療センター、附属八千代医療センター間の診療・教育・研究に関する密なる連携体制の確立を目指しております。この連携システムにより、幅広い小児診療に触れジェネラリストとして活躍することもでき、スペシャリストとして一つの領域を深く掘り下げて留学などを経験しながら国際競争力のある診療や研究活動を展開していくこともできる小児科医の育成に取り組んでいます。

卒前教育の基本コンセプトは、「講義・実習時間の3分の2は『国家試験を十分に研究した成果を反映したもの』、3分の1は『初期研修で役立つもの、臨床の面白さを伝えるもの』」としています。卒後教育は、2017年から実施された小児科専門医制度に基づき、総合研修プログラムを作成しました。前述の小児総合医療センター、附属足立医療センター小児科・新生児科、附属八千代医療センター小児科・新生児科・小児集中治療科と連携すると、全病床数270床以上の国公立こども病院レベルの病床数を誇ることから、このセンター間をスムーズにローテートできる画期的なものです。このほか、支援施設、関連施設との連携により、血液・腫瘍疾患の専門的研修、地域医療研修も充実しており、各研修医の希望に添いながらさまざまなテーラーメイドのオプションを準備しています。

当科のこれからのコンセプトは、「『治らない』から『治る』へ」です。例えば、遺伝子に異常のある病気は、かつては診断されたらあとは「見守り」しかありませんでした。今後は、こうした「治らないとされていた神経・筋疾患」に、「細胞治療」などの新しい治療を取り入れていく方針です。その他、「川崎病」の原因、世間を騒がせている「食物アレルギー」の寛解の鍵についても、ごく近い将来、私たちの手によって画期的な発表をする予定です。昨今、難病の治療戦略の一つとして腸内細菌叢の調節が注目されていますが、当分野では、従来のものとは比較にならない高精度の分子生物学的手法による腸内細菌叢の分析を行っており、この技術をもとに、「早産の予防」「肥満・生活習慣病の予防」「炎症性腸疾患の再発予防」「がんの予防」など極めて新しい分野への挑戦を続けています。