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概要

シンシア 2014.No.2

至誠人準備することの大切さを登山と研究を通して学びました長年、東京女子医科大学の神経内科で研究と臨床に携わり、昨年からクリニックを開業した橋本しをりさん。国際認定山岳医の資格を持つ登山家としても知られ、登山を通して女性がん体験者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上をめざす活動を続けている。大学時代は映画も手がける私は本が好きな文学少女でした。思春期には人生についていろいろな疑問を抱き、文学にその解答を求めましたが、解決してはくれませんでした。高校生のとき、時実利彦(大脳生理学者、1909~1973年)先生の『脳の話』という本に出会い、脳の勉強をすれば人間の本能や心の動きなどが分かるのではないかと考え、迷わず女子医大を受験しました。入学して最も印象的だったのが、物理の先生のひと言です。「これからは“な橋本しをり(医師・登山家)ぜ”と人に聞いてはいけません」と。世の中には分からないことがたくさんありますが、その答えは人に聞くのではなく自分で見つけ出さなければいけない。そういうことが身につくようになりました。大学ではワンゲル部に入りましたが、ワンゲル部では冬山登山ができない。そこで、当時休部状態だった山岳部を復活できないかと、先輩の今井通子さんに相談したところ、いろいろと尽力してくださり、復活させることができました。山岳部で活動するかたわら、ジャズ研究会を立ち上げたり、映画をつくったりもしました。ジャズ研究会はその後、公認サークルの軽音楽部となっています。映画は自分で脚本を書き、監督をして制作しました。現在、人気ドラマ「相棒」シリーズの監督として活躍している和泉聖治さんが協力してくれ、女子医大の同級生・下級生とつくり上げましたが、上映会のときは恥ずかしくてとても見ていられませんでした。登山は自分を見つめ直すいい機会父が神奈川県秦野の結核療養所(現・国立病院機構神奈川病院)に勤務していた関係で、幼少期は豊かな自然環境の中で育ちました。中学生のときは、蝶に魅せられて生物部に入部。顧問の先生が無類の蝶好きで、道もないような野山を蝶を求めて歩き回ったものです。登山が面白いと思ったのは、中学の林間学校で北アルプスの燕岳(つばくろだけ)から槍ヶ岳まで縦走したときです。04 Sincere|No.2-2014