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概要

シンシア No.6

50年以上にわたって消化器病専門医を輩出し続けるユニークな施設東京女子医科大学消化器病センター長・消化器外科教授山本雅一消化器病センターは1965年、初代センター長・中山恒明先生の発想によって創設されました。消化器病に特化したセンター(現・西病棟A)は、内科と外科の隔てがなく、検査部門や手術室、入院施設も備え、建物自体が一つの病院といえるものでした。患者さんにとっても働く人にとっても、非常に機能的な施設であることが大きな特徴といえます。医学部卒業後6年間の一貫した教育研修制度である「医療練士制度」が設けられたのも、消化器病センターの特徴の一つです。当時はこうした研修制度がなかったため外部にも大きなインパクトを与え、日本のほとんどすべての医学部から若い人たちがここに集まってきました。そして、研鑽を重ねて消化器病センターを巣立っていった人は600人以上にのぼり、全国各地の医療機関はもとより、世界で活躍している人も少なくありません。内視鏡的治療はそのほか、大腸ポリープ切除(年間約900例)、潰瘍止血術(同80例)、食道・胃静脈瘤治療(同100例)、胆膵系治療(同300例)などの実績を有している。消化器病センターは内科と外科が一体となって診療に当たっているのが大きな特徴だが、それを最も象徴しているのが肝移植における対応だ。移植手術が行われる前は、移植を受ける患者さん(レシピエント)も臓器提供者(ドナー)も内科が受け入れ、術前管理と手術適応の決定を行っている。「そうすることによって外科は手術に専念することができます。移植手術前に内科が患者さんとドナーの方をお引き受けしているのはここだけでしょう」と徳重教授はいう。食道・胃静脈瘤の新たな内視鏡的治療が高評価消化器内科は上部消化管、下部消化管、肝臓、膵臓・胆道の4つのグループに分かれ、それぞれ専門の医師がチームとなって診療・研究に取り組んでいる。各グループの特徴や研究内容を見てみよう。上部消化管グループは、前述のように内視鏡検査が年間1万例にもおよんでおり、“内視鏡検査のメッカ”といわれているほどだ。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は10年以上前の2003年から導入。症例の多い慢性肝疾患の門脈圧亢進症に伴う食道・胃静脈瘤については、3D-CTや超音波内視鏡を駆使して新たな分類を確立し、効果的な内視鏡的治療を行っている。その分類と治療効果は、国内外の学会で高い評価を得ている。上部消化管グループでは、40年以上にわたって鳥肌胃炎の症例を多く経験している。鳥肌胃炎は、ピロリ菌感染による慢性胃炎の中でも進行が速い未分化型胃がん発生のリスクといわれているものだ。現在、長期の臨床経過をまとめているところであり、その成果が期待される。下部消化管グループは、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェットなどの炎症性腸疾患に重点を置いた診療を行っている。中でも、クローン病の狭窄病変に対する治療法の確立に取り組んでいることが注目される。通常の大腸内視鏡検査のほか、カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡による小腸疾患の検査、病理学的研究にも力を入れているほか、最近では腸上皮の再生医療にも取り組んでいることが特筆される。非アルコール性脂肪肝疾患のオピニオンリーダー肝臓グループはこれまで多くの論文を発表し、国内だけでなく海外からも評価される貴重な業績を残してきた伝統あるグループだ。現在取り組んでいる非アル消化器内視鏡科の中村真一教授。年間15,000件にものぼる内視鏡検査。Sincere|No.6-2016 07