ブックタイトルシンシア 2014.No.2
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シンシア 2014.No.2
執刀医の手術器具の位置を捕捉し、術中MRIで撮影した最新画像と組み合わせてさらに高精度な手術を可能とするナビゲーションシステム。手術の進行状況や患者さんの画像データなどがリアルタイムに表示される「戦略デスク」。ここから手術現場のスタッフに指示を与えることもできる。撮影から始まる。MRIで脳の三次元断面画像を撮影するのは、脳の位置や形に個人差があるからだ。手術計画は、この術前MRI画像をもとに立てられる。だが、脳は開頭すると“ブレインシフト”という沈み込み現象を起こし、位置や形がずれる。病変と正常組織の境目にメスを入れる摘出手術では、このズレが阻害要因となる。手術室の中で開頭後もMRI撮影を行うことができれば、腫瘍の正確な位置が分かり、摘出率も上がるはずである。だが、MRIは磁気を用いる装置であり、メスなど金属製の手術器具を使う手術室には持ち込めないと考えられていた。伊関前教授らは、この問題にメスを入れた。東京大学工学部や、日立メディコ、ミズホ(旧・瑞穂医科工業)、三鷹光器など国内医療機器メーカーの協力を得て、磁場の強さが中程度の「術中MRI装置」を擁する手術室を開発したのである。磁場の強さはテスラという単位で表される。診断用のMRIは1~3テスラで、画質は良いが高い磁場の領域が広い。しかし、術中MRIは0.3テスラと高い磁場の領域が狭いため、手術室内で通常の手術器具を使うことができるのだ。現在、脳腫瘍の摘出手術では平均3回、術中MRI撮影が行われる。最初は開頭した直後、ブレインシフトした状態の脳を撮影し、その画像をもとに摘出が開始される。また、手術終盤には病変の取り残しや出血の有無を確認するMRI撮影が行われる。さらに正確な摘出に貢献しているのが、「手術ナビゲーションシステム」である。このシステムは、赤外線カメラでメスなどの手術器具を検出し、その位置を術中MRI画像上に表示。病変の位置を正確に示すとともに、執刀医のメスを残っている病変へと誘導する。位置情報は約1mmの精度を確保しており、それが病変の正確な摘出へとつながっている。こうした術中MRIとナビゲーションシステムは、“外科医の新しい目”の役割を果たしている。局所麻酔で患者さんと対話しながら手術を行う現在、女子医大病院で行われる脳腫瘍摘出手術は、その約4分の1が「覚醒下手術」である。局所麻酔で意識を保ったまま行う覚醒下手術は、患者さんの状態をリアルタイムに確認できるというメリットがある。この覚醒下手術で大きな役割を担っているのが、「IEMAS(術中情報統合表示システム)」と呼ばれるモニター装置である。IEMASのモニターには、患者さんの表情や言語機能テスト用のイラスト、覚醒度を示す脳波数値、術中MRI画像と執刀中のメスの位置、手術中の部位を拡大した顕微鏡画像が映し出される。例えば、異常陰影を示す部位が言語領域なのか否かを調べる場合、該当部位に電気刺激を与えながら、患者さんにイラストを見せて答えを促す。このとき患者さんの言葉が止まると、言語の働きを行っている脳の部位(言語野)と判断される。言語野を傷つけると言語障害となるため、傷つけてはいけない場所を科学的に特定できるのである。また、手術中も話ができるか否かを常に確認できるため、思いもかけない術後の言語障害が起こることが極めて少ない。患者さんの状態をモニタリング08 Sincere|No.2-2014