脊椎の病気とは
腰や脚の痛み・しびれは、歩行や日常生活動作を障害し、さらに精神的苦痛を伴い、生活の質を著しく低下させます。満足に歩けない、買い物やお出かけに行けない、仕事やスポーツに打ち込めないなど、その人にしか分からないつらさがあります。 脊椎は、頚椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個あり、それぞれが椎間板でつながって、列車のように動きます。脊椎の中には「脊柱管」と呼ばれるトンネルがあり、脊髄神経を大切に守っています。ところが、椎間板が脊柱管内にはみ出したり、加齢による変化で脊椎をつなげている靱帯が肥厚したり、脊椎の骨が前後にずれたりすると、脊髄神経を圧迫して、手足がしびれたり痛んだりします。
椎間板ヘルニア(頚椎・腰椎)
突出した椎間板が神経を圧迫して痛みやしびれをおこす。安静時も痛い。
腰部脊柱管狭窄症
椎間板ヘルニア、椎体のずれ、靱帯の肥厚などで脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで脚に痛みやしびれをおこす。座っていると痛くないが、立ってしばらくすると痛くなるなどが典型的な症状。
治療法について
まず、薬やリハビリテーションなどの保存療法を行います。しかし、十分な保存療法を行っても改善が得られない場合には、手術が検討されます。
手術には、背中や脇腹を切開して脊椎を直接触れながら操作を行うオープンの手術と、内視鏡下で操作を行う内視鏡手術の2種類があります。それぞれ適応となる病状が異なり、患者さんとよく話し合いながら適切な方法を選択します。
オープンの手術 | 内視鏡手術 | |
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長所 | •病変部を確実に治療 •腰曲がりなど変形を矯正できる •ずれた骨を固定できる |
•身体への負担が少ない •入院が短い |
短所 | •身体への負担が大きい | •変形の矯正ができない •病変部が多いと時間がかかる •特殊な技術を要する |
適応となる疾患 | •脊椎の変形(側弯、腰曲がり、姿勢異常) •強い腰痛や脊椎のズレを伴う脊柱管狭窄症 •多椎間病変 •圧迫骨折後の変形 •頚部脊髄の広範囲圧迫 |
•椎間板ヘルニア(くび、こし) •腰部脊柱管狭窄症(下肢症状が主) |
当院では、オープン手術は、「Oアームナビゲーション」と呼ばれるコンピュータナビゲーション装置を使いながら、安全で確実な手術を行っています。
詳しくはこちらをご覧ください。
脊椎内視鏡手術は、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に対して、従来法よりも患者さんへの身体的負担が低減されました。そのため、心臓病等患者さんの併存症が理由で全身麻酔が制限され、従来のオープン手術が困難と判断されていた患者さんにも、対応できる可能性があります。
脊椎内視鏡手術について
内視鏡下手術手技は進歩しており、正確で安全な手術操作が可能になりました。一方、神経という非常にデリケートな組織を扱う手術ゆえ、その施行には専門的な技量が要求されます。日本整形外科学会では、脊椎内視鏡下手術技術認定制度があり、当院には技術認定医が在籍しています。
脊椎内視鏡手術の方法として、MED (内視鏡下腰椎椎間板摘出術)やMEL (内視鏡下腰椎椎弓切除術)と呼ばれる方法と、最近全世界的に主流となりつつあるUBE/BESS (二孔式脊椎内視鏡手術)があります。
最新の脊椎内視鏡治療: UBE/BESS
約4mmと8mm程度の小切開を2ヵ所置き、微小内視鏡を用いて、背中の筋肉や組織へのダメージをできるだけ少なくして手術を行うことができます。そのため、手術後の痛みが少なく、回復が早いため、日常生活や職場への早期復帰が可能となります。
また当院では適応に応じて、頚椎疾患 (頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症、頚椎椎間板ヘルニア)にも脊椎内視鏡手術 (MEL法による)を行い、なるべく患者さんの体の負担の少ない治療を心がけるようにしています。
約4mmの皮膚切開から内視鏡を挿入し、約8㎜のもう一つの皮膚切開から機器を挿入してヘルニアの切除などを行います。出血はほとんどありません。
脊椎内視鏡手術についての相談
専門医が患者さんの病状をよく診察し、脊椎内視鏡手術が適応になるか判断します。病状によっては、オープン手術や手術以外の方法が相応しいこともあります。その際には、適切な治療を紹介します。手術の利点とリスクについて、よく説明し、お互いに納得して手術を計画していきます。まだ迷っておられる方の相談も承ります。
- ご紹介・お問い合わせ
- 電話:03-3353-8112(内線37552)
- e-mail: twmu.mis.spine@gmail.com
専門医の紹介
土肥透(どいとおる)
- 2004年 信州大学医学部卒 東京大学整形外科入局
- 2022年 東京女子医科大学整形外科 講師
- 日本整形外科学会専門医
- 日本整形外科学会学会認定脊椎脊髄病医
- 日本脊椎脊髄秒学会認定指導医