顎変形症
顎変形症とは、上下顎骨の劣成長または過成長によって①審美的障害②咬合障害(かみ合わせの不具合)③口腔機能障害(話しにくい等の症状)④精神心理障害などの症状を示します。顎の骨に原因があるため、歯列矯正治療だけでは改善が見込めません。
診断法
レントゲンや歯列模型等の資料から分析を行い、手術を併用した矯正治療が必要であるかを判断します。診断は口腔外科医と歯科矯正医の連携の元で行われます。
治療法
治療の流れ
①診断
②術前矯正治療
③全身麻酔下に外科的治療(顎骨を切断し、金属プレートで正しい位置に固定する手術)
④術後矯正治療
⑤プレート抜去術、オトガイ形成術等
- 下顎枝矢状分割術(SSRO:Sagittal Split Ramus Osteotomy)
下顎骨を矢状方向に分割し、金属プレートで固定する手術。適応範囲が広く、術後の顎
間固定が必要ない等のメリットが多いため、最も多く行われる手術です。 - 下顎枝垂直骨切り術(IVRO:Intra Oral Vertical Osteotomy)
下顎骨を歯のない部分で縦に分割する手術です。金属プレートでの固定は行いません。
そのため顎関節に負担の少ない手術ではありますが、一般的に術後に上の歯と下の歯を数週間にわたって固定し(顎間固定)、噛み合わせを固定させる必要があります。顎間固定中は、口を一切開くことが出来ないため身体への負担が大きいだけでなく、顎間固定中に嘔吐をすると窒息のリスクがあります。そのため、当科では顎間固定は行わず、ゴム牽引のみ行っています。 - Le FortI型骨切り術(ルフォーI型 骨切り術)
上顎骨切り術として最も多く行われます。通常、下顎枝矢状分割術を併用します。
上顎骨を鼻の下で水平に切断し、金属プレートで固定する手術です。 - 上顎前歯部歯槽骨切り術
上顎の左右の犬歯から犬歯間の歯槽骨を骨切りしてプレートで固定する手術です。
上顎前突に対する手術として行われます。Wassmund法をはじめ、Wunderer法や Cuper法、Epker法などさまざまな方法がありますが、当科では前歯を後上方に移動させることが多いため(著しい上顎前突症例)、Cuper法を主に行っています。 - Le FortI型骨切り術+馬蹄形骨切り術併用術
上記のLe FortI型骨切り術に馬蹄形骨切り術を併用する手術です。
上顎の上方移動あるいは後方移動量が大きい場合に上顎骨の口蓋部分の馬蹄形骨切りを併用することで骨同士の干渉を減らして移動しやすくすると同時に骨の削合量を減らすことができます。 - Le FortI型骨切り術+上顎前歯部歯槽骨切り術
上記のLe FortI型骨切り術に上顎前歯部歯槽骨切りを併用する方法です。
上顎の前方と後方で異なる動きをすることができます。