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概要

シンシア 2014.No.3

医療研究最先端回収率98%超の長期患者調査で日本の関節リウマチ治療を牽引10年前の状況を考えると、まさに奇跡といってよい。東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターに通う関節リウマチ患者さんの寛解率が、50%を超えたのだ。寛解とは、完治ではないが症状がほぼ完全に抑えられ、病気が進行しない状態に達したことをいう。2000年にはわずか8%だった寛解率が、2012年に50%超へ。女子医大のリウマチセンターは、日本の関節リウマチ治療の最先端をひた走る。患者さんの50%超が病状が進行しない状態に関節リウマチは自己免疫疾患の一つで、自分の体を攻撃する自己抗体が原因で発症する。自己抗体が関節を攻撃し、滑膜に炎症や腫脹(はれ)を引き起こす。放置すると2年ほどで関節の破壊や変形に至りかねない。また、合併症(肺や腎臓などの臓器疾患)の発症リスクも高くなる。国内の患者数は70~80万人といわれるが、今日に至るまで根治的な治療法は確立されていない。それ故に、「最も身近な難病」といわれている。だが、この十数年で治療法が大きく進化した。画期的な治療薬が相次いで登場し、患者さんの希望の灯であった“寛解”が夢から現実になりつつある。女子医大附属膠原病リウマチ痛風センターは、1日の患者数が約450人、月間1万1,000人が通院する日本最大、世界でも最大級のリウマチ性疾患専門施設である。1982年の開設以来、常に最新の医療を提供し、日本のリウマチ研究・治療をリードしてきた。現在の所長は5代目の山中寿教授。山中教授は2012年に、日本リウマチ学会・学会賞を受賞した。同センターが関節リウマチ患者さんを対象に2000年から取り組んできた長期観察研究「IORRA(イオラ)」の実績が評価されたことによる。寛解率50%突破は、IORRA研究の成果にほかならない。新しい治療法に道を開いた長期観察研究「IORRA」IORRA(Institute of Rheumatology,Rheumatoid Arthritis)は、膠原病リウマチ痛風センターに通院する約6,000人の関節リウマチ患者さんを対象に、年2回実施する大規模調査である。30ペー■進化する関節リウマチ治療100%90%重症80%70%60%中等症50%40%30%21%10%軽症寛解0%2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012「寛解」のスタンプが印刷されたレポートを手にする関節リウマチの患者さん。寛解とは症状がほぼ完全にコントロールされている状態のこと。06 Sincere|No.3-2015