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概要

シンシア No.7

医療研究最先端せた功績が世界的に評価され、国際外科学会の会長を務めた人物である。消化器病センターが“食道外科の聖地”と評されるのもうなずけよう。大杉教授は1983年から大阪市立大学で食道を中心とした上部消化管の外科に専従し、95年に最も早く胸腔鏡食道がん手術を開始した。2010年に女子医大の客員教授となり、大阪市立大学を退任した2016年から消化器病センターに常勤している。「胸腔鏡手術では、病巣を10倍に拡大して見ることができますから、より安全・確実にがんを切除できます。開胸手術に比べて手術時間が短いうえ、出血が少なく創も小さくて済み、患者さんの負担を大きく軽減できます」と、大杉教授は胸腔鏡食道がん手術のメリットを説明する。■手術の進歩を支援する臨床解剖学の研究を推進特筆すべきは、リンパ節転移を予防するために胸腔鏡手術でもリンパ節を徹底切除する術式を確立したことだ。これにより、大杉教授は国内外から注目され、海外においても多くの技術指導や講演を行ってきた。これまでに手がけた食道がん手術は優に1,000件を超えるが、このうち胸腔鏡手術は600件以上にのぼっている。消化器病センターでは年間約100件の食道がん手術を手がけているが、大杉教授の指導のもと、その6割が胸腔鏡下で行われており、生存率の向上に貢献している。「胸腔鏡によって病巣を拡大して見るというのは手術の大きな進歩ですが、それによってこれまで見えていなかった血管や神経が明らかとなり、それらの構造や機能がどうなっているかを見極めなければならない必要も出てきました。つま胸腔鏡食道がん手術のパイオニア・大杉治司教授。り、より精緻な解剖学が求められているのです。それも従来の系統解剖学ではなく、手術をサポートする臨床解剖学でなければなりません」。そう語る大杉教授は、「臨床解剖学の研究をライフワークとしながら後進を指導し、食道がん手術のノウハウを伝授していきたいですね」と、聖地にふさわしい新たな実績づくりに意欲を燃やしている。消化器病センター外科のカンファレンス風景。Sincere|No.7-2017 09