腎移植

Renal transplanation

移植Q&A

Q
免疫抑制剤ってなに?
A

移植された腎臓は元々、自分のものではないので、体に侵入した異物(細菌やウイルスなど)を排除する免疫というシステムが働きます。これを拒絶反応といいます。

拒絶反応がおこってしまうとせっかく移植した腎臓が機能しなくなってしまうので、免疫抑制薬で拒絶反応を抑えるわけです。そのため移植腎が機能している間は、免疫抑制薬を内服する必要があります。

Q
腎臓は一生もつの?
A
残念ながら、永久に生着するのは難しいです。不幸にも拒絶反応によって早くに機能しなくなってしまう場合もあります。しかし、最近では新しい免疫抑制薬が登場し、拒絶反応の治療法も改善されているので、以前よりも成績はよくなっています。今では、およそ9割の患者さんの腎臓は移植してから10年経っても機能しています。それ以上長く腎臓が働いている人もたくさんいらっしゃいます。
Q
子供の体重が小さいのですが大人の腎臓を移植できますか?
A

だいじょうぶです。体重が10Kg以上のお子さんであれば問題なく大人の腎臓が移植できます。また体重が7~10Kgのお子さんであっても大人の腎臓を移植できています。

小児腎移植

小児期に不幸にも腎不全に陥った場合、成長発育に重大な障害を残すばかりでなく、子供にとって貴重な時間を透析に費やすために精神的な面においても障害が出てきます。そのため小児が腎不全に陥った場合はできるだけ早い時期に腎移植をうけ透析から解放させてあげることにより、体の面からも心の面からもなるべく健常児に近づけるようにさせてあげることが最良と考えています。そして、腎臓機能が低下した小児に対して透析を行う前(成長発育の障害がおこる前)に腎移植を行うことも多くなっています。

成長発育の問題

小児期に透析療法を受けると重大な成長発育の障害がおきることがわかっています。最近、成長ホルモンの注射ができるようになり以前よりはその障害が改善されました。しかし、透析療法の期間が長ければ長いほど後で腎移植を行っても成長の回復は見込めなくなってしまうので、適切な時期に腎移植を受けることが望ましいのです。

最近の新しい免疫抑制薬の登場で、ステロイドを途中で中止できるようになってきました。また、腎移植後も成長ホルモンを注射することにより、成長の改善が期待されます。

感染症の問題

大人であればすでに感染を受け抗体を持っているため移植後に問題にならないことも、小児の場合は感染を受けたことがないか、あるいはワクチン接種を受けていないため移植後に感染すると重症化する場合があり注意が必要となります。すべての流行性感染症は移植患者の場合重症化することが予想されますので、できるだけ移植するまえにワクチン接種を行うようにしています。

  • サイトメガロウイルス

    日本人の大人の約90%は感染の経験があります。しかし、感染を受けたことがない小児に感染したことのある両親の腎臓を移植した場合、サイトメガロウイルスの感染の可能性が非常に高まります。サイトメガロウイルスの感染がないお子さんには予防的にサイトメガロウイルスの治療薬を投与します。

  • EBウイルス

    移植患者さんに感染すると移植後リンパ球増殖症や悪性リンパ腫といわれるリンパ球が異常に増殖する状態を引きおこすことがあり、注意が必要な感染症のひとつです。成人の約90%はEBウイルスに感染したことがありますが小児には注意が必要です。現在PCR法といわれる方法によって移植後定期的に感染をチェックしています。

  • 水痘ウイルス

    水痘ウイルスに感染したことがないお子さんが、移植後にはじめて水痘ウイルスに感染すると重症感染症に陥ります。そこで移植前にワクチンの接種を行ってもらいます。

    また、水痘の抗体がない方で移植後は、水痘にかかっているお子さんや帯状疱疹にかかっている方に接触しないようにしなければいけません。万が一そのような方に接触した可能性がある場合は、直ちに外来にきていただき抗ウイルス剤による治療が必要になります。

泌尿器科的問題

小児期に腎不全になる原因として、尿路(腎孟、尿管、尿道などの尿の通り道のこと)の先天異常があります。腎移植しただけでは尿路の異常のために再び腎不全になるので、尿路の異常も治してあげなければいけません。

われわれの移植チームには小児の泌尿器を専門にしている経験豊富なスタッフもそろっており、協力しながら腎移植を行っています。

Q
血液型が違っても移植はできますか?
A

だいじょうぶです。血液型に反応する抗体を移植前にあらかじめ除去することにより移植可能となっています。東京女子医大は我が国で最初に血液型不適合生体腎移植を成功させました。数多くの経験を有しており、症例数は世界の中でもトップです。

血液型不一致は血液型が適合している移植とほぼ同様の移植術で行います。

血液型不適合移植の背景

血液型を間違えて輸血すると大変なことになるのと同じように、過去においては血液型が異なる腎移植は強い拒絶反応がおこるために移植できないとされていました。しかしながら強力な免疫抑制剤の出現と手術前に血液型抗体を除去することにより、現在では移植できるようになりました。もちろん血液型が違うために移植腎がだめになるような強い拒絶反応を発症することもあります。そのためどこの移植施設でも行われているわけではなく、やはり移植経験の豊富な施設でなければ安定した成績がだせていないようです。

血液型不適合移植の方法

血液が同じ方との移植とはいくぶん違う方法をとります。

  • 抗血液型抗体の除去

    腎移植を受ける方の血液の中にはドナーの血液型に対する抗血液型抗体が存在します。この抗体があると移植した腎臓にくっつくことにより腎臓を破壊し移植後あっという間に尿が出なくなってしまいます。これを防ぐために移植前より血漿交換(血液中の血漿といわれる液体成分を透析の技術で献血された血漿と交換する方法)を3~4回することによって抗血液型抗体を除去します。

  • 脾臓の摘出

    移植の手術時に脾臓を同時に摘出します。脾臓は胃の裏側にある臓器ですが、その働きのひとつにリンパ球の貯蔵庫としての役割があります。抗血液型抗体はリンパ球から産生されますので脾臓を摘出することにより移植後に抗体が産生されにくくします。

  • 強力な免疫抑制法

    移植した当初は強力に免疫抑制を行います。免疫力を抑制することにより抗血液型抗体が産生されないようにします。移植腎が働き拒絶反応がおこらなければ最終的には血液型適合腎移植と同等の免疫抑制剤の内服量になります。

  • 血液型不適合移植の成績

    血液型不適合移植を開始した当初は強い拒絶反応に悩まされ血液型適合移植よりも移植腎生着率はやや不良でした。しかし、現在新しい免疫抑制剤の登場によって東京女子医大では血液型適合移植とまったく変わらない成績になりました。ちなみに2001~2002年の症例の1年生着率は97%でした。

移植後の輸血について

血液型不適合腎移植を受けた場合、輸血を受けるときに注意が必要です。赤血球は自分の血液型の赤血球を輸血をします。しかし、血漿の場合は、本人の血液型にかかわらず常にAB型を使用します。これは、輸血によってドナーの血液型に対する抗体が、体内に入るのを防ぐためであり、拒絶防止のため非常に重要なことです。他の病院で輸血を受ける場合は、この原則に従うようにして下さい。