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概要

シンシア 2014.No.3

医療研究最先端「IORRAのデータは女子医大のみならず、日本の関節リウマチ医療の貴重な財産」と語るユーシービージャパンの金澤辰男氏。膠原病リウマチ痛風センターには1日450人もの患者さんが訪れる。特定の患者さんを対象とした数値ですが、市場投入後はさまざまな合併症を持った患者さんにも投与されます。そのときに、どのような症状の患者さんにどのような副作用がどの程度起きる可能性があるのか。それをIORRAのデータから推測することができます。開発中の薬剤の将来予測ができるというのは、とてもありがたいことです」さらに言葉を続けて、「IORRAは女子医大の貴重な財産であると同時に、そのデータを引用した学術論文は日本の関節リウマチ医療にとっての大きな資産でもあります。私たちは公表されたIORRAの論文をエビデンス(科学的根拠)として活用させていただき、日本の医療レベルの向上に寄与したいと考えています」という。“IBM”をキーワードにさらなる医療の進化をめざす女子医大リウマチセンターのIORRAほど完璧な関節リウマチの長期観察研究は、世界を見渡しても例がない。世界的な評価が高まる中で、山中教授は今後のIORRAの目標を“IBM”というキーワードに託している。「臨床医療ではEBM(EvidenceBased Medicine:科学的根拠に基づく治療)が常識となっています。エビデンスとされる治療法は海外論文によるものが圧倒的に多く、それらは日本とは人種や体格、生活習慣、医療環境などが異なる外国人を対象とした研究結果です。私たちは、実際に自分たちで診療した患者さんのデータに基づく医療を行いたい。IORRAで得られた患者さんのデータを分析して臨床医療を最適化する。エビデンスのEをIORRAのIに置きかえ、EBMをIBMへと進化させる。それがこれからの目標です」IBMをキーワードに、山中教授はさらなる医療の発展に意欲を燃やしている。薬剤の費用対効果研究で医療制度改革の一助に膠原病リウマチ痛風センター講師田中栄一画期的な治療薬の普及で、関節リウマチの治療は長足の進歩を遂げましたが、患者さんの医療費負担と国民医療費が急増し、新たな社会問題となっています。IORRAのデータによると、関節リウマチ患者さんの年間1人当たりの外来医療費は2000年に28万8,000円でしたが、2007年には36万7,000円と7年間で8万円近く増えました。特に、生物学的製剤が使用可能になった2003年以降の増加が目立ちます。その頃から経済的な理由で適切な治療が受けられない患者さんが増え、臨床医として心を痛めています。生物学的製剤は高価ですが、費用対効果で考えてみる必要があります。私は薬剤のコストパフォーマンスという観点から、IORRAのデータを用いて医療経済学的研究を続けています。例えば、経済的な理由で高価な生物学的製剤が使えず、患者さんの病状が悪化して寝たきりになったとしたら、国は介護保険や身体障害者給付など多額の費用負担を強いられます。それよりも、薬価を下げて高価な薬剤が使える環境をつくり出し、患者さんを寛解に導くことができれば、状況はがらりと変わります。就労が可能になれば、国は介護保険などの費用負担から解放され、逆に所得税などの徴収も可能になります。それは、患者さんにとっても国にとってもハッピーなことです。IORRAのデータを用いた医療経済学的研究が、医療制度改革の一助となることを願っています。Sincere|No.3-2015 09