
お名前 | 中村 和夫 |
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担当部署 | 中央放射線部 |
役職 | 放射線技師主任 |
「血管撮影業務に対して不安がある診療放射線技師が多かった」と中村和夫さんは話します。
「今まで血管撮影業務にあまり携わっていなかった診療放射線技師も不安なく仕事ができる環境にしたい。そのためには中央放射線部全体で取り組んでいくべきだと考えています。若手の診療放射線技師を積極的にローテーションできるような環境にするなどして、身に着けた技術を忘れず、少しでも業務への不安を少なくできればいいな 」と日々の検査を受け持つのみならず、一緒に働く仲間たちのことも考えながら、現場の第一線で活躍する中村さんに、東京女子医科大学病院の中央放射線部のことについてお聞きしました。
外からは見えない体内の病気を見る放射線技師へ
私の家系は医療関係者が多く、兄も同じ職についています。
学生時代はケガをしがちなスポーツをしていたため、頻繁に自宅近くの整形外科にお世話になっていました。診察のために自分の腕の写真を撮られる機会があり、その現場を見て「このような仕事もあるのか」と漠然と感じていました。
診療放射線技師について調べていくうちに、外からは見えない体内の病気を透かして見るという仕事に対して興味を持つようになりました。 兄とは今も仲が良くて、いろいろ話をします。ちなみに卒業した学校も同じです。
法改正による業務範囲の拡大や変化するニーズに応える
診療放射線技師に関わるニュースのなかでもっとも大きいのは、診療放射線技師法の改正です。2021年に成立したこの法律は、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を目的としています。タスク・シフト/シェア が推進されており、その中でも大きなトピックとして挙げられるのは、CT検査やMRI検査で使用する造影剤やRI(核医学)検査のために行われる“静脈路の確保”をする行為、“検査や薬剤投与が終了した後に抜針及び止血”をする行為を診療放射線技師ができるようになったことです。
私たちが新たに行えるようになった医療行為を安全かつ正確に行うために、厚生労働大臣が指定する研修を日本診療放射線技師会が実施しています。患者さんへより良い医療提供を目指して、部署全体で取り組んでいる最中です。
診療放射線技師の教育方法の整備と、指導方法を見直す
若手診療放射線技師の教育は、日々取り組むべき重要な課題だと考えています。私が担当している血管撮影部門に関しては、診療放射線技師に対して昼夜問わず高度な技術が求められています。そこで中央放射線部の全員が血管撮影業務に対応できるようになるために、月1回程度は血管撮影業務に従事できるよう可能な限り調整しています。
取得した技術を確実に身に着けることや、検査への理解度を深めることを目的としています。
また、新入職員に対してはマンツーマンで教育指導する先輩職員がつき、不安なく業務ができるような環境づくりと指導をするように努めています。
新入職員だけでなく、若手から中堅の診療放射線技師に対しても、血管撮影業務に関する講習会を実施しています。事前にスタッフに向けてアンケートを行い、今抱えている不安や疑問点を集約することで、現場からの意見やニーズに対応できるように努めています。
現場指導においてはPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善 を繰り返していくこと)を意識するようにしています。目標を定め、実践を行い、私を含めた教育担当者たちと一緒に日々振り返りをしています。
このような教育環境を整えられたのは、技師長をはじめ、新入職員を含めた中央放射線部全体の協力が大きいといえます。「こう考えているから、こうしたい」を伝えれば耳を傾けてくれますし、より良い方向へ導いてくれます。周囲の環境が良かったこともあり、苦労するということはほとんどありませんでした。
私自身、体育会系出身で上下関係に厳しい環境で育ってきたということもあり、入職当初は、先輩方に話しかけるのはなかなか難しかった記憶があります。そのため、後輩たちにはこういう思いをさせないようにすることを意識しています。
例えば、私から後輩技師に「どんなことを教えてもらいたいか」「どんなことに困っているか」と声をかけて、彼らの考えや悩みを聞くようにしています。日々試行錯誤を繰り返しながら、より良い指導方法を模索中です。

チーム医療に欠かせない、自己研鑽とコミュニケーション
