放射線腫瘍学(放射線腫瘍科)
放射線腫瘍学講座(放射線腫瘍科)では、放射線治療を中心としたがん治療を通して、放射線腫瘍学を臨床、物理、生物の観点から教育、研究し、学部学生や院生、さらに研修医に対して教育を行っている。放射線腫瘍学とは、臨床腫瘍学の1分野で、がんの疫学、発生機序および自然史を理解し、がんの確定診断から病期診断までを行い、放射線を武器にがんの集学的治療を行うための学問である。基礎研究には正常組織を避けてがんに放射線を集中して照射するための技術を開発する物理工学的分野と、分子生物学的手法を用いてがんや正常組織の放射線感受性ならびに放射線に対する細胞応答の修飾機序を解明して臨床での治療に役立てるための生物学的研究を行う分野とがある。教育に関しては、放射線生物学、放射線腫瘍学、放射線治療学を担当し、がんの放射線治療を担う専門医である放射線腫瘍医を育成する講座である。
放射線腫瘍科は18床の病棟管理を行うとともに、外来診療業務を行い、放射線治療に主体をおいて年間約600人の悪性腫瘍患者の治療を行っている。対象疾患は脳腫瘍、頭頸部腫瘍、肺癌、食道癌、乳癌、泌尿生殖器腫瘍、子宮頸癌、悪性リンパ腫など多岐にわたっており、これらの疾患の根治治療に加えて骨転移などのがんの症状緩和の治療も行っている。当科には治療機器として外部照射用ライナック3台、腔内ならびに組織内照射のためのイリジウム遠隔後詰め照射装置1台、またX線とCTが一体化した位置決め装置1台が導入されている。また、高精度放射線治療として肺癌に対する定位放射線治療や、脳腫瘍、頭頸部腫瘍ならびに前立腺癌に対する強度変調放射線治療を積極的に行っている。特筆すべきは、神経膠腫や小児脳腫瘍に対する放射線治療の患者数が日本で最多であること、さらに、前立腺腫瘍センターを設立して、泌尿器科、病理科とともに全例を検討した上で治療方針を決定している点である。前立腺癌に対して強度変調放射線治療、高線量率組織内照射法ならびに放射性ヨウ素の永久挿入法の3つの治療戦略が実施できるわが国でも数限られた施設のひとつである。また、骨転移や悪性リンパ腫に対する放射性同位元素を用いた治療も開始する予定である。
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