尿細管間質障害
尿細管は、糸球体から排出された尿のなかの水分や電解質など、体に必要な成分を再吸収して血液中にもどし、不要な成分を尿として排出する役割をしています。
また尿細管と尿細管の間の組織が間質(かんしつ)です。その組織に障害が起こる疾患を尿細管間質性腎炎と呼びます。糸球体疾患と異なり、尿細管・間質の障害が起きても、尿検査で異常が起こることがほとんどなく、腎機能障害で発見されることがほとんどです。
尿検査で異常を認めない原因不明の腎機能障害の中で頻度は高く、注意が必要です。急性に起こる場合と慢性に経過する場合があります。
急性尿細管間質性腎炎
急性型は,しばしば数日~数カ月で発症し、急激に腎機能が低下していきます。
原因は?
ほとんどは、薬剤の副作用やアレルギー性の薬物反応や感染症です。抗菌薬や非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)などを使用したときに起こります。また、急性腎盂腎炎などの感染症、膠原病の合併症として起こる場合やブドウ膜炎を伴う腎眼症候群も起こることもあります。
症状は?
発症は、毒物への最初の暴露後数週間または2度目の暴露後3~5日の可能性があります。潜伏期間は 1日(リファンピン)から18カ月 (NSAIDs)とさまざまです。
- 発熱、湿疹、関節痛など(アレルギー反応の場合)
- 腎臓の腫大による腰痛
- 多尿と夜間頻尿(尿濃縮力の低下ならびにNaの再吸収の低下によります)。
検査所見は?
血清クレアチニン値の上昇が認められます。IgEや好酸球数が増加することがあります。尿検査では、蛋白尿は軽度(1g/日以下)で、白血球尿が認められます。また尿細管性蛋白尿(β2ミクログロブリン)や尿細管の酵素であるNAGの増加が認められます。
診断は?
病歴、身体診察、臨床検査および画像診断に基づきます。腎生検により確定診断されます。
治療は?
原因となっている病気の治療を行います。 薬剤が原因の場合は、薬の投与を中止して腎機能の回復を待ちます。アレルギー反応などの免疫が関与している場合は,炎症を抑えるためステロイド薬を用いることもあります。病状が進行して腎不全となるような場合には、血液透析治療を一時的に導入することがあります。
経過・予後は?
早期に原因を除くことができれば、腎機能は正常に回復します。
慢性尿細管間質性腎炎
慢性尿細管間質性腎炎は、病変が慢性に経過して間質の線維化が進行します。次第に腎機能が低下していきます。
原因は?
慢性腎盂腎炎による慢性感染症がほとんどです。また、鎮痛薬などの薬剤を長期間多量に服用していると発症することもあります。その他、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、逆流または閉塞性尿路疾患、慢性の環境有害物質、ある種の薬物(ハーブ)などが挙げられます。
診断は?
血清クレアチニンの上昇を認め、腎機能の低下が比較的緩徐で、蛋白尿が顕著でない場合に疑われます。確定診断には腎生検が必要です。
治療は?
原因となっている病気の治療を行います。進行性の腎機能障害を有する患者においては、慢性腎臓病に対する治療を行います。
経過・予後は?
数ヶ月から数年異常にわたってゆっくりと腎不全が進行します。。