口内炎・口腔粘膜疾患
口腔粘膜の疾患は、口腔内組織に白斑や紅斑、びらん、水疱、潰瘍、腫瘤、色素沈着などが見られる疾患です。原因としては、物理・化学的な刺激や細菌・ウイルス・真菌感染、アレルギー性疾患、先天異常や発育異常、全身疾患によるものなどが挙げられます。
また、口の中の粘膜に起こる炎症を総称して口内炎といいます。誰しもが経験する疾患ですが、なかなか治らない場合や何度も再発するようであれば、詳しい検査が必要となる場合があります。
主な口腔粘膜疾患
口腔白板症
口腔白板症は、摩擦によって除去できない白色の板状あるいは斑状の角化性病変です。前癌病変のひとつであり、4.4〜17.5%が癌化すると報告されています。頬粘膜や舌、歯肉、口底、口蓋に多く見られます。高齢者に好発し、50〜70歳代に多く、性別では男性に多い傾向があります。通常、自覚症状はありません。
口腔扁平苔癬
口腔扁平苔癬は、口腔粘膜の角化異常を伴う慢性炎症疾患です。見た目では単純な線状から網目状、レース状、環状を呈するもの、発赤、びらんを伴ったものがあり、症状としては刺激痛や口の荒れを認めることが多いです。前癌状態のひとつであり、悪性化の頻度は0.4〜6.0%と報告されています。両側の頬粘膜や舌、歯肉に多く見られます。
天疱瘡
天疱瘡とは、表皮あるいは粘膜上皮の細胞相互間の結合が失われ、上皮内に大きな水疱を形成する疾患です。代表的なものに尋常性天疱瘡があります。口腔では歯肉や口唇、頬粘膜、舌、口蓋粘膜に水疱が好発し、痛みを伴います。特徴的なのが、病変周囲の一見正常な皮膚を擦ると表皮が簡単に剥がれ、出血性びらんとなります(ニコルスキー現象)。また、天疱瘡に似た所見を呈する類天疱瘡というものがあります。これは表皮下や粘膜上皮下に水疱を形成することが特徴です。同じく、口腔では口蓋や頬粘膜、歯肉などに水疱を形成し、破れるとびらん、潰瘍となります。
口腔カンジダ症
カンジダ属の真菌による口腔感染症です。日和見感染であり、免疫力の低下に伴い発症します。また、抗菌薬の使用による口腔内細菌のバランスの変化,口腔内の清掃不良や義歯装着などでも誘発されます。口腔内の違和感、ピリピリ感、接触痛が主な症状です。肉眼的には、口蓋や頬粘膜、舌などに容易に剥離できる白苔が見られたり、粘膜萎縮、広範囲の紅斑が見られたりします。乳幼児や高齢者に多く見られます。