股関節グループ
宗像裕太郎(むなかたゆうたろう)准教授
- 卒業年と卒業大学
- 1999年 日本大学
- 専門医などの資格
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- 日本整形外科学会専門医
- 日本人工関節学会認定医
- 日本専門医機構整形外科専門医
- 日本人工関節学会認定
- 日本股関節学会評議員
- 日本人工関節学会評議員
- 専門領域と主な術式
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- 人工関節外科、外傷外科、特に最小侵襲人工股関節、人工股関節再置換術
- ひとこと
- 患者さんが「手術した事を忘れてしまう」と思っていただけるような、痛みもなく、可動域制限もない人工股関節置換術を目指しております。
また、初回手術がうまく行かなかった症例や、人工関節の経年変化による障害、人工関節周囲骨折の治療もしっかり行っております。
倉光祐二郎
- 卒業年と卒業大学
- 2010年 富山大学
- 専門医などの資格
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- 日本整形外科学会専門医
- 専門領域と主な術式
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- 股関節 整形外科一般
- ひとこと
- 診療においてはできるだけわかりやすい説明と、緊張しない雰囲気づくりを心がけております。全てにおいて患者さんが納得できる医療を提供できればと考えております。
専門は股関節疾患です。足の付け根の痛みや、歩きづらさ等の症状でお困りの方はご相談ください。
班目ひろみ(まだらめひろみ)助教
- 卒業年と卒業大学
- 2013年 東京女子医科大学
- 専門医などの資格
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- 日本整形外科学会専門医
- 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
- 専門領域と主な術式
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- 股関節、整形外科一般
- ひとこと
- 丁寧な診療、分かりやすい説明を心がけます。
股関節痛でお困りの方はご相談ください。
診療概要
当科で行う、最新の人工股関節置換術(2023年4月時点)
股関節は人体最大の荷重関節であり、歩行する際の左右の要となる重要な関節です。そこが障害されると、痛みによる歩行困難や股関節の動く範囲が狭まることによる日常生活上の不便(靴下がはけない、足の爪がきれないなど)が多くなり、お困りの方は多く存在します。
代表的な疾患は、軟骨がすり減って股関節の変形が生じる病態で、広い意味で変形性股関節症と言いますが、加齢変化や酷使が原因としておこる一次性(原発性)股関節症と、生まれつきの股関節の形が悪いことや、外傷などが誘引となっておこる二次性(続発性)股関節症に分かれます。その中でも本邦で最も多く認められるのは、生まれつきの股関節の形が悪いことが原因となり関節の変形が進む、二次性(続発性)股関節症の中の形成不全性股関節症です(亜脱臼性の変形性股関節症とも呼ばれます(図1))。
他にも、ステロイド大量投与の影響やアルコールの大量摂取等が原因で発生する大腿骨頭壊死や(図2)、加齢により背骨が曲がってしまい、それに応じて骨盤が後ろに倒れることなどが原因で急速に股関節の破壊が生じていく急速破壊型股関節症(図3)など、病期が進行すれば関節の破壊による痛みや可動範囲の制限、脚の長さが短くなるなどの障害により、どんどん日常生活が不便になります。
図1. 寛骨臼形成不全が土台にあり、変形が進行した右変形性股関節症です。右下肢は2cm程度短くなっており、仕事や日常生活が不便な状態です。
図2. アルコール性の両側大腿骨頭壊死です。関節の変形はそこまで強くありませんが、痛みのため、仕事や日常生活が不便な状態です。
図3. 左急速破壊型股関節症です。特に誘因なく左股関節痛が出現してから、わずか3ヶ月程度で股関節の破壊が進行し、歩行困難な状態です。
その状態を劇的に改善することができる治療法が人工股関節全置換術(図4)です。寛骨臼(骨盤側)にお椀型の部品(カップ)、大腿骨に楔型のチタン合金性の部品(ステム)を埋め込み、さらに、カップの中に、セラミックやポリエチレン製の受け皿(ライナー)を嵌め込み、ステムの軸にセラミック製のボール(ヘッド)を嵌め込み、新しい股関節を作り上げる手術です(図5)。
図4. 図1の症例の、右人工股関節全置換術後写真です。脚長差も補正されました。
図5. 人工股関節に使われる部品です。カップが骨盤側に埋め込まれ、カップの中にライナーが嵌め込まれ、ステムが大腿骨に埋め込まれ、ヘッドがステムに嵌め込まれます。最後にライナーにヘッドが整復されることで人工股関節が完成します。
その手術には様々なアプローチや術式がありますが、当科が行っているのは仰向けの状態で行う最小侵襲手術(Anterolateral supine MIS)で、股関節の安定性や機能に関わる重要な筋肉、腱等をほぼ完全に温存しつつ人工関節を適切に設置します。それにより、早期の機能回復に加えて脱臼の危険性をほとんどないレベルに抑制できますので、術後に生活動作の制限はほぼなく、スポーツも大抵のものは許可しています。しかし、格闘技やそれに準ずるハードなものはご遠慮いただいております。また、より骨・軟部組織の温存が可能なステムとして、カーブド・ショート・ステムというデザインがありますが、体格や活動性がそこまで大きくない患者さんに対しては、積極的に採用しております(図6a,b)。
図6a. 両側変形性(形成不全性)股関節症の写真です。症状も変形も両方同等であり、片側だけ手術を行なっても、残った側の痛みのためにリハビリテーションが進まない可能性が高く、そこで負担がかかることで残った側も一気に進行する可能性が高い状態です。
