ごあいさつ
令和2年4月1日付けで東京女子医科大学歯科口腔外科学講座顎口腔外科学分野教授を拝命致しました岡本俊宏と申します。
当分野では難易度の高い抜歯、歯の破折、脱臼、顎の骨折などの外傷、歯を原因とする炎症、顎骨嚢胞、口腔良性腫瘍、口腔がん、口腔粘膜疾患、顎関節疾患、口腔顔面痛などの口腔外科疾患や口腔インプラント治療を中心に行っています。また薬剤の影響で血が止まりにくい場合や、心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病などの全身疾患を有する患者様の抜歯や歯科治療、口腔機能低下症への取り組みも各診療科と連携して行っております。
口腔がんは1975年には2,100人でしたが2015年には7,800人と増加傾向にあります。2018年度に総務省が発表した推計人口によると、70歳以上人口の総人口に占める割合は20.7%で、初めて2割を超えました。口腔がんの年齢的特徴として70歳代が最も多く、50歳以上が約80%を占めており、今後さらに口腔がんの患者数が増加することが予想されています。当科で立ち上げた画像連携システムを通じ、地域の先生方と協力しながら口腔がんの早期発見、早期治療に尽力したいと思っています。
また近年、周術期口腔機能管理という分野が注目されています。これは各種のがん、脳卒中や心疾患、人工股関節置換術、臓器移植手術に対する全身麻酔手術、造血幹細胞移植、抗がん剤投与、放射線治療などの前後に口腔機能管理(口腔衛生指導、口腔清掃、必要な歯の治療・抜歯)を行うことで、術後の誤嚥性肺炎、術後感染、口内炎などの合併症を予防、軽減させるというものです。
それ以外にも骨粗鬆症やがん治療に使われる骨吸収抑制薬や血管新生阻害剤による薬剤関連の顎骨壊死も増加しており、これらの薬を使用するにあたって、薬剤内服開始前に口腔管理を行い、感染源の除去をすることが顎骨壊死の予防に大変重要であると考えています。従って、このような患者様の口腔機能管理に関してもかかりつけ歯科医や院内他科の先生方と連携し、医療連携・支援を行ってまいります。
最後になりますが、これからも患者さんお一人お一人に寄り添い、コミュニケーションをとりながら最善の医療を提供するように努力していきます。今後とも一層のご指導ご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。