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概要

シンシア 2014.No.3

世界的な研究者会議で女子医大の先進性を実感膠原病リウマチ痛風センター准教授猪狩勝則関節リウマチに関する遺伝子研れました。究は、IORRA発足以来の大きなこの国内共同研究は、世界各国テーマです。近年のトピックといえ約20施設との海外共同研究に発展。ば、2009年に当センター主導で多人種・10万人規模の遺伝子解析東京女子医大、理化学研究所、東を行い、42の新領域を含む101京大学、京都大学の4施設が、リの疾患感受性遺伝子領域を突き止め、ウマチ性疾患の遺伝子解析で共同さらに創薬にまでつなげました。そ研究組織を立ち上げたことです。の論文は2014年の『Nature』誌その成果は、関節リウマチに関連に掲載され、大きな反響を呼びましする9つの新規疾患感受性遺伝子た。同年秋、各国の共同研究者65の同定や、日本人と欧州系人種の人がアメリカに参集。私も参加して間に遺伝子レベルでの大きな差異今後の課題などを話し合いました。は認められないなどの論文に結実し、討議に参加して、あらためてこの分『Nature Genetics』誌に掲載さ野における日本の、女子医大の先進性を実感しました。一方、IORRA独自のゲノム研究では、骨折に関連する遺伝子の解析で大きな成果を収めています。IORRAの遺伝子データと骨折頻度データをリンクさせ、患者さんの血清ビタミンD値との関連を解析した結果、血清ビタミンD値低値と関連する遺伝子多型を持つと骨折頻度が高くなることが判明しました。今後は、疾患感受性遺伝子に加え薬剤反応性遺伝子や疾患重症化遺伝子、合併症関連遺伝子などの解析に力を注ぎ、オーダーメイド医療に道を開き、治療期間の短縮と治療コストの軽減に役立てたいと考えています。観的に判断できます。また、配付される『IORRAニュース』からは関節リウマチの最新情報、例えば薬剤の知識などが得られ、自分の受けている治療への理解が深まります。いまはネット社会で情報があふれていますが、どの情報を信じてよいか分かりません。その点、IORRAの情報は自分も参加しているので信頼でき、受けている治療に納得がいきます。調査用紙も記入しやすいように考えられていて、15~20分かかってもそれほど苦にはなりません」回収率98%の秘訣は、患者さんへのきめ細かな心遣いにあるようだ。IORRA研究の成果が数多くの学術論文に結実次に医師たちのメリットだが、そこには山中教授の熱い思いが込められていた。「私たちの医局には、関節リウマチに罹患している医師も在籍しています。指の関節が変形すると実験器具の取り扱いが難しくなりますから、そうした医師には、関節リウマチの観察データを蓄積していくことによって新しい切り口の学術論文を書ける環境を提供したいと考えたのです。もちろん、IORRA研究にかかわる医師たちにはデータを自由に活用できる権利を与える。その結果、IORRA研究をベースとした英文論文は94編(2014年10月1日現在)、学会発表は優に300件以上を数えるまでになりました」加えて、各医師がどの薬剤をどれだけ処方し、それによって患者さんの症状がどれだけ改善したかといった実績が医関節リウマチ患者さんに配付されるIORRAの調査用紙と、その結果を踏まえた情報を記載して発信される『IORRAニュース』。いずれも年2回実施・発刊される。師にフィードバックされる。「外来ブースで各医師は英知を傾けて診断や処方にあたっています。自分の診断は正しいと信じつつも、絶えず自問自答を繰り返す孤独な仕事です。医師用に開示されたIORRAデータで他の医師の診療と比較することにより、自分の診療レベルが客観的に把握でき、成績の良い医師のノウハウを学ぶこともできます」と山中教授。なるほど、IORRAは医師にとってのメリットがそのまま診療レベルの向上につながるよう設計されていたのだ。製薬企業を対象に年2回「IORRA報告会」を開催IORRA研究を陰で支えている製薬企業向けには年2回、報告会を開いて解析結果を提供しているが、彼らは具体的にどのようなメリットを享受しているのだろうか。IORRAの発足当初から今日までを知るユーシービージャパンの免疫炎症メディカルチームヘッド、金澤辰男氏にうかがった。「IORRA報告会は、関節リウマチ医療のトレンドを知るいい機会となっています。特に副作用情報は患者さんの実態が記録されており、我々にとっても貴重なデータです。新薬の治験で得られるデータは08 Sincere|No.3-2015