口腔がん
舌がん・歯肉がん・頬粘膜がん・口底がん・口唇がん・唾液腺がん
1 口腔がんとは
舌、上下の歯肉(歯ぐき)、頬の粘膜(ほっぺたの粘膜)、口蓋(上あご)、口底(舌と下の歯ぐきの間)、口唇(くちびる)など、口の中にはどこでもがんができます。口腔がんのうち約60%は舌がんです。最も発症する年齢は60代ですが、20~40代の若年者の発症も近年増加しており注意が必要です。90%は扁平上皮がんという種類のがんで、その他には唾液腺がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫(メラノーマ)、肉腫などが発生します。
2 原因
口腔がんが発症する原因は明らかになっておりません。危険因子として喫煙や過度の飲酒、虫歯や適合の悪い詰め物、入れ歯、傾いた歯などが粘膜にあたることによる物理的な刺激、口の中の不衛生などがあります。また、口の中にできた白板症や紅板症,扁平苔癬,乳頭腫などの粘膜の病気は悪性化(がん化)する可能性があるため切除や経過観察が必要です。
3 症状
腫瘍の広がりの特徴から表在型(粘膜の表層で広がるもの)、内向型(内側に向かって広がるもの)、外向型(外側に向かって広がるもの)に分けられています。病状が進むにつれて食べる、飲み込む、発音する機能が障害されていきます。また、首のリンパ節に転移した場合はリンパ節が腫れます。さらに進行すると、肺、骨、肝臓などの他の臓器に転移していきます。
以下のような症状がある場合は、速やかにかかりつけの歯科医院や口腔外科を受診されることをお勧めいたします。
- 口内炎が2週間以上経っても治らない
- 舌やほっぺたの粘膜にしこりがある
- 舌や口の中の粘膜が白くなっている
- 表面がざらざらしたできものがある
- 出血しやすい口内炎がある
- 抜歯した後の歯茎の治りが悪い
舌がん
内向型
外向型
表在型
4 治療
口腔がんの治療は、手術、放射線治療、抗がん剤治療、免疫療法を単独もしくは組み合わせて行います。当院は日本がん治療認定医機構、日本口腔腫瘍学会、日本口腔外科学会などの認定研修施設であり、口腔がんの治療は口腔がん診療ガイドライン、頭頸部がん診療ガイドラインに準じて行っております。また、形成外科、耳鼻咽喉科、放射線腫瘍科、化学療法科、リハビリテーション科、集中治療科などの関連診療科とともにチーム医療で診療にあたります。
手術
がんは目に見える範囲にとどまらず周囲に広がっています。そのため、がんの周囲の正常な組織もある程度含めた切除が必要です。当科ではCTやMRI、PET-CTなどの画像検査に加えて、手術中にヨードによる生体染色や迅速病理診断(ゲフリール)を組み合わせることで確実ながんの切除を行います。また、術後の口腔機能を考慮し、切除が広範囲になる場合は形成外科の協力のもと再建手術を行います。首のリンパ節に転移の疑いがある場合などは頸部郭清術も同時に実施します。口腔がんの手術は、食べる、飲み込む、発音するなどの口腔機能に大きく影響を与える可能性が高いため、当科ではリハビリテーション科や言語療法士等とともに術後のリハビリテーションに積極的に取り組んでおります。
遊離皮弁による舌の再建術
放射線治療
がんが大きく、手術では切除が困難な場合や術後の補助療法(再発予防のための治療)として放射線治療を行います。当院では強度変調放射線治療(IMRT)という、正常な組織への放射線照射をなるべく抑えつつ、がんに集中して照射ができる放射線治療装置を用いた治療を行っています。抗がん剤治療・免疫療法
がんが他の臓器に転移してしまった場合や術後の補助療法として抗がん剤による治療を行います。抗がん剤による治療は、場合によって抗がん剤治療を専門とする化学療法科や各専門領域の内科などとともに治療にあたっております。