私たちは医師をサポートする重要な役割も担っています。特に夜間などの業務では、私たちが培ってきた画像診断の知識や経験が活かされます。例えば、CT画像の読影を補助することで、医師の診断をサポートすることができます。
知識を深めるためには、日々の勉強が不可欠です。以前、研修医向けの読影勉強会や各科の院内カンファレンスに参加してCT画像の読影技術などを学びました。
ここで学んだ知識を後輩にも伝えていくことも私の役割のひとつだと考えています。このような勉強会やカンファレンスに参加することで、医師とも親睦を深めることができ、日常業務において円滑なコミュニケーションが取りやすくなりました。
先ほどお話ししましたが、このコミュニケーション力というのは非常に重要だと思っています。
特に、私が担当している血管撮影では、医師、看護師、臨床工学技士など、チームで協力して検査や治療を行います。チームワークが非常に重要で、円滑なコミュニケーションがスムーズな業務の実現に繋がります。
人と円滑にコミュニケーションを取るためには、“聴く力”が大切だと考えています。人それぞれいろいろな価値観や考えを持っているため、まずは相手の話を最後まで遮ることなく聴き、何を伝えたいのか理解するように心掛けています。
傾聴力と同じくらいに、相手に自分の考えを伝える力“伝達する力”も重要です。私自身、“伝達する力”が足りないと思うことがあり、日々勉強中です。
診療放射線技師の1日の流れ
出勤後、8時50分から中央放射線部全体で業務前ミーティングが行われます。ここでは、各検査室の報告や情報共有することから始まります。
終了次第、各自担当する部署に行き、業務を開始します。様々な検査・治療の進み具合を共有しながら、それに応じて昼食休憩を調整した後、17時10分に退勤時刻を迎えます。
※業務の進捗状況次第で残業もあります。
Q & A
- Q1.放射線での検査って危なくないの?(一般の方向け)
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放射線(X線)を用いた診断や治療は、診療を行う上で必要不可欠なものになっています。
検査毎の放射線量とその影響についての研究は数多くあり、通常の放射線検査において身体への影響は無視できるほど小さいものであるという報告が多くの研究機関、学会から出されています。
当病院では放射線被ばくをできるだけ少なくするように管理する専門の組織を立ち上げ、日常業務の被ばく低減に努めています。
医療における放射線診断・治療は、医師から必要性を十分に説明してもらい、納得したうえで検査を受けていただければ幸いです。
- Q2.CT検査とMRI検査と血管造影検査って何が違うの? どれを受ければいいの?
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まず、CT検査とMRI検査の大きな違いは、放射線(X線)を使用するか否かです。
CT検査は、放射線を使用して体内を画像化します。
対して、MRI検査は放射線を使わず、非常に強い磁石の力と磁場とFMラジオに使われているような電磁波を使って画像化します。
放射線を使用しないため、MRI検査の方が良いという方もいらっしゃると思いますが、MRI検査は検査時間が長い・騒音が発生することの他に閉所が苦手な方にとっては不安をかきたてるものであるというデメリットもあります。
当病院では、患者さんの不安をできる限り軽減できるようその都度対応しています。
それぞれの検査に向き・不向きがあるため、どちらが優れているということはありません。どちらの検査が最適かは、部位や症状・病状・既往などによって変わってきます。
担当する医師とご相談のうえ、検査を受けていただければと思います。
また、血管造影検査は放射線を使用しますがCT検査とは異なります。
カテーテルと呼ばれる細い管を血管に挿入し、カテーテルから造影剤を注入して目的部位の血管を描出する検査です。カテーテルを目的部位の近くまで進めることにより、詳細な血管像を得ることが可能です。
血管に異常が発見されれば、狭窄した血管を広げる拡張術、出血した血管や動脈瘤をつめる塞栓術などが行われます。
主に、太ももの付け根や腕への小さな切開で済むため、外科的手術のように皮膚を大きく切開せずに低侵襲な治療が行え、身体的な負担を軽減できることが大きなメリットです。
- Q3.検査にはどれくらい時間がかかる?
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CT検査は15分~20分程度です。
MRIは検査する部位によって異なります。心臓は約1時間、頭部は15分~30分程度です。
血管撮影検査は1時間で終わることもありますが、6時間以上の長時間を要することもあります。