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2006.2.9

 
本邦発の植え込み型補助人工心臓を装着した
患者さんの経過についての記者会見が行われました。
本邦発の次世代型補助人工心臓を装着した患者さんが、2月中に退院の見込みとなり、2006年2月6日に記者会見が行われました。
(第一例目の実施については本学HPの2005.6.17付を参照
当日は心臓血管外科学黒澤教授、開発者の山嵜講師と植え込み患者さん2名が出席しました。
術後、感染症や装置故障等もなく順調に経過し、在宅復帰に向けての療養プログラムに沿ったトレーニングを行ってきて、今般トレーニングが完了、自宅療養・社会復帰のめどがたったこともあり、退院できる状況に至ったことを報告いたしました。
今後は、週に一度外来通院されます。

 

次世代型補助人工心臓エバハート植え込み患者さんの退院・在宅療養について
東京女子医科大学心臓血管外科
記者会見の写真1 エバハートは、東京女子医科大学、早稲田大学、東京大学、サンメデイカル技術研究所とで共同開発された次世代型補助人工心臓です。
昨年5月に本邦発の臨床治験が開始され、東京女子医科大学心臓血管外科(主任教授:黒澤博身)で末期重症心不全の拡張型心筋症の患者さん2名(46歳男性、29歳男性)に植え込み手術が行われました。
 術後は、血栓塞栓症、感染症、溶血、装置故障も無く、共に植え込み後6ヶ月以上を順調に経過しました。
植え込み直後に心係数は術前の約2倍に改善、1ヵ月後にはNYHA心不全重症度は、術前IV度(最重症)から I度(最軽症)へと著明に改善しました。2ヶ月目以降は日常生活が可能なまでに回復し、現在では日常的に外出を行っている状況となっています。
2名共在宅療養プログラムへの参加を希望されたのでトレーニングを行いました。
在宅療養プログラムの概要は以下の通りです。
 
1.在宅療法プログラムの適応条件:

@心不全重症度NYHA I度への改善
A感染症が無く、心係数や各臓器機能が良好に保たれていること
B抗凝固療法が安定していること
CADL(生活の活動範囲)が拡大され日常生活が充分可能であること
D家族のサポートがあり、精神的に安定していること
E本人及び介護者が適切な創部のケアができ、
   装置の取り扱いを充分理解していること
F自宅から治験施設までのアクセスが2時間以内であること
等が定められています。
これらに適合した後、順次段階を追ってプログラムを進めました。
 
2.病院内トレーニング:
@機器取り扱いトレーニング
  (システムの理解、電源管理、日常点検、トラブルシューテイング、
   緊急時のコントローラ交換練習、筆記試験、実技試験)
A皮膚貫通部ケアトレーニング
Bシャワー浴トレーニング
C緊急時の対処法
D患者日記記入トレーニング
等を行っています。
患者さんの様子
 
3.病院外トレーニング:

A段階/医療従事者を伴う外出;病院付近の30分程度の散歩から開始し、車・電車等の交通機関を使用した
            最低2時間以上の外出まで行う
B段階/医療従事者を伴わない外出;介護者と1時間程度の外出。
C段階/医療従事者を伴う一時帰宅;自宅から治験施設までのアクセスに要する時間(2時間以内)を確認、
            住居の構造や環境を確認(3Pコンセント、自家発電機使用の可否)。
D段階/医療従事者を伴わない2泊3日の試験外泊。
 
退院に当たっては、保健所、消防署、電力会社への通知と、非常時の協力要請を行います。
今回、機器トレーニング・外出トレーニングがほぼ完了し、2月中に2名とも退院できる状況となりました。
今後は自宅療養・社会復帰をしつつ心臓移植を待つこととなります。
 
心臓移植の提供者が極めて限られ長期補助を余儀なくされる本邦において、退院可能で自宅療養を前提としたQOLの高い優れた次世代型補助人工心臓がその真価を発揮するものと期待されています。


   
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