教授挨拶

segawa

診療部長 世川 修

私は1988年に順天堂大学医学部を卒業し、病棟医長として順天堂大学小児外科の一時代を築き上げてきました。2000年10月より東京女子医科大学病院での小児外科立ち上げのために異動となり、その後徐々に小児外科を発展させ、2015年4月より病院の標榜診療科として独立することができました。現在は基幹分野には属していませんが、独立した診療科として病院での小児外科診療や医学部・看護学部での教育に携わっています。また、小児外科の診療部長とともに、医療安全科を兼務し、医療安全管理責任者として病院の医療安全・医療対話部門の副院長も担当していました。

私は順天堂小児外科在籍時代の1992年に、わが国初となる新生児に対する腹腔鏡手術を執刀する機会を得ました。1994年には、当時の小児内視鏡外科手術で世界的に有名であったメルボルン王立小児病院へ留学し、帰国後も小児内視鏡外科手術のパイオニアとして、常にわが国の小児内視鏡外科手術分野でリーダー的活動を行ってきました。現在も、東京女子医科大学病院での小児内視鏡外科診断・治療のみでなく、他院での手術指導や学会におけるセミナーの開催等、わが国全体の小児内視鏡外科手術のレベル向上と、医療安全を含めた教育に多くの時間を費やしています。

また私は、医師になってすぐより消化器内視鏡に興味を持ち、小児外科と並行して成人の消化器内視鏡診断・治療に携わってきました。現在でも、外勤先の病院では成人の消化器内視鏡を日常的に行っており、私のライフワークとなっています。

そのため、東京女子医科大学病院小児外科では小児内視鏡(胸腔鏡、腹腔鏡)診断・治療、小児消化器内視鏡診断・治療が、新生児も含めた多くの疾患に対して低侵襲な小児医療として行われています。東京女子医科大学病院の小児関連各科には非常に重症な症例が多く、それらに合併する小児外科疾患の診断・治療は極めて困難でありますが、このような重症例にこそ、こどもの未来を考えた低侵襲で優しい医療が必要であると考えています。

こどもは大人のミニチュアではなく、小児医療は高度な専門性をもった領域です。一方、大学病院においては、小児期に手術を行ったこどもは成人になってからも小児外科医が診療を継続するという観点からは、小児外科医はこども専門の外科医ではなく、こどもを得意とする一般外科医であるべきとも考えます。

ただ単にこどもが好きというだけではなく、こどもの身体にメスを入れることの意味を深く考え、常に謙虚な姿勢でこどもと家族に接し、こどもを愛し、家族に寄り添い、こどもの命の重さを誰よりも知り、こどもの長い人生を常に考えた小児外科医療を行なうことが私の目標であり使命であります。

最後に、私の順天堂小児外科時代の恩師からいただいた言葉に、自分の想いを書き加えた言葉(座右の銘)を書き記します。
『小児外科医とは、神様が作り忘れたものを作り、作り間違えたものを作り直す。そして、自分のこどものように両親と共にこどもの心を育む。これを天職とする。』