Bedwetting
夜尿症とは生まれたときから続く夜間寝ている間のおねしょのことで通常5歳ごろからご両親が気にし始めます。実際に気がかりになるのは小学校に上がってからも継続する場合が多いようです。どの程度のおねしょの回数をご両親が問題にするかは年齢によって異なりますが、一般的には1週間に1回以上のおねしょが続いていれば「夜尿症がある」としています。
女の子に比べて男の子に多いのですがだいたい5歳で15~20%のお子さんにみられ、10歳で5~10%、15歳で1~2%ぐらいにみられます。成人したあとでも0.5%つまり200人に1人ぐらいは夜尿症が完全にはなくなりません。
いくつかの理由が考えられますが科学的に完全に解明されているわけではありません。
夜尿症のお子さんは眠りが深く、おねしょをしていても起きる事はほとんどありません。夜間尿意で起きる事は無いといってよい状態です。基本的には夜間の尿量と膀胱容量のバランスが問題になってきます。要するに膀胱容量が200mlの場合は夜間尿量が200mlを超えれば夜尿になり199mlでおさまれば夜尿なく朝起きることができることになります。精神的なストレスなども原因としてよくいわれますが、小さいときから続いている夜尿症では明らかな因果関係は少ないようです。一度夜尿症が無くなってから半年以上経ってまた夜尿症が始まる場合もありますが、このような時は生活環境の変化や何らかのストレスが引き金になっているときがあります。ときにミルクなど食事アレルギーの関与もありますが頻度は高くありません。
両親に夜尿症があった場合、こどもが夜尿症になる頻度は高いといわれていますが、明らかな原因遺伝子は見つかっていません。
夜尿症だけでなく昼間も尿を漏らしたり、おしっこに細菌がついて尿路感染を起こすようなお子さんは、単なる夜尿症ではなく排尿障害(尿失禁の項を参照)を伴っている場合があります。このような時は小児の疾患に詳しい泌尿器科医に相談すべきでしょう。寝ているときのおねしょのみのお子さんの場合、成長に伴い頻度は減ってきます。いつから減るかに個人差がでてきますので、小学校低学年でも頻度に変化が無い場合は一度病院に相談するのも良いかもしれません。お子さんの状態を相談することでご両親が安心・納得されることも大事だと思います。統計的には小学校入学時に夜尿症のあったお子さんも卒業の時にはほとんどが改善している事がわかっています。自然に良くなるものだと親もこどももおおらかに構えることが一番です。そうはいっても合宿や学校行事で自宅以外に泊まったりする機会も出てきます。お子さんがおねしょを気にするようになったら病院に相談してみてください。
両親からお話を聞くことです。レントゲンやエコーの検査は必要な時にしか行いません。ですから医師に相談するまえにお子さんの様子に関してご自宅で以下のことをよくチェックして来てください。
以上の質問に加えて、尿の検査をして尿に細菌がついて汚れていないかどうかを調べます。おしっこの出し方に問題があったり昼間ももらすような場合は、おしっこの出具合を調べる検査や、エコーで腎臓や膀胱を調べる検査をおこないます。
まず最初はカフェインの含んでいる飲み物をやめて、昼間は十分水分をとって規則正しく(6回以上)トイレに行く習慣をつけるように指導します。また便秘をしないように食物繊維の多い食事を心がけるようにしてください。寝る前2~3時間前の水分摂取を減らして、寝る前にトイレに必ず行っているか確認します。小学校の低学年の間はこのようにして自然に成長を見守るのもよい選択肢のひとつです。この基本的な指導に加えて現在行っている治療法としては以下のようなものがあります。
お子さんが8歳前後になっておねしょを治したいと希望するようであれば試みてよい条件づけ訓練法です。最初におねしょアラームを購入する必要があります。海外にはEnuresis alarmといっていろんな種類がありますから、英語がおっくうでなければ米国のインターネットで調べて通販で購入するのも一つの手です。日本でも「ちっちコール」「ウエットストップ」「ピスコール」が販売されています。インターネットで調べて購入することができます。このアラームは寝る前にお子さんのパンツに小さなセンサーをつけ、おしっこでパンツがぬれるとアラームが鳴ってお子さんを起こす仕組みになっています。ただし最初はお子さんが自分で起きることはまずないので、ご両親が起こしてトイレまで連れて行き、おしっこが残っていれば完全に排尿させる必要があります。根気と忍耐、時間もかかり、両親とお子さんの両方に最低3ヶ月は続ける意欲がないと挫折します。しかし効果が出てくると夜中に起きなくても朝までおねしょをしないでおしっこをためられるようになります。
おねしょをするお子さんの多くは夜間に多尿になっています。人間の体の中では尿量をへらすために抗利尿ホルモンというホルモンが分泌されていますが、夜尿症のお子さんでは夜間のこのホルモンの分泌が少ない場合があります。そのような場合は寝る前にこのホルモンを補ってあげると夜尿が生じません。舌下錠として内服薬があります。半分以上のお子さんで効きますが、やめると元に戻ることが多いのが欠点です。ただしよく効くお子さんでは普段は使わなくても修学旅行など、ここぞという場合に使用してもらうことが出来ます。この薬を使うときは夕食後の水分は控えるようにしてください。
この薬は膀胱に働いて膀胱の収縮を抑制しリラックスさせるはたらきがあります。それにより膀胱にためられる尿量が増えることが期待できます。膀胱の働きが不安定な昼間のおもらしには効くことが多いのですが、通常夜尿症では単独使用では効果がありません。デスモプレシンやおねしょアラームと組み合わせて用いたりします。こどもでの副作用は少ないのですがときに頭痛、めまい、のどの渇きを訴えます。
この薬は三環系抗うつ薬と呼ばれうつ病に使われている薬ですが、以前よりこどものおねしょの治療にも使われています。夜尿症に対する作用機序についてはよくわかっていない点もあり効果も個人差がありますが、抗コリン薬と組み合わせて投与したりします。誤って薬を大量に飲んで重篤な副作用を起こしたことも報告されていますので使用するときは注意が必要です。