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概要

シンシア 2014.No.3

した。当初は総合外来センター内で25床からのスタートだったが、3年前に第1病棟へ移転し現在の46床に増床された。集約化メリットについて竹下信啓室長は、「効率化が進んだのはもちろん、化学療法に精通した専門の看護師や薬剤師が対応していますから、患者さんの安心感も高まっていると思います。また、化学療法を受ける患者さんばかりですので、お互いの気持ちも通じ合っているようです」と語る。外来化学療法室の一角には抗がん剤を調剤するミキシングルームがあるが、ここにはアイソレーターという最新鋭の装置が2台導入されている。アイソレーターは密閉された空間で調剤することができるため、無菌性レベルの向上とともに抗がん剤による薬剤師の被ばくリスクを最小限に抑える効果ももたらしている。すべての抗がん剤がこのアイソレーターで調剤されているが、こうした病院は全国的にも数えるほどしかない。がん緩和ケアチームによる回診風景。■6つのユニットで構成されたがんセンター女子医大病院のがんセンターはこの外来化学療法室をはじめ、がん緩和ケア室、がん患者相談室(がん患者相談支援センター)、レジメン審査室、がん登録室、がん研修室の6つのユニットで構成されている。がんは、その進行状況や患者さんの状態によって治療法が異なるほか、がん患者さんとその家族は精神面や生活面でもさまざまな負担を強いられる。このため、医師や看護師だけでなく、薬剤師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、栄養士などさまざまな専門職によるきめ細かな医療が要求される。個別の診療科単位では対応しきれない時代なのだ。がんセンターは、こうしたニーズを先取りした“チーム医療”推進のための横断的な組織として2007(平成19)年10月に発足。翌年にはその取り組みが評価され、新宿・中野・杉並3区の医療圏における地域がん診療連携拠点病院に指定された。また、がんセンターの組織は他の病院でのセンター設置のモデルともなっている。ところで、がん治療には化学療法のほか手術と放射線療法があるが、女子医大病院では手術において支援ロボット・ダビンチやMRIを導入したインテリジェント手術室、放射線療法ではガンマナイフやIMRT(強度変調放射線治療)など、最先端の機器・装置を備えており、トータルでがん治療にあたっている。また、PET(陽電子断層撮影法)とCT(コンピュータ断層撮影法)を組み合わせたPET/CT装置による高度な診断にも定評があり、より強固ながん診療体制を整備していることはいうまでもない。■“チーム医療”を象徴する緩和ケア室と相談室では、外来化学療法室以外の5つのユニットはそれぞれどのような役割と機能を発揮しているのだろうか。がん患者相談室のスタッフ(ソーシャルワーカーと看護師)。がん緩和ケア室は、医師、看護師、薬剤師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどがチームを結成し、入院患者さんの身体的苦痛をはじめさまざまな症状を和らげるための支援を行っている。兼村俊範室長は、「緩和ケアというと看取りのことだと思われがちですが、がんと診断されたときから緩和ケアはスタートさせるべきです。身体的苦痛だけでなく、精神的苦痛や仕事上・生活上の問題など社会的苦痛も伴うため、それらを含めて緩和ケアを考えなければなりません」と、緩和ケアに対する理解を促す。看護師の三村直美さんは、「そのために、専門的な緩和ケアが必要かどうかを判断するための知識を病棟の看護師に伝えていくことも、私たちの役割です」という。がん患者相談室のスタッフはソーシャルワーカー、看護師、薬剤師、栄養士で構成され、総合外来センター1階の医療サービス相談室でがんに関するさまざまな相談に応じている。「患者さんは医師の前では不安や悩みなどの本音を話しづらいもの。私たちはそうした声に耳を傾けるサポート役です」と大堀洋子副室長。ソーシャルワーカーの村本ゆう子さんと中村明子さんは、それぞれ次のように話す。「私たちは医療費などの経済的な問題や就労に関する問題など、患者さんの生活面全般にわたる相談に対応しています」、「子どもの患者さんについては、特に退院後の教育支援に力を入れています」。Sincere|No.3-2015 15