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概要

シンシア No.6

医療研究最先端食道再生細胞シート治療を確立した消化器外科の大木岳志講師。した。また1995年、「自己免疫性膵炎」という疾患概念が消化器病センターから世界に発信され、その論文の引用件数はこれまで数万件にもおよんでいるという。さらに、女子医大統合医科学研究所の古川徹教授との共同研究により、膵管内管状乳頭腫瘍と命名された腫瘍が2010年のWHO腫瘍組織分類において新規腫瘍として収載されたほか、膵管内乳頭粘膜性腫瘍における遺伝子研究の成果も国内外から大きな注目を集めている。膵臓・胆道グループは、このように数々の世界的な業績を上げているグループとして異彩を放っている。診療面では、とりわけ膵がんの早期発見をめざし、超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診に力を入れている。また、内視鏡的逆行性胆管膵管造影による検査や治療も積極的に行っている。膵がんは難治がんの代表であるだけに、今後も早期発見と新たな治療法の確立食道再生細胞シート治療の治験を進める先端生命医科学研究所の金井信雄講師。に向けてグループのチャレンジが続くことだろう。徳重教授は消化器内科の今後について、「我々の大きなターゲットはやはりがんです。いかに早くがんを見つけ、治療するかが使命ですが、同時にがんのリスクを下げる、つまりがんを予防することも求められます。そういうことにも対応できる内科医を育てていきたいですね」と抱負を語ってくれた。秒読み段階に入った細胞シートによる食道再生医療女子医大は周知のとおり、細胞シートによる再生医療研究で最先端を走っている。前述した早期食道がんの内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の潰瘍に対し、「細胞シートを移植すれば食道狭窄を抑制できるのではないか」と発想したのが、消化器病センター外科の大木岳志講師である。2004年、女子医大の先端生命医科学研究所に出向しているときだった。大木氏は大動物実験による基礎研究を経て、2年間という異例の短期間で臨床応用へと進み、2008年に世界で初めて、細胞シートによって食道を再生させ食道狭窄を抑制するという新たな治療法を成功させた。臨床応用は10例を数え、いずれも安全で良好な成績だった。このニュースは海外からも注目され、ノーベル生理学・医学賞の選考機関であるスウェーデンのカロリンスカ研究所からも共同研究のオファーがあり、すでに10例の臨床研究を終えている。この先進的な治療法は、消化器内科の領域としていよいよ治験が開始されることとなった。具体的には、女子医大発のベンチャー企業・セルシードが「食道再生上皮シート」の治験開始に向けて医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験届けを提出。去る5月6日にPMDAの安全性確認(30日調査)が終了し、国立がん研究センター中央病院および東病院の2施設で治験がスタートした。セルシードとともに治験への準備を進めてきた先端生命医科学研究所の金井信雄講師は、「順調にいけば1年以内に治験は終わり、薬事承認の運びとなる見通しです」という。食道再生医療が本格化に向けて秒読み段階に入ったわけである。「がん治療は切除するだけでなく、その後の患者さんのQOLも考慮する必要があります。消化器病センターから発信した再生医療は、がん治療の歴史的な前進といえるでしょう」という大木講師の言葉が印象的だった。安全キャビネットでの細胞シート研究風景。先端生命医科学研究所で再生医療の研究を行う消化管チームのスタッフ。Sincere|No.6-2016 09