脊髄動静脈奇形
脊髄硬膜動静脈瘻
脊髄硬膜動静脈瘻とは?
脊髄硬膜動静脈瘻とは、脊髄神経根の硬膜貫通部近傍で動脈と静脈が直接吻合することによって、動脈血が直接脊髄表面の静脈に還流してしまい、脊髄からの正常な静脈血が静脈へ流れ込むことができなくなったために脊髄うっ血を来たして各種の脊髄障害症状を起こす血管奇形の一種です。
3D-CTAにて拡張した血管が描出されている
症状
一般的には脊髄静脈還流障害による上肢または下肢のしびれ、麻痺、歩行障害、直腸・膀胱障害による排尿・排便障害を来たします。徐々に症状が悪化する場合が多く、治療が必要です。症状が腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症と似ていることから、正確な診断診断がされないままヘルニアの手術を受けている方もいらっしゃいます。また、くも膜下出血を起こして病院に搬送される患者さんもいらっしゃいます。
原因
原因としては、現在でもよく分かっていないというのが本当のところですが、脊椎外傷、手術治療や脊髄へのブロック注射なども原因になるといわれています。
画像診断
MRI検査による診断が有用です。脊髄表面の拡張した静脈の描出や脊髄のうっ血を見ることによって診断可能です。また、詳細に異常血管を調べるためには造影剤を用いた脊髄血管の3D-CTAや脊髄血管撮影(カテーテル検査)を行います。
血管内治療
脊髄血管撮影と同じようにカテーテルを用いて治療を行う方法です。太ももの付け根から細いカテーテルを挿入し、異常血管を詰めていくことによって脊髄の血液の流れを正常に戻します。それによって脊髄のうっ血が解消され、症状の改善が得られます。
手術治療
全身麻酔下に背中に皮膚の切開を行い脊髄硬膜周辺の異常血管を遮断することによって脊髄の血流を正常に戻します。脊髄周辺の操作ですので手術用顕微鏡を用いた細かい操作が必要ですが、脳神経外科のエキスパートにとってはそれほど危険が伴う手術ではありません。
術中所見:脊髄表面に拡張した血管が認められる
術中蛍光色素を用いた血管撮影
脊髄動静脈奇形とは?
脊髄動静脈奇形は脊髄内部や表面に動静脈が絡みあった血管奇形が認められます。脊髄動静脈瘻と同様に脊髄の正常血流が障害され、脊髄のうっ血を来たして各種の脊髄障害症状を起こします。
画像診断
脊髄硬膜動静脈瘻と同様にMRI検査による診断が有用です。脊髄内の異常血管や脊髄のうっ血を見ることによって診断可能です。また、詳細に異常血管を調べるためには造影剤を用いた脊髄血管の3D-CTAや脊髄血管撮影(カテーテル検査)を行います。
治療
カテーテルによる血管内塞栓術や直達手術が可能な例もありますが、脊髄内動静脈奇形はいずれの治療も困難な場合が多くあります。