ブックタイトルシンシア No.6
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シンシア No.6
優美な意匠のタイルでデザインされたエントランス。300人以上の座席を有した臨床講堂。エレベーターホールから放射状に廊下が続く。外科の臨床講義風景(1 9 3 7年)。◆機能的で合理的な十字放射型プラン増田は、耐震性に優れた鉄筋コンクリート構造を基本に、機能的で合理的な設計を得意とした建築家だった。一号館では日本で初めての「十字放射型病院建築」プランを提案。十字放射型プランは、1壁面が多いため多くの窓が設置でき採光や風通しがよい、2エレベーターを用いた効率のよい動線計画が可能、3交差部から各病室への目配りがしやすい、4増築がしやすい、などのメリットがある。この日本初の病院建築プランについて、創立者の吉岡彌生は伝記の中で「学校の附属病院は、暗い冷たい部屋が一つもないように、理想的な病院をつくりたいと思いまして、十字形放射状という面白い設計を選んでみました」と述べている。増田は優れたデザイナーでもあった。一号館の外壁は、細かい溝が印象的なスクラッチタイルを基本とした全面タイル張りである。大正・昭和のモダン建築を象徴するこの手法は、その後の世界恐慌や戦時体制などで採用が難しくなり、古き良き時代をしのばせるノスタルジックなデザインとして近年に至るまで評判を呼んだ。正面玄関の庇の中央部には、校章をモチーフとしたテラコッタ(素焼きタイル)製のレリーフを配置。その周りや入口周辺には、波や丸い突起などの意匠を凝らしたタイルが用いられ、落ち着いた中にも軽やかさを感じさせる工夫がなされていた。一号館・二号館・臨床講堂は、85年の歴史に幕を下ろした。しかし、ここで学び、教え、医療に専念した人々の熱い思いは、跡地に建設が予定されている新校舎棟に受け継がれていくに違いない。Sincere|No.6-2016 21