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概要

sincere no04

医療研究最先端先端生命医科学研究所(TWIns)の遺伝カウンセリング室における最新の細胞測定装置を駆使した研究風景。つきました。筋ジストロフィーと分かり、以来10年近く通院しています。齋藤先生や臨床心理士の方に会い、不安や疑問に丁寧にお答えいただくと、将来への明るい希望が見えてきます」と、医療チームに絶大の信頼を寄せている。筋ジストロフィーの息子さんとともに茨城県から通院しているCさんご夫妻は、「息子が小学3年生のときに歩けなくなり、私たちはパニックに陥りました。そのとき齋藤先生から遺伝子について分かりやすく教えていただき、冷静な気持ちを取り戻すことができました。息子の成長過程をずっと見守ってくださっているカウンセラーの方もいて、声をかけていただくだけで心が安らぎます。中学生になった息子の病状も安定しており、3か月に一度の通院を“お出かけ気分”で楽しんでいます」と、明るく語る。32歳になるSさん(男性)は皮膚に腫瘍ができる神経線維腫症で、幼少の頃から女子医大に通院し、齋藤教授の遺伝カウンセリングを受けてきた。「この病気は現在のところ治療法がないとされていますが、齋藤先生は常に最先端の治療情報をチェックし、どこまで進んでいるかを教えてくださいます。私が前向きでいられるのは、齋藤先生が心の支えになっているからです」と、病気と闘う強い意志を示してくれた。最先端の遺伝子医療研究で難病治療にチャレンジ齋藤教授は難病の一つである脊髄性筋萎縮症の研究をライフワークとしている。脊髄性筋萎縮症の診断は遺伝子検査で下せるが、治療法はいまだに確立されていない。遺伝子医療センターでは、遺伝子配列に作用する薬剤の中から脊髄性筋萎縮症の治療に役立つ薬剤を見つけ出し、治療につなげる研究に力を入れている。すでに、病気の原因物質である特定たんぱく質を、患者さんから採取した血液で測定する新技術(特許出願中)の開発にも成功している。女子医大は文科省の「難病克服!次世代スーパードクターの育成」プログラムに、信州大、札幌医大、千葉大、京都大、鳥取大とともに参加。次世代シーケンサー(DNAの塩基配列解析装置)を用いた遺伝子解析で、難病の診断を迅速かつ正確に下す研究にも取り組んでいる。「科学技術の急速な進歩により、高度な遺伝子研究の成果が医療現場で使えるようになり、難病が治る時代の到来が夢ではなくなろうとしています。私たちの目標は、最先端の医療を診療に応用し、遺伝性疾患の治療と予防、患者さんのQOL向上に貢献すること。そして、病気の治療と心のケアを両輪とした遺伝カウンセリングで、社会の期待に応えていくことです」と、齋藤教授は遺伝カウンセリングの普及と難病治療に静かな闘志を燃やしている。脊髄性筋萎縮症に対する薬物治療効果を解析する方法を開発遺伝子医療センター助教臨床遺伝専門医小児科専門医荒川玲子私は「小児期発症脊髄性筋萎縮症に対するバルプロ酸ナトリウム多施設共同医師主導治験」において、薬剤の効果を解析するサンプルセンターを担当しました。私が着目したのは、血液中のSMNタンパク質を治療効果の指標として解析する方法です。脊髄性筋萎縮症(SMA)はSMN遺伝子の変異によって生じる疾患で、SMNタンパク質の量的変化を計測することにより、薬剤の効果を判定することが目的です。私が取り組んだのは、血球1個1個におけるSMNタンパク質を解析する技術の開発です。治験の評価において、血中のSMNタンパク質を解析する最適な方法は、世界中でまだ確立していません。この問題をクリアするためには、新しい技術を開発するしかありません。トライするからには、まだ治療法のないSMAに対する治療法開発に広く応用できる技術を確立しようと、懸命に取り組んでいます。これらの技術開発が、遺伝性疾患に対する治療法確立に貢献できるよう、さらに研究を進めていきたいと思っています。Sincere|No.4-2015 09