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概要

sincere no05

医療研究最先端糖尿病診療をリードし続ける世界屈指の専門施設「糖尿病センター」糖尿病患者さんのトータルケアをめざして40年も前に開設された東京女子医科大学の糖尿病センター。その歴史と実績は、糖尿病研究と治療の進化そのものである。糖尿病でも健康な人と変わらぬ人生を送る定期的に東京女子医大の糖尿病センターを訪れる上澤佳乃さん(56歳)は2013年、「リリーインスリン50年賞」を受賞した。この賞は、インスリン治療を50年以上続けている糖尿病患者さんの努力を称えるもので、アメリカで創設され、日本でも2003年からスタートした顕彰制度である。これまで77人が表彰されているが、このうち女子医大糖尿病センターの患者さんが17人を数える。食品コンサルタントとして活躍している上澤さんは、「糖尿病でも健康な人と変わらぬ人生を送る」ことを、身をもって実証してきた。彼女が1型糖尿病を発症したのは3歳のときである。風邪のような症状が出て、食欲があるのにやせ細ってきたため地元の医院で診てもらったところ、診断はただの風邪。症状がさらに悪化したため他の医院を訪ねたが、結果は同じだった。当時、糖尿病は“大人の贅沢病”とされ、幼児にそれを疑う医師はほとんどいなかったのだ。母親が知り合いのツテをたどって彼女を女子医大病院へ連れて来たところ、糖尿病と診断されて直ちに入院。インスリンの投与が始まると、数日して体調はみるみる元に戻った。「1週間遅れていたら命はなかったそうです。今の私があるのは、母と女子医大病院の先生たちのおかげです」と上澤さんは振り返る。「糖尿病だからできないということは何もなかった」と語る上澤さんだが、小学生のときにインスリンの自己注射ができず、林間学校へ行けなかったことがある。悔しさから、主治医に自分で注射ができるよう指導してもらった。以来、自分で血糖コントロールができるようになり、高校時代にはバドミントン部での激しい運動にも耐えることができたという。「私は糖尿病であることをオープンにしてきました。ですから、低血糖に陥ったときも周りの人たちがすぐにサポートしてくれます。糖尿病も私の一部ですから、逆らわずにうまく付き合っていこうという考えでこれまで生きてきました」上澤さんはこれまで合併症とは無縁だという。何事にも積極的に立ち向かう生き方が、合併症を寄せつけない強さとなっているに違いない。糖尿病センターの1日は午前8時半からの朝のカンファレンスで始まる。40人近い医局員が集まり、前日の入退院患者さんや特記事項などを紹介し合って情報を共有。その後、医局員による論文紹介(モーニングレクチャー)が行われる。センター開設以来、このルーチンは変わることがない。※モーニングレクチャーは毎日ホームページに掲載されるのでぜひご参照を。06 Sincere|No.5-2016