膀胱がん

Bladder cancer

膀胱がんとは

膀胱は尿をためる袋状の臓器で、移行上皮という粘膜で裏打ちされています。

膀胱癌とはこの粘膜より発生する癌です。

発生する癌の種類としては移行上皮癌が最も多くみられます。男性は女性の3倍、喫煙者は非喫煙者の2~3倍の発生率といわれています。歴史的には染料を扱う職業に多く発症したことが知られています。

膀胱癌の80%は粘膜内でとどまる表在性のものですが、膀胱を越えて広がりリンパ節や他の臓器に転移をする場合もあります。

症状

肉眼的血尿がよくみられる症状ですが、膀胱炎、尿路結石も同じ症状を示すため区別はとても重要です。

膀胱癌は炎症、結石と異なり痛みを伴わないことが特徴と言われていますが、膀胱炎の併発や、腫瘍部に結石ができることもあるため頻回に膀胱炎を繰り返す場合は検査を要します。

腫瘍が進行すると膀胱炎と同様に頻尿がみられることもあり、痛みを生じることもあります。

診断

  • 尿検査

    血尿や尿中癌細胞の有無を調べます。

  • 内視鏡検査

    尿道よりカメラを挿入する検査です。

    肉眼的に腫瘍の有無を確認でき、生検と呼ばれる組織検査をすることもできます。

  • 超音波(エコー)検査

    腫瘍の有無を確認することに優れた侵襲性がない検査です。

  • CT検査

    X線を回転しながら照射して、断層画像を作成し、体内を詳しく調べる検査です。レントゲン用の造影剤を使用することで、目的部位をより詳しく検査できます。

    膀胱癌の部位や腎盂尿管癌の併発を確認できます。

  • MRI検査

    大きな磁石による磁場の中で体の中の水素原子の核磁気共鳴現象を測定し、さらにコンピュータで解析し、人体の内部構造を画像化する検査です。MRI用の造影剤を使用することで、目的部位をより詳しく検査できます。

治療法

手術療法

経尿道的膀胱腫瘍切除術

膀胱癌の80%は表在性(非筋層浸潤がん)で転移をおこしにくく、内視鏡的に切除できます。

しかし追加治療をしないと約60%は再発し再手術が必要となります。

腰椎麻酔で行い、手術時間は約1〜2時間です。手術後3日で退院できます。

追加治療は、切除した標本を解析し再発する可能性が高い方におこないます。術後外来でおこなうBCG膀胱内注入療法や、再度経尿道的に切除をおこなうことがあります。

膀胱穿孔(膀胱の壁に穴が開く)が大きな合併症ですがごく稀です。

膀胱全摘術

膀胱筋層以上に広がる浸潤性の膀胱癌は内視鏡では完全に切除できないため、全身麻酔で行う膀胱全摘術が必要になります。

膀胱がなくなるため尿路変向術(回腸導管、代用膀胱など)という排尿路を作る手術も同時に行い約7時間かかります。

出血量が多いため自分の血液を手術前に保存し、輸血に備える方法(自己血輸血)がとられることがあります。

回腸導管では尿をためる袋を体外に装着する必要があるため、私たちの施設ではQOL(生活の質)を考え、自排尿のできる腸管を用いた代用膀胱造設術を積極的に行っています。

膀胱部分切除術

内視鏡的にけずり切れないと考えられる腫瘍に行われます。最近はあまり行われません。

その他の療法

放射線療法

放射線を膀胱癌に照射し治療します。体力的に手術が厳しい場合や膀胱を温存したい際に行われます。

化学療法(抗癌剤治療)

転移がある場合やその可能性が高い際に抗癌剤を投与します。

膀胱の温存治療として、膀胱腫瘍の動脈内に抗癌剤を注入する動脈注入療法が行われることもあります。

膀胱内注入療法(抗癌剤、BCG)

内視鏡手術のあと癌の膀胱内再発を防ぐために行われます。

抗癌剤よりBCGの方が有効といわれていますが、激しい膀胱炎症状を伴う場合もあります。