前立腺がん

Prostate cancer

手術と実績

前立腺癌患者さんの症例数

当院では年間約250人の患者さんが前立腺生検検査を受け、そのうち約100人の患者さんが新たに前立腺癌の診断を受けています。検査を受ける理由で最も多いのはPSAの高値であり、50歳以上の男性は腫瘍マーカーや直腸診といった検診を受けられることをお勧めします。検診によって早期に前立腺癌を発見できる可能性が高くなるからです。また血縁者に前立腺癌の人がいる場合は2倍以上前立腺癌にかかりやすいといわれていますから、40歳ぐらいから検診を受けられることをお勧めします。また、他院からの紹介の患者さんも増えており全体として年間に約200人の方が新たに前立腺癌の治療を受けています。

前立腺腺瘍センター 〜前立腺癌患者さんひとりひとりに関して推奨される治療方針を検討し提示

当院では2006年に前立腺腫瘍センターを設立しました。前立腺癌治療に関して泌尿器科と放射線腫瘍科で週1回、合同カンファレンスを開催し、一人一人の患者さんそれぞれに推奨される治療方針を検討します。前立腺癌の診断がついた患者さん、もしくは当院で治療を希望されてご紹介頂いた患者さんの情報は原則的に全てカンファレンスで検討されます。また、双方の専門医から治療の内容、予想される合併症などの説明を受けることが可能です。その上で納得のいく治療選択をしていただきます。

手術療法

手術の方式は開腹手術(恥骨後式、会陰式)、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術があります。いずれの方法にも利点欠点はあります。当院では2006年より腹腔鏡手術を導入しており、さらに2011年から手術支援ロボット、ダビンチ サージカルシステムを導入する事でがんの根治性と機能温存の精度を向上する事が可能となりました。ロボット支援前立腺全摘除術術は全世界で標準的な術式となっており、当院においても最近では全例ロボット支援手術を行っております。

ロボット支援手術では、腹部に6〜7カ所、約1cmの小切開をおき、トロカーと呼ばれる筒状の器具を留置します。内視鏡や手術に使う器具はこのトロカーから出し入れします。二酸化炭素を注入しておなかを膨らませ、前立腺や膀胱を内視鏡で見える状態にします。先端がはさみ等の形状をしたロボットの鉗子や助手の使用する鉗子をトロカーから入れ、内視鏡で見ながら操作を行います。

術後は尿道から膀胱にたまった尿を体の外に出す管(カテーテル)が入っていますが、術後数日で膀胱と尿道の吻合部の造影検査をし、問題がなければカテーテルを抜去します。

カテーテルを抜去した直後はほとんどの患者さんで尿失禁を認めます。しばらく経つと症状は徐々に改善しますが、肛門括約筋を締める練習をすることで、尿失禁を早く改善させることが可能です。手術の翌日から歩行と飲水が可能で、状況をみて食事も可能になります。入院期間は平均7日間になります。

手術件数

当院における前立腺癌の手術件数は増加傾向であり、特にロボット支援前立腺全摘除術を導入してから顕著です。しかしながら当院では手術に偏ること無く、患者さんの状態およびご希望に沿った治療の提供を心掛けているため、各治療がバランスよく行われていることが特徴です。

治療成績

当院において前立腺癌に対してロボット支援前立腺摘除術を行った患者さんの5年生存率(手術後5年の時点で生存している確率)は100%です。また、再発率は以下に示すように、患者さんの状態により異なりますが、当院での従来の腹腔鏡手術、開腹手術と比較して良好です。

注:当院でのリスクとはD’Amicoのリスク分類によります。低リスクとはPSA<10ng/ml、グリソンスコア6以下、T2a以下の全てを満たす患者さんが該当します。また、高リスクとはPSA≧20ng/ml、グリソンスコア8以上、T2c以上のうちどれか一つでも満たす患者さんが該当します。中リスクとはこれら低リスク、高リスクに該当しない患者さんです。

また、術後に問題となる尿失禁(尿漏れ)に関しては、ほとんどの患者さんに術後一時的に見られますが、術後3〜6ヶ月で多くの方が日常生活で問題無い状態に回復しています。これも従来の術式と比較して良好です。