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概要

シンシア10号

とミスにつながりかねないということを、指差し唱和によって学びました」、「危険ポイントをみんなで共有し、恥ずかしがらずに指差し唱和を行うことの大切さがよく理解できました」といった学生たちの声からも、指差し唱和への抵抗感が薄れていったことがうかがえる。寺崎教授は、「医師はいろいろな場面でリーダーシップをとらなければなりません。KYTによって自分では気づかなかった危険が見えてきたり、違った視点から対策を考えたりするなどいろいろな“気づき”があったと思いますが、チーム医療ではそういったことをスタッフから指摘してもらえるようになることがとても重要です。それがリーダーシップの発揮につながるということを頭に入れておいてください」と、学生たちにアドバイスして授業を締めくくった。■医学部と看護学部の学生が合同で「チーム医療の基礎」を学ぶ医学部と看護学部の4年生を対象に行われる「チーム医療の基礎」と「チームSTEPPS」という演習も、医療安全への意識向上をテーマとした女子医大ならではの授業である。「チーム医療の基礎」は、医学部・看護学部の学生が6~7人の混成グループに分かれ、与えられた課題について討論し発表するというグループワーク形式で行われる。それぞれのグループには、看護師をはじめ薬剤師、臨床検査技師などさまざまな職種の人たちが1人ずつ講師として加わり、アドバイスを行う。実際に課題として提供されたのは、糖尿病罹患歴約10年の55歳男性ビジネスマンの症例で、次のような内容だった。飲酒について外来の医師は「少しぐらいならいいでしょう」といい、管理栄養士は「一切やめましょう」という。薬もたくさんあってどれが何だか分からない。間食をやめられず外食の機会も多くなり、血糖値は右肩上がり。このため教育入院となった。病棟の医師からは間食をやめるよう指示されたが、糖尿病認定看護師からは「間食の頻度や内容、摂取時間を変えるなど自分に合った方法を考えましょう」とアドバイスされた。それでも血糖値が不安定なため、膵臓のCT検査、肝臓の超音波検査、心電図検査も受け、ついにインスリン療法を行うことになった。主治医からは「一時的な対処」と説明されたが、不安になって糖尿病療養指導士に「ずっとインスリンを打ち続けなければなりませんよね」と聞くと、「そうですね」とのこと。数か月後、主治医から「そろそろ飲み薬に戻しましょう」といわれるまで、ショックと不安を抱きながらインスリンを打ち続けていた。この症例をもとに、各グループが問題点とチーム医療を円滑に進めるためのポイントを中心に討論を行った。問題点としては、「あまりにも情報が多すぎて患者さんが混乱している」、「基本的に患者さんとの信頼関係が築けていない」、「医師や職種によって治療方針が各グループの代表が討論の結果を発表。異なるため患者さんが何を選択したらよいか分からない」、「検査やインスリン療法についての説明が不足していて患者さんの理解が得られていない」、「情報共有できていないのは連携の意識が薄いから」といったことなどが指摘された。そして、チーム医療を円滑に進めるためには、「医療従事者同士がホウレンソウ(報告・連絡・相談)を怠らず記録を残すことが大事」、「各職種がどんなことをしているか確認し合い、発言できる雰囲気をつくる」、「カンファレンスで患者さんに何を伝えるかを明確にする」、「患者さんへの治療方針や処方した内容を電子カルテに書き込むことによって情報を共有する」などの意見が出された。また、ある講師は「医学部生と看護学部生が交互に座って積極的にコミュニケーションをとろうとしていたのが印象的でした」と語った。このことからも分かるように、学生たちはチーム医療の大切さを十分理解したといえよう。医学部と看護学部の学生が一緒になってグループ討論。■「チームSTEPPS」で医療安全の本質を徹底周知一方、「チームSTEPPS」も医学部・看護学部の合同授業として2016年度から導入された。チームSTEPPSとは、医療の質と安全を向上させるためのチームワークシステムのこと。女子医大では医療安全を推進するツールとしてその研修に力を入れており、すでに学内の全医療施設で2,500人超が受講している。このチームSTEPPSを学生にも受講させているわけだが、その狙いと意義について医療安全・危機管理部の加藤多津子部長(医療・病院管理学教室准教授)は次のように語る。「医学部4年生はSincere|No.10-2018 15