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概要

sincere no05

もあったからです。母は半年後に亡くなりましたので、文字どおり“最後の親孝行”でした。母が亡くなる1か月前に、父も世を去っていました。そんなことから、しばらく実家に戻り、家の整理などに忙殺されました。一段落ついて、さてこれからどうしようと考えたとき、学生時代に遠藤周作先生からいわれた「トキちゃん、肛門科がいいよ」という言葉がふと甦ってきたのです。それは、遠藤先生が痔疾治療のために訪れた肛門科の待合室で、恥ずかしそうに下を向いて座っている若い女性を目にし、女性の肛門科医が必要だと感じたことから発せられたものでした。でも、そのときはからかい半分でいっているのだと思い、聞き流していました。実際、外科医をめざしていた私には肛門科について考える余地はまったくありませんでした。しかし、肛門科も外科の領域であり、女子医大病院では「女性の先生に診てもらいたいのですが……」という女性患者さんからの声が多かったのを思い出しました。肛門科医になれば女性患者さんのニーズにお応えすることができる。そう考えた私は、社会保険中央総合病院の大腸肛門病センターに移る決心をしました。漢方治療も遠藤周作氏の助言から母にすすめられ、遠藤周作先生が主き宰する素人劇団「樹座」の劇団員募集に嫌々応募したのが、先生とのご縁のきっかけでした。オーディション当日、私は熱を出して欠席。正直、ほっとしました。そうしたら後日、遠藤先生から直接、「稽古が始まるから来てみないか」と電話がかかってきたのです。先生は肺結核などいろいろな病気を経験されていました。それで、医学生だった私に興味を持たれたのだと思います。結局、私は稽古を見学するだけでしたが、それから先生との交流が始まり、「専門バカになってはいけない」、「人のざ山口トキコさんの近著。気持ちを分かるようになれ」、「医療の幅は何のクリニックか分かりづらく、認知しは広い。西洋医学だけでなく東洋医学もていただくまでは苦労しました。ある」といったアドバイスもいただきました。当クリニックは、女性の患者さんをメイ私が日本東方医学会に所属して漢方治ンにし、“日帰り手術”を推進していること療も行っているのは、その影響からです。が大きな特徴です。患者さんの男女比肛門科医をめざして社会保険中央総率は8対2くらいで女性のほうが多く、女合病院・大腸肛門病センターに入ったも性患者さんの来院動機も「女性の先生のの、女性医師は皆無で私がその第一だから」という声が圧倒的です。男性患号。学会へ出ても女性は私だけで、びっ者さんの場合は、「日帰りで手術が受けらくりしたのはいうまでもありません。れるから」というケースが多いですね。仕事で忙しい男性にとって、当院の強みで男性患者さんにも好評の日帰り手術ある“日帰り手術”は大きな魅力となってこうして約6年間、肛門科医としてのトいるようです。レーニングを積み、2000年2月、東京・昨年11月、私が代表世話人となって赤坂見附にマリーゴールドクリニックを開第1回目の「女性医師肛門疾患勉強会」業しました。そのとき、遠藤先生はすでを開催しました。略して「JKB」。メンバーに他界されていました。数を勘案して「JKB48」にしようという意医院名のマリーゴールドは、郷里の山見もありましたが、「平均年齢みたいだか形でよく見かけたきれいなキク科の花のらやめよう」(笑)と。こと。肛門のイメージにも近いことから、女性の肛門科医も大分ふえてきましたこれをネーミングとしました。「肛門科」のから、こうした勉強会を通じてお互いに文字を避けて患者さんが来院しやすい知識を共有し合い、診療の連携を図っようにするとの意図もありましたが、当初ていきたいと思っています。山口トキコ(やまぐちときこ)1961年山形県生まれ。88年東京女子医科大学卒業、92年東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学第二外科学教室で研修後、社会保険中央総合病院(現・東京山手メディカルセンター)、同大腸肛門病センター勤務を経て、2000年2月マリーゴールドクリニックを開業。日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員。テレビやラジオ、雑誌などでも活躍。『女医が教えるおしりの本』『スッキリ!美便生活』『便秘をみるみる解消する!200%の基本ワザ』『最新版本気で治したい人の腸の不調』など著書多数。Sincere|No.5-2016 05