看護学部基礎科学
学部教育における基礎科学では、主に、人体の構造と機能の基本的な成り立ちを、解剖学・生理学の観点から習得することにより、生命活動を理解し、病態を的確に把握できる力を養うことを目標とします。そして、急速に発展する生命科学に対応して、常に問題意識をもって、自己研鑽しうる医療人の育成を目指します。
統合教育学修センターにおける基礎科学としては、ICT(Information and Communication Technology)教育の推進、LMS(学習管理システム:Learning Management System) の基盤整備、IR(Institutional Research)の各種データ分析を担当し、医学部・看護学部の両学部における教育の充実に貢献しています。
研究内容
『逃げる行動を最適化するための1神経細胞における神経応答のシナプス解剖学的解析』、および、『行動最適化の原型回路をモデルとした精神疾患リスク因子のシナプス機能の解析』に取り組んでいます。
本研究は、いずれも、行動最適化の鍵を担う神経回路がどのように作られ、使われ、適切な行動を導くのか?に焦点を当てます。同じ刺激(音など)でも、感じ方、受け取り方は個人差があり、その結果として現れる行動にも個人差があります。どの行動をとるかを決めるのは、状況や性差、育った環境などの様々な要因があります。そして、神経回路の発生異常は精神・神経疾患の素因であり、研究成果の社会還元が期待されています。例えば、自閉症スペクトラムや発達障害の患者さんは、音や光、痛み等の感覚に対して過敏になったり、逆に感じにくくなるなど、適切な社会的行動が取れないといった症例が散見されます。この原因は、脳の中の「行動最適化回路」の不具合だと考えられます。
本研究は、全ての神経の配線情報が同定されている唯一のモデル生物、線虫 C. elegans をモデルに用います。C. elegansは、体長 1 mm、神経は 302 個しかありません。これは、ヒトの脳の5千万分の1の神経数です。ところが、こんなに単純な生物でも、神経の「配線」はわかっているのに、その「役割」はほとんどわかっていません。私は、まずは線虫の「ミニチュア回路」を明らかにすることで、ヒトの複雑な脳機能の理解への足がかりを作ることを大目標としています。