Urinary stone
尿路結石症は、腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる疾患です。
泌尿器科の外来でみられる疾患の中では最も頻度の高い疾患のひとつで、年間罹患率も年々上昇を続けています。
特に壮年男性と閉経後女性に高頻度にみられます。
疝痛発作(突然に生じる激しい痛み)、血尿が典型的な症候です。
腎結石は無症候のうちに経過することが多いのですが、これが尿流に沿って尿管内に落下し、結石による尿流閉塞と腎盂内圧の急上昇によって、腰背部から側腹部にかける激痛や下腹部への放散痛が生じます。夜間や早朝に起きることが多く、通常、3~4時間持続します。一部には腎盂腎炎を併発し、38~40度の発熱を呈することもあります。下部尿管に位置する結石では同時に膀胱刺激症状を伴うことも多く、頻尿、残尿感が起こります。
腎結石は無症状で経過することが多いため、検診などで偶然発見されることもあります。腰部の鈍痛のみが自覚されたり、結石周囲の細菌感染のために膿尿や細菌尿のみを認めるということもあります。
膀胱結石、尿道結石では膀胱刺激症状の他、尿流の途絶が生じることがあります。
結石の排出時には、通常、排尿痛や違和感を伴いますが、無自覚に排石されることもあります。
上部尿路結石 | 下部尿路結石 |
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95% | 5% |
男性 | : | 女性 |
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2.5 | : | 1 |
男性 | 64(1965年) ~ 118(1995年) |
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女性 | 24 (1965年) ~ 46(1995年) |
男性 | 4.3%(1965年)~ 9.0%(1995年) |
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女性 | 1.8%(1965年)~ 3.8%(1995年) |
1965年 | 20~40歳代 |
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1995年 | 30~60歳代(男性) |
結石のある部位により腎臓(腎)結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と分類します。
また腎臓、尿管の結石は上部尿路結石、膀胱、尿道の結石は下部尿路結石として扱います。尿路結石の95%は上部尿路結石です。上部尿路結石と下部尿路結石では、原因や治療法に多少の違いがあります。
結石を構成する成分により数種類の結石に分類されます。シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、尿酸結石、及びこれらが混在する結石が最も高頻度にみられます。
尿路感染によって形成されるリン酸マグネシウムアンモニウム結石や、また、遺伝性に発生するシスチン結石も認められることがあります。
特殊な呼称として、腎結石が腎臓内に増大し鋳型状となった結石をサンゴ状結石、尿管内の同一部位に長期に位置し尿管との癒着が強い結石を嵌頓(かんとん)結石と称します。
腎臓内の、遠位尿細管から集合管、乳頭上皮において、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸などが尿中で飽和状態となり、結晶が析出します。結晶核が形成されると表面に晶質(シュウ酸、リン酸、カルシウム)が付着し、結晶はさらに成長、凝集し、凝集塊をもとに結石が形成されます。
微小な結晶や結石は無症状のうちに絶えず尿中に排泄されますが、これらにさらに晶質や有機物が付着し腎杯内で無症状のうちにある程度まで成長することがあります。このような結石が排出されるとき血尿、疼痛などを伴います。
結晶形成、凝集など結石形成の過程には様々な因子が関与します。
腎臓から尿道に至る尿路に通過障害や変形があると、尿流の停滞を招き結石を生じやすくなります。水腎症では腎結石、また前立腺肥大症、神経因性膀胱では膀胱結石が生じやすく、長期臥床者では尿流停滞の他に骨吸収も進み、これも結石の原因となります。
慢性的に持続する尿路感染も結石形成の重要な一因です。尿素分解酵素を有するグラム陰性桿菌が尿素からアンモニアを形成し、尿をアルカリ化するため、リン酸マグネシウムアンモニウムやリン酸カルシウムが析出しやすく、結石が形成されてきます。
代謝異常は最も重要な危険因子です。高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症、高尿酸尿症、低クエン酸尿症、低マグネシウム尿症は重要な異常所見であり、結石形成に大きく関与します。
尿pH(酸性度)も結石形成に影響します。アルカリ尿ではリン酸カルシウム結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石が形成されやすく、酸性尿では尿酸結石やシスチン結石が形成されやすくなります。
稀に、内服している薬剤が原因で結石が形成されることもあります。緑内障治療薬であるアセタゾラミド、活性型ビタミンD、尿酸排泄促進剤(プロベネシド)、AIDS治療薬インジナビルなどがあげられます。