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概要

シンシア 2014.No.3

医療現場最前線レポート看護師の佐藤由紀子さんは、「患者さんからの相談は多岐にわたりますが、丁寧な情報提供に努めています。また、患者さんのご家族からもケアに関する相談を受けることが少なくありません」という。大堀副室長は、「相談室を患者さん同士が自由に交流できる“開かれたがん情報サロン”にしていきたいですね」と抱負を語ってくれた。■厳重な抗がん剤投与審査と膨大な登録データレジメン審査室は、抗がん剤投与の適正化を図る役割を担っている。レジメンとは抗がん剤の投与計画書のことである。審査室の構成メンバーは医師7人、薬剤師4人、看護師3人の計14人。看護師がメンバーに加わっているケースは、他の病院ではあまり見られない。「各診療科から申請されたレジメンをここで審査し、問題がなければ電子カルテへ登録してチェックを行い、さらに病棟の担当薬剤師もそれをチェックするという二重チェックを経て、申請した医師が最終確認をします。審査の結果、不適切なレジメンは却下し、不備のあるレジメンも修正されない限り承認しません。厳重な安全確認のプロセスを踏んだレジメンが患者さんに提供されるわけです」と、深谷寛副室長は安全性の確保を強調する。がん登録室では、女子医大病院のがん患者さん1人ひとりのさまざまなデータを集め、それを積み上げていくという地道な作業を行っている。前林勝也室長は、「精度の高いデータを集めることにより、がんの予防や早期発見の方法、新しい治療法の効果や安全性の確認などを評価することができます。そうして登録したデータをオープンにすることにより、患者さんが病院を選ぶ際の参考にしていただけるわけです」と、がん登録の意義と目的について説明する。ここ数年のがん登録数(患者数)は年間4,000人前後で推移しているが、疾患別に見ると脳・中枢神経系のがん登録が突出して多く、これだけで総登録数の約15%を占めている。女子医大病院が脳・中枢神経系のがん診療で高い評価を得ていることを物語っているといえよう。活発に意見が交わされるキャンサーボード(症例検討会)。■院外にも門戸を開いて各種研修会を開催とっぷり日が暮れた某日の夕刻、中央病棟3階の会議室に三々五々、医師や看護師、薬剤師、診療放射線技師などが集まってきた。そして定刻の6時半からキャンサーボード(症例検討会)が始まった。この日の参加者は19人。原発不明がんを検討症例に、活発な意見が交わされた。このキャンサーボードを主催しているのが、がん研修室である。「キャンサーボードは医師が主導して行うのが一般的ですが、ここでは看護師や薬剤師が症例を持ち寄って検討会をリードするケースも少なくありません。それが大きな特徴であり、誇れる点でもあります」と板橋道朗室長はいう。キャンサーボードは月2回行われ、がんセンターの他のユニットメンバーなど毎回20人前後が参加する。がん研修室ではこのほか、がん教育講座、がん医療薬学研究会なども開催している。がん教育講座は医療関係者であれば院外の人も参加できるもので、毎月1回行われ、参加者はコンスタントに50~60人を数える。がん医療薬学研究会は薬剤師を対象に行っているもので、院内研究会ではあるが院外の薬剤師の参加も多いという。女子医大病院のがんセンターは、こうした6つのユニットが有機的に連携しながら極めて強固な横断的組織を形成し、先進のがん医療を推進しているのである。良質ながん医療を積極的に地域へ還元しますがんセンターセンター長林和彦女子医大病院は地域がん診療連携拠2年前から他の拠点病院や開業医、訪点病院に指定されており、新宿・中野・問看護ステーションなどと協力して「オ杉並3区内の病院やクリニックとがん診レンジバルーンフェスタ」というがん緩療の連携協力体制を整備するとともに、和ケア啓発のためのイベントを新宿駅がんに関するさまざまな情報を提供して西口広場で開催しています。いかなければなりません。がんセンター女子医大は帝京大学、杏林大学、駒のがん患者相談室やがん研修室などが、澤大学と連携し、文部科学省の「がんプ地域の開業医や薬剤師とともに研修をロフェッショナル養成基盤推進事業」(通行ったり情報交換の場を設けたりして、称:がんプロ)の一環として、地域でがそうした役割を果たしています。また、ん医療のコーディネーターとなれるような医療者を養成しています。加えて、がん医療に携わるすべての医療者を対象に、地域がん包括ケアを担う専門職の育成をめざす新たな研修コースも設置しました。さらに、昨年12月には新宿区内の小学校において、子供たちにがんについての知識を学んでもらうという試みもスタートさせています。家族の中にがん患者さんが出ても動じないよう、小さい頃からがん教育をしていくことも我々の使命だと思います。我々大学病院が培ってきた良質ながん医療を、こちらから積極的に地域へ還元していく。これからはそういう時代だといえるでしょう。16 Sincere|No.3-2015