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概要

シンシア 2014.No.2

医療現場最前線レポート新生児科低出生体重児などの赤ちゃんをケアつとむ新生児科教授近藤乾■増加傾向にある低出生体重児新生児科の看護師が、21床あるNICUで赤ちゃんのケアにいそしんでいたある日の午前10時20分、呼吸が正常ではない新生児が救急搬送されるとの連絡が入った。30分後の10時50分、救急車が到着し、赤ちゃんを乗せたストレッチャーがNICUに運び込まれ、直ちに近藤乾教授らが治療に当たった。八千代医療センターの新生児科に救急搬送される件数は、年間約100件を数える。この日搬送された赤ちゃんは、幸い症状が比較的軽かったため、まもなく退院の運びとなった。NICUには、この赤ちゃんのように呼吸障害を持った新生児や、体重が2,500g未満の低出生体重児などを治療するために、保育器をはじめ人工呼吸器、微量輸液ポンプ、呼吸管理モニターなどの機器が備えられている。NICUは昨年4月に6床増床されて21床となり、後方病床のGCU16床と併せ、さらに充実した施設となった。千葉県における低出生体重児の出生割合は、全国平均を下回っているとはいえ9.2%を占め、その割合は増加傾向にある。NICUに入院する赤ちゃんは、その約7割が低出生体重児であり、1,000g未満の超低出生体重児も少なくない。■高度なテクニックと献身的なケア近藤教授は、「赤ちゃんが1,500g未満、1,000g未満と小さくなればなるほど、ケアには高度なテクニックが要求されます」という。例えば、体温が低ければ単純に保育器の中を温めればよいかというと、そうではない。温度を上げると皮膚が乾燥してしまうため、同時に湿度も上げなければならない。体温を維持するだけでものすごく神経を使い、微妙なコントロールをしなければならないのである。また、心電図や呼吸管理モニターの電極パッドをそのまま貼ると皮膚が剥がれてしまうため、パッドを小さくして電極が当たる部分にゼリーを塗り、置くだけにする。このように、一つ一つのケアが繊細で高度なテクニックがなければ対応できない。NICUの中には、布製のカバーで覆われた保育器が散見される。こうすることによって、赤ちゃんが胎内にいる状態に近い環境をつくり、音や光の影響を和らげているのである。また、仰向けではなく、胎内にいるときと同じような体勢で保育器に入っている赤ちゃんもいる。これも、新生児科ならではケアテクニックである。「日本の中小企業は技術力の高さに定評があります。新生児科のケアテクニックも、中小企業の技術力に通じるものがあります。しかも、日本人は献身的にケアを行います。日本の新生児の死亡率が世界で最も低いのは、こうした高度なケアテクニックと献身的なケアによるところが大きいのではないでしょうか」と、近藤教授が締めくくってくれた。新生児ユニット看護師長瀬戸智美NICUでの回診風景(モニターを確認)。NICUに入院している赤ちゃんをケア。救急搬送されてきた赤ちゃんを診察。NICUを退院した赤ちゃんをケアするGCU(回復治療室)。新生児ユニットの看護師のみなさん。観察力を重視しながら一つ一つのケアの質を高めています新生児科には、低出生体重児や何らかの疾患のある赤ちゃんが搬送されてきます。赤ちゃんは言葉を発しませんから、新生児看護ではまず観察力が求められます。赤ちゃんのサインやモニターのちょっとした数値の変化から、赤ちゃんが求めていることを判断していかなければなりません。同じ低出生体重児でも、発達段階によって看護は違ってきます。それだけに、きめ細かなケアが要求され、一つ一つのケアの質を高めていく必要があります。また、救命という視点だけでなく、家族中心のケア、発達支援にも目を向けながら日々のケアを行っています。16 Sincere|No.2-2014