Renal transplanation
生体腎移植の場合、入院予約を外来受診時に行います。外来担当医が「入院予約票」をお渡しするので、それをお持ちになって総合外来センター1階にある入院予約受付で入院予約を行ってください。
その際、入院に必要な物品等が書かれている「入院のご案内」のパンフレットが渡されます。特別な準備品はありませんが、下記に必要なものを記したのでご参考にしてください。
なお、透析センターで処方されていたお薬は忘れずにお持ちください。また、透析施設からの紹介状もお持ちください。
入院してから移植する前に、1~3回の血液透析を行いますので透析条件のかかれた紹介状を持参してください。
外来担当医が「入院指示表」をお渡ししますので、それをお持ちになって総合外来センター1階にある入院予約受付で入院予約を行ってください。入院までの詳しい説明と手続きを行います。
おおむね腎移植のドナーの方は移植前日、レシピエントの方は移植の5~7日前に入院になります。入院日の前日までに入退院係より電話連絡があります。
当日午前10時までに入退院係へおいでください。その際、以下の書類等を持参してください。
使用中の各種保険証
老人医療証など保険証と合わせてお使いのもの。
今までに受診した、各科の診察券をお持ちください。
入院予約時に手渡された入院誓約書を記入しお持ちください。
概算予納金をお預かりさせていただきます(入院される部屋により金額が異なります)。この概算予納金は退院時に精算いたします。それまで預り証を大切に保管し退院時にお持ちください。
認印をお持ちください。
入院のご予約を取り消される場合は、お手数でも入退院係までご連絡ください。
洗面器、歯磨きセット、石鹸、ヒゲ剃り、くし、シャンプー等
はし、スプーン、湯のみ等
T字帯、和式寝間着
平均すると腎移植後7〜10日で退院できます。入院期間は移植後の経過によって多少変わってきます。
移植手術をした翌日まではベッドの上で過ごすことになります。これは腎臓の血管が確実にくっつくまで安静にしてもらうためです。飲水や食事は翌日からできます。移植直後は体に点滴のチューブとドレーンといわれる手術した付近の体液を排出するチューブ、そしておしっこのチューブがついています。おしっこのチューブは尿量を正確にみるために4日間入っています。ドレーンは5日目に抜きます。点滴は水分が十分に摂れるようようになったら終了します。
移植後われわれが一番気をつけて診るのは、急性拒絶反応の有無です。そのために毎日採血をして腎機能を検査します。クレアチニンの動きを見て拒絶反応の診断を行います。また超音波(エコー)を用い移植腎の血流を調べ、血液の流れが滞ってないかどうかによって拒絶反応の診断を行います。拒絶反応が出現していると疑われた場合は、移植腎生検を行い顕微鏡で腎臓の組織を観察することで拒絶反応の診断をつけます。
免疫抑制剤の進歩により拒絶反応をみることは少なくなりましたが、それでも約10%の方に拒絶反応を認めます。移植腎生検で確認した拒絶反応の程度によって治療法が異なります。軽度から中程度の拒絶反応の場合は、ステロイドパルス療法といわれるステロイド(副腎ホルモンのひとつ)の点滴治療を行います。このステロイドパルス療法で効果がない場合や、強い拒絶反応の場合は、サイモグロブリン、リツキサンといわれる薬を注射したり、血漿交換を行ったりします。
手術後拒絶反応の徴候を認めなくても定期的に移植腎生検を行うことは重要です。通常の検査では拒絶反応の徴候を認めなくても軽い拒絶反応が存在する場合があるからです。この軽い拒絶反応はしばらくは腎機能を悪くしませんが、数年すると徐々に腎機能が悪化する原因になります。また、腎臓病が移植腎に再発する場合もあります。そこで腎機能がよくても3ヶ月後、1年後には移植腎生検を行い、拒絶反応があった場合は治療を行うことにしています。
移植後拒絶反応がなければ、あるいは拒絶反応があっても治療されれば退院となります。平均すると7〜10日間で退院となります。移植してから順調に尿が出てきて移植腎生検でも拒絶反応がない場合は、最短2週間ぐらいで退院できます。
腎移植に関する医療費は健康保険や各種医療保障制度が利用できるので、自己負担額は低額で済みます。以下の医療保障制度を組み合わせると入院費の自己負担の多くは1万円以下となります。ただし、食事費や室料、診断書などの書類にかかる費用は別途負担していただくことになります。また、通院における医療費も同様に他の補助が受けられます。
生体腎移植、献腎移植ともに健康保険が適応されています。そのため加入されている保険の種類や年齢にもよりますが、1~3割の自己負担となります。さらに1カ月の医療費の自己負担分が72,300円(上位所得者は139,800円、住民税非課税世帯は、35,400円)を超えた場合は、高額医療費として超過分が健康保険より支給されます。
疾病の中には、非常に高額な治療を長期間(ほとんど一生の間)にわたって継続しなければならず、医療費負担が高額に上るものがあります。このような場合に、高額療養費の支給の特例を設けることによって負担の軽減を図ることとしたのが、特定疾病に係る高額療養費支給の特例です。人工透析を受けている患者さんはこの対象になり、1カ月10,000円 を超えた額が、医療保険から支給されます。移植手術に関する医療費も特定疾病療養制度から支給を受けることが可能で、移植後の入院費用も、加入されている健康保険にもよりますが、支給される場合がほとんどです。
身体障害者手帳の交付を受けている方が、生活上の便宜を増すために障害の程度を軽くしたり、機能を回復することができるような医療を国または都道府県が指定する医療機関で受け、その医療費の負担を補助する制度です。腎移植を受けた場合には、身体障害者福祉法による更生医療の申請を行うことができます。更生医療では腎移植に係る入院および術後の免疫抑制剤の服用について、自己負担金を公費で負担してもらえます。補助額は障害者の方が属する世帯の所得税額に応じ変化します。一部の地方自治体では補助額を越えた自己負担分も補助する制度があります。詳しくは市区町村役所の各窓口でお問い合わせください。なお、原則として腎移植を受ける前に身体障害者手帳の交付を申請しておくことがすすめられます。
小児慢性特定疾患治療研究事業は、児童の慢性疾患のうち、特定の疾患について、その治療にかかった費用を公費により負担する制度です。腎不全もこの対象に入っているので透析医療や移植医療に関わる自己負担分の補助が受けられます。対象年齢は18歳未満で必要であれば20歳になる日まで補助が受けられます。(窓口:各都道府県庁)
身体に障害がある児童であって、手術等の治療により身体上の障害が軽くなり、日常生活が容易にできるようになる児童が、指定育成医療機関において治療等を受ける場合に、その治療に要する医療費を公費により負担する制度です。ただし、世帯の所得税額に応じて、治療費の一部は自己負担となります。腎臓障害での腎移植術や人工透析は育成医療の対象となっています。
乳幼児に対し、乳幼児の疾病または負傷の治癒を促進し、乳幼児の保健の向上を図るため、疾患を問わず医療費の助成を行う制度です。各地方自治体によって対象となる年齢や所得税額に応じた自己負担額などが異なります。
患者さん(特に小児の場合)によっては複数の制度の助成が受けられることがあります。各医療保険や地方自治体の窓口によっては、腎移植の助成を行ったことがないため適切な答えがもらえない場合も予想されます。詳しくは東京女子医大医療社会福祉室にて相談を受け付けています。お気軽に相談にきていただくか、下記の電話番号にお問い合わせください。