ファミリーサポート
設立趣旨
本学は女性医師や医療従事者の勤務継続と復帰支援のための様々な組織体制が構築され、主に附属保育所での待機児の受け入れ、病児保育、学童保育などの施設型の育児支援を行ってきました。しかし施設型の支援体制のみでは受け入れ可能な人数や支援内容が限定され、様々な状況に応じて就労する医療従事者の支援としては充分とはいえません。
そこで、医療従事者の勤務環境の整備のために、学内ファミリーサポートシステムを構築し、地域の方を中心とする子育て支援を行いたい人(提供会員)を募集し、本学在籍者(依頼会員)の子どもの急病時や放課後の保育、あるいは出張や研修、入院等で子どもの宿泊を援助するお泊り保育など細やかな支援をしていただくことにより、勤務を中断しなくて済む体制を整えることとしました。
加えて提供会員の方々に対しては、小児救急に対する知識、病児に対する保育看護の技能などの講習会を開催し、地域全体の育児能力の向上を図り、地域と医療従事者との協力体制を構築することも目的としています。
女性医療人の支援としてのファミリーサポート
佐藤 麻子
女性医師・研究者支援部門長
臨床検査科・特任教授
医師、看護師、助産師など医療人は、その生涯において患者さんとそのご家族のために貢献し、医学の進歩に尽くし、自らを磨き成長し続けなければなりません。しかし、子育てや介護が家庭における女性の役割となることが多く、その両立が困難なゆえに職場を離れざるを得ないことが多々あります。特に、医療の中核を担うべき30代の女性には、子育てとの両立困難によって、休職し、退職するというフェードアウトが見られます。
女性医療人のキャリア形成においては、1)子育て支援、2)勤務環境の改善、3)生涯教育の支援が必要です。その観点から、東京女子医科大学は男女共同参画社会の実現を目指して、「女性医師・研究者支援センター」「女性医師再教育センター」「看護職キャリア開発支援センター」という三つのセンターを運営し、事業が進んで参りました。 「男女共同参画型NICU人材養成プログラム一地域と支えあう周産期医療一」プロジェクトは、このような本学の女性医療人支援の新たなプロトタイプになります。周産期医療を担う人材育成の支援環境整備としての、本プロジェクトの中で、ファミリーサポート事業を開始することになりました。
本学は平成5年から看護師の確保と仕事への復帰支援を目的に院内保育所を始めました。平成18年からは、文部科学省科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」事業を開始し病児保育が軌道に乗って参りました。そして次のステップとして、より個別な対応ができ、いわゆる「オーダーメイドの両立支援」と言えるファミリーサポート事業を提案いたしました。 ファミリーサポートとは、育児や介護の援助を受けたい人と提供したい人が会員となり、育児や介護についての需要と供給を満たす会員制の事業です。女性医療人のニーズに合った家事、育児、介護などのお手伝いの提供を頂き、女性医療人が職務とキャリアの継続ができるような環境の整備を行います。 皆様の身近な方、地域やご親戚などに、女子医大の女性医療人を支援して下さる温かいお気持ちを持っておられる方がおられましたら、ご紹介、ご推薦くださいますようお願い申し上げます。皆様のご支援をお願い申し上げます。
ファミリーサポート活動の輪を広げる
野原 理子
女性医師・研究者支援部門 副部門長
ファミリーサポート室長
衛生学公衆衛生学講座(公衆衛生学分野) 教授
女子医大ファミリーサポート(現:女子医大・東京医大ファミリーサポート)は2010年に開設されました。大学におけるファミリーサポート事業としては全国初の試みでした。十分な研修を受けた提供会員による、安全安心な子育て支援が行えるよう、設立準備の段階から、多くのご関係の皆様と検討を重ねました。本学の建学の精神や理念、当ファミリーサポート設立の趣意をご理解いただける、信頼のおける委託先の選定は、非常に重要な課題でした。検討の結果、地域での子育て支援において全国で最も実績のあるNPO(特定非営利活動)法人子育てネットワーク・ピッコロ様に運営をお願いできることとなりました。また、開設当初より新宿区ファミリーサポートセンター様とも連携させていただき、区内の様々な情報の共有や提供会員の育成にご協力いただいています。さらに2014年には東京医大様にも加わっていただき、安定した基盤を築くことができました。そして何より地域にお住いの数多くの皆様が、医療従事者を支えたいとお集まりくださり、30時間におよぶ講習会を受講し、会員登録してくださっています。このようなご関係各位のお力添えにより日々の多様な育児支援活動を継続することができています。心より感謝申し上げます。 当ファミリーサポートでは、育児中の医療従事者の支援を開始したいという大学や研究機関からのお問い合わせやご視察などをいただいております。全国各地でこのような取り組みが進められることで、より多くの医療従事者が育児を行いながら活躍できるようになっていくでしょう。COVID-19がまん延する中にあっても、医療従事者とそのご家族を支えるために、多くの提供会員の皆様が様々な形で活動を行ってくださいました。地域医療提供体制の在り方の検討においても、当ファミリーサポートのような活動が良好事例となるものと考えています。 笑顔あふれる子ども達の未来のために、今後とも当ファミリーサポートへのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。