Adrenal tumor
副腎とは腎臓の上に位置する約2~3cmの小さな三角形の臓器で、左右1対ずつあります。1つは約4~5g程度の小さな臓器ですが、人が生きるために必要なホルモンを分泌するとても大切な臓器です。
副腎は大きく分けると皮質と髄質に分かれており、皮質からはアルドステロンとコルチゾールおよびテストステロン、髄質からはアドレナリンとノルアドレナリンというホルモンが分泌されます。
副腎疾患には大きく分けて2つの病態があります。ホルモンの分泌が多すぎる場合と、少なすぎる場合です。
分泌が多すぎる原因の1つに、副腎にできるおでき、つまり副腎腫瘍(しゅよう)があります。
過剰になるホルモンの種類によって症状や病態が異なるため、それぞれに病名がついています。
副腎皮質からアルドステロンが過剰に分泌されるため、高血圧になります。実際高血圧と診断されている方の5~6%はこの原発性アルドステロン症が原因と言われています。また血液中のカリウムが少なくなる低カリウム血症という状態になることがあります。長い間アルドステロン過剰の状態が続くと、脳や心臓、血管、腎臓などの臓器に悪影響を及ぼすことがあります。
コルチゾールの分泌が過剰となる疾患です。顔が丸くなる(満月様顔貌)、ニキビが増える、首の後ろや背中が盛り上がる、お腹に脂肪がつく、毛深くなるなどの症状が目立つようになります。また高血圧、糖尿病、高脂血症、骨粗しょう症などをおこします。
副腎髄質や交感神経節からアドレナリン、ノルアドレナリンが過剰に分泌され、高血圧や高血糖になります。頭痛、汗を多量にかく、体重減少、頻脈などの症状が特徴です。これらの病態や症状がいつも続くのではなく、発作的に出ることがあります。褐色細胞腫の10%は副腎外(交感神経節など)に発生し、10%は転移を起こす悪性腫瘍であり、10%は多発性なので『10% 病』と言われています。
偶発腫とは検診や他の病気の検査などを行った際に偶然見つかる副腎腫瘍のことをいいます。偶発腫の半数はホルモンを産生しないホルモン非産生腫瘍です。ホルモンを産生したり、腫瘍が大きくなったりする場合は手術が必要となることがあります。
副腎からのホルモンが過剰になることで、高血圧や高脂血症、糖尿病などの様々な病気が二次的に引き起こされるようになります。これらは血圧や血中の脂肪分、血糖を下げる薬などである程度抑えることもできますが、薬だけでは充分に改善されないこともあります。
副腎にできた腫瘍からホルモンが過剰に作られていることが詳細な検査(CT、シンチグラム、副腎静脈サンプリング、負荷試験)ではっきり分かっている場合、腫瘍を副腎ごと手術で摘出する治療を行います。これが副腎摘出術といって、私たち泌尿器科が行っている外科的治療です。
副腎静脈サンプリングという検査は、どこからホルモンが過剰に作られているかを判断する非常に重要な検査ですが、どこの病院でもできるものではありません。当院のホルモン疾患を扱う内分泌内科では、この検査を副腎腫瘍が疑われる患者さんに行うことで、より確実な診断をすることが可能となっています。
手術はお腹を大きく切って行う手術ではなく、お腹の中にカメラをいれて副腎を摘出する腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を主に行っています。体には約1cmの傷が3〜4カ所で手術を行うことができますので、お腹を大きく開ける手術に比べて傷の痛みも軽く、手術の翌日から歩くことができます。
高血圧があってきちんと薬を内服しているのになかなか血圧が下がらない方や、急に太り始めたり、体の毛が濃くなったり、顔が丸くなったりした方は、ぜひ内分泌内科を受診し副腎に腫瘍などの異常がないか一度調べてもらいましょう。
当院では、高血圧・内分泌内科と連携して、診療しております。内科的管理は内科で、手術は泌尿器科で行う等、理想的な連携ができております。副腎外科手術は年間40〜50件実施しています。手術を希望される患者様は直接泌尿器科に来院頂いても構いません。お気軽にご相談ください。
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