ブックタイトルSincere No.11 2019.1

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概要

Sincere No.11 2019.1

移植後の患者さんをケアするのが、医師をはじめ移植コーディネーター、看護師、薬剤師、理学療法士など多職種のスタッフで構成される「重症心不全治療チーム」である。移植直後はもとより、これまで海外渡航移植を含めた100人近い移植患者さんを診ている。移植コーディネーターはドナーとレシピエントの“橋渡し役”であり、実際に移植が行われるときはJOTと連絡を取りながら全体のタイムスケジュールを組む役割も担っている。チームを率いる布田伸一教授(女子医大大学院重症心不全制御学分野、東医療センター心臓血管診療部)は次のように語る。「移植後はまず止血に努めます。次に、ドナーの心臓はレシピエントのものではないため拒絶・排除しようとしますから、これを抑えるための処置が必要です。拒絶のタイプは人によって異なりますから、投与する薬も違ってきますが、免疫抑制薬を服用すると抵抗力が低下して感染症にかかりやすくなります。ですから、きめ細かな管理をしなくてはなりません」移植を受けた30歳代の男性は、幸い拒絶反応を起こすことはなかった。そして、長い待機期間によって生じた筋肉の衰えから、リハビリに少々時間がかかったものの、3か月半後の12月22日、元気になって退院したとのことだ。人先天性心疾患の治療でも女子医大は大きな役割を担っているのである。◆チームで心臓移植患者さんをケア冒頭に記した生後10か月の男の子が心臓手術を受けた同じ日(2018年9月7日)、19番手術室では心臓移植が行われていた。脳死と判定された臓器提供者(ドナー)の心臓を、重症心不全の移植希望者(レシピエント)に移植する手術が心臓移植である。2日前の9月5日、長崎大学病院に入院していた成人女性が脳死と判定され、心臓・両肺・肝臓・膵臓・腎臓の各臓器が提供された。日本臓器移植ネットワーク(JOT)に登録されている移植希望者の中から、臓器ごとにコンピュータで公平にレシピエントが選定され、心臓が女子医大病院に入院中の30歳代男性に移植されることとなった。翌日の夕方、摘出班が長崎大学病院へ向かい、7日早朝にドナーの心臓を摘出。それをヘリコプターで羽田空港へ、そこから緊急車両で女子医大病院に搬送し、10時に手術室へ持ち込まれた。こうした摘出や搬送の時間を逆算して、すでにレシピエントの手術が進められており、直ちに到着した心臓の移植が開始された。ちなみに、当該ドナーの膵臓と腎臓(1個)も、女子医大病院に入院中の50歳代女性に同時移植された。日本臓器移植ネットワークの理事を務める重症心不全治療チームによるカンファレンスの模様。布田伸一教授。治療方針を検討する(左から)布田教授、服部英敏医師、移植コーディネーターの遠藤奈津美看護師、菊池規子医師。08 Sincere|No.11-2019