図6b. カーブド・ショート・ステムを用いて、両側同日人工股関節全置換術を施行しました。翌日から車椅子に乗りトイレ等へ移動可で、さらに痛みに応じての歩行訓練もすぐに開始できます。
手術の切開創に関しても、従来は股関節の前外側に、縦に10cm前後の切開で施行しておりましたが、2022年7月以降は、より傷が綺麗に治りやすい、横に8cm前後の切開(いわゆるビキニ皮切, 図7a,b)で施行しております。
図7a. ほとんどの全ての初回人工股関節全置換術は、より創傷治癒しやすく、美容的にも優れた横皮切(いわゆるビキニ皮切)で施行しています。
図7b. 術後9ヶ月で、手術創は股関節を屈曲した際のシワに一致し、ほとんど目立ちません。
この手術は、通常は術後2週間程度の入院期間です。退院の目安として、①杖等、補助具を用いて、平地歩行や階段昇降が可能で、②切開創が問題なく治癒している事、としていて、それが約2週間という事です。術後4〜5日で問題なく歩行可能となり、退院する患者さんもいらっしゃいますが、その期間では創部が治癒しておらず、週2回程度外来通院していただき、創部の確認をさせていただきます。また、十分な機能回復のために、術後3週以上のリハビリテーションが必要な患者さんには、リハビリテーション専門病院等への転院をしていただいております。患者さんからよく受ける質問として、人工股関節の寿命、耐用性の問題があります。骨に直接埋め込まれるチタン合金性の本体が問題を起こすことはあまりなく、実際に動く関節として使用されている受け皿とボールに磨耗や破損等の問題が生じることがほとんどです。現在、当科が関節面として使用しているポリエチレンやセラミックはほとんど磨耗の問題が起こらず、20年から30年の耐用性が期待できます。そして適切な時期に適切な再置換術を行えるのなら20代、30代といった大変若い患者さんに対しても人工股関節の適応となる場合があります。逆に、年齢の上限もほぼ無いと言ってよく、全身状態が麻酔、手術に耐えうるものならば90代後半の患者さんに対しても施行できます。
上記と関連しますが、過去に受けた股関節の手術後の障害(骨接合術後の問題、人工股関節のゆるみ、破損、周囲の骨折(図8a,b)、反復脱臼など)に対する再置換術も可能な限り対応しております。
再置換術の場合は仰向けではなく、横向きでの手術となり、完全な最小侵襲手術は困難ですが、極力、筋肉や腱を温存する様に心がけております。
図8a. 右人工骨頭術後20年ほどで、すでにゆるみがある状態で転倒し、人工骨頭周囲骨折を受傷しました。
図8b. 骨盤側、大腿骨側共に再置換術に加え大腿骨骨折に対する骨接合術も併用し、術後1週間で松葉杖歩行も可能となりました。
研究概要
1.グループの研究テーマ
- 仰臥位前外側アプローチで行う人工股関節の利点
- Curved Short Stemの有用性と、機種間の比較
- 脊椎骨盤アライメントと人工股関節の関係性
- ビキニ皮切(横皮切)で行う人工股関節の利点
- Full HA coated stemの骨反応と成績
- Zweymüller type stemの骨反応と成績
2.股関節グループ学術論文
2020年以降【英文】
- ●Comparison of radiographic changes in rectangular curved short stem with thin versus thick porous coating for cementless total hip arthroplasty: a retrospective study with a propensity score matching.
○Munakata, Y. Kuramitsu, Y. Usui, Y. Okazaki, K.
Journal of Orthopaedic Surgery and Reserch. 2021; 16: 247. Doi: 10.1186/s13018-021-02397-3.
2020年以降【邦文】
- ●【人工股関節周術期管理マニュアル-術前計画からリハビリテーションまで-】THAのリハビリテーション
○宗像 裕太郎
整形外科最小侵襲手術ジャーナル. 2022; 105: 80-88. - ●人工股関節全置換術における製造販売元の異なるインプラントの混合使用と、非混合使用との比較-合併症や再手術率に違いはあるか?-
○宗像 裕太郎, 倉光 祐二郎, 薄井 豊, 岡崎 賢
Hip Joint. 2022; 48: 218-223. - ●腰椎固定術後の末期変形性股関節症患者に生じた化膿性仙腸関節炎の1例
○伊崎 直哉, 倉光 祐二郎, 薄井 豊, 宗像 裕太郎, 岡崎 賢
Hip Joint. 2022; 48: 169-172. - ●Full HAステムとZweymueller型ステムの術後半年時点でのX線学的評価の比較
○倉光 祐二郎, 薄井 豊, 宗像 裕太郎, 岡崎 賢
Hip Joint. 2022; 48: 116-119. - ●Well-fixed cementless stemの抜去を要した再置換術の検討
○宗像 裕太郎, 薄井 豊, 倉光 祐二郎,岡崎 賢
日本人工関節学会誌. 2021; 51: 347-348. - ●人工股関節全置換術後の腸腰筋腱炎に対し腱切離術を施行後に反復脱臼となった1例
○伊藤 富良野, 宗像 裕太郎, 薄井 豊, 倉光 祐二郎, 岡崎 賢
Hip Joint. 2021; 47: 2, 653-656. - ●人工股関節全置換術術後早期に仙骨脆弱性骨折を認めた2例
○倉光 祐二郎, 薄井 豊, 宗像 裕太郎, 森田 裕司, 岡崎 賢
日本人工関節学会誌. 2020; 50: 491-492. - ●当院における大腿骨近位部骨折の現状
○伊藤 淳哉, 倉光 祐二郎, 桑島 海人, 伊藤 匡史, 宗像 裕太郎, 岡崎 賢
骨折. 2020; 42: 1, 167-169.