チームで心不全患者さんをサポートする

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チームで心不全患者さんをサポートする
お名前 菊池 規子
担当部署 循環器内科
役職 講師

「ショック状態の超重症患者さんについて、『救命の協力をしてほしい』という要請に応えることは当然ですが、そのような状況に至るよりも前の段階で食い止められるように、円滑な連携につないでいけるように、紹介元の病院に対してフィードバックを行っています」

このように語るのは、東京女子医科大学病院 循環器内科の菊池先生です。

「フィードバックの時には、その患者さんをともに振り返り、経過をご報告するとともに、現在のこの治療におけるトレンドについての共有も行っています。その結果、『こういう患者さんはこの治療の対象になりますか?』というようなお問い合わせも増えました」

循環器内科の医師として、文字通り人の心臓に関わる診療科を選ばれた菊池先生に、この道を志した理由や現在の取り組み、循環器内科の今後について伺います。

「ダイナミックに動く心臓」に魅せられてこの道を選んだ

私は東京女子医科大学で学んでいました。5年生のとき循環器内科での臨床実習中に、庄田先生が開催されていた「心電図の勉強会」に参加したのをきっかけに興味を持つようになりました。朝7:30から若手循環器内科医師向けに開催されていた勉強会だったのですが、講義が面白くて、循環器内科での臨床実習がおわったあとも参加できるときには参加させてもらっていました。

卒業後は大学を離れて初期臨床研修医になり、「男性医師が多く働き忙しいとされる循環器内科なので、女性がこの道に進むのは大変だよ」と言われることもありましたが、心臓外科の手術のときにダイナミックに動く心臓を実際に見て感動したこと、治療によって患者さんもダイナミックに良くなっていくこと、具合が悪く倒れている人に自信をもって手をさしのべられる医師になりたいと思い、循環器内科を選びました。

人工心臓や心臓移植、iPSが切り開く未来に注目している

通常の治療だけでは管理できない重症心不全の患者さんの治療を専門にしていますが、近年、人工心臓治療や心臓移植をうける患者さんも増えてきています。これらの治療ができる施設はまだ限られているので、東京女子医科大学病院だからこそできる治療をしっかり提供していきたいと考えています。また、再生治療(iPS細胞など)の研究も盛んに行われており、新しい技術に注目しながらこれらの研究が進んでいくことにも期待しています。

新しい取り組みがつなぐ命 ~救命はもちろん、紹介元へのフィードバックで「もっと早い段階」での相談も増やす

2018年、「BIND Team(バインドチーム)」が当院に発足しました。このチームには、重症心不全の患者さんの診療にかかわる循環器内科医・心臓血管外科医が所属し、そのほか看護師や臨床工学技士など多くのメディカルスタッフもかかわっています。重症心不全の患者さんを中心に病院と病院が「つながり」、院内における多職種も「つながっていく」ことで、患者さんに適切な医療・ケアを提供するためのチームです。そんな想いがチームの名前に込められています。人工心臓や心臓移植を含む心不全治療を提供しています。

バインドチームとして、超重症のショック状態の患者さんの救命協力は当然のことではありますが、それよりも早い段階での相談を受けることも大切だと考えています。適切な時期に必要な治療を提供していくことで、超重症な状態に至る前に必要な患者さんには人工心臓や心臓移植という治療の可能性を提示します。
そして、これまで紹介いただいた病院とのフィードバックの会(バインドカンファレンス)を積極的に行ってきました。患者さんの経過を振り返り、報告するとともに、重症心不全診療におけるトレンドの共有や、どのような患者さんがこれらの治療の適応になるのかなどの情報を共有するようにしています。

このような取り組みによりバインドチームへの紹介数は、発足当初の2018年と比較し、2022年には4.5倍にもなりました。他院からの受け入れ患者数が増えることで、ほかの病院からの信頼もまたアップし、「それならばまた女子医大にお願いしよう」とより高い信頼を得られるというプラスのスパイラルになっていると思います。
忙しい日々ですが、期待に応えていけるようにチームで頑張っています。

チームで心不全患者さんをサポートする

それぞれの得意分野を活かした治療を行っていけるのがチーム医療の魅力

現在東京都では「心不全サポート事業」を行っています。
2023年夏から始まったもので、急増している心不全患者さんを地域と連携して診ていく、支えていく体制を作っていくためのものです。区部における「心不全サポート病院」としての役割を東京女子医科大学病院が担わせていただくことになりました。バインドチームから派生した「BIND Region Team(バインドリージョンチーム」がこの事業を推進しています。これらの新しい取り組みを進めることによって、私たちのチーム力は格段に向上しました。

バインドチーム・バインドリージョンチームは、文字通り、「チーム」で治療に当たります。この時に重要なのは、「お互いをリスペクトし、それぞれの得意分野を活かして治療にあたる」ということです。たとえば医師は病気の治療を主に担当しますが、理学療法士はリハビリを担当しながら自宅での環境調整や転倒防止の工夫、日常生活の動きなど、再入院を防ぐための方法をアドバイスしていきます。また、薬の処方は医師が行いますが、薬の必要性や起こり得る副作用、薬を飲み忘れてしまう患者さんがきちんと服用できるようにするための工夫は、薬剤師が一緒に考えてくれます。看護師は患者さんの一番近くで寄り添う存在です。

これまでもそれぞれの職種でとてもいい取り組みをしていましたが、横のつながりが少し少なかったように思います。職種同士のつながりを強化し、それぞれの取り組みについて職種を越えて共有することで、患者さんに包括的によりよい医療・ケアを提供できるのではないかと思っています。

また、チーム医療は、「資格を持っているものの活躍が難しかった医療職」に対しても有効に働いています。「心不全療養指導士」という資格があります。様々な医療職が取得可能な学会認定の資格です。当院では2024年3月時点で19名のメディカルスタッフがこの資格を有しており、これらのプロジェクトの推進を通して活躍の場を得られるようになりました。「活躍の場があること」は、彼らのやる気をアップさせることにも役立ちます。心不全の患者さんが増えていく中で、どのように対応しサポートしていくべきかということを考えられる土壌を作れたことが、このチーム医療の大きな成果だと思います。

地域医療の発展のためには「情報の共有」「顔が見えるコミュニケーション」が重要

地域医療を円滑に進めるために必要なキーワードは、

  • 顔が見えること
  • 情報共有がされていること
  • コミュニケーションがしっかり取れていること

の3つです。

先程も述べましたが、病院・地域、それぞれの得意分野を活かしながら、顔を見てコミュニケーションをとりながら、情報を共有していくことが大事だと考えています。「病院から地域医療へ」という意識を持って、心不全診療に携わっています。「心不全サポート事業」を通して、地域で患者さんを診ていただいている先生方やメディカルスタッフの方々との顔のみえる連携もすすめています。事例を通してディスカッションを行うのですが、病院側・地域側の意見をお互いきくことは大変勉強になります。また、地域で心不全患者にかかわる医療・介護専門職を対象としたWEB勉強会も多く企画しました。

当院の心不全療養指導士が中心にテーマを考え、50~100人規模で開催しています。また、私たちは心不全に関する教育動画の作成もしていますが、その使用許可を求められることもあります。この教育動画は患者さん・ご家族向けに作成したものですが、地域の医療・介護専門職の知識向上にも活用できると思います。

東京女子医科大学病院は大学病院ですが、地域からの問い合わせを効率よく受けられるような体制の構築もすすめています。近年、ICT(情報通信技術)の進歩は目覚ましいですが医療における利用はまだ十分だといえません。心不全サポート病院として、地域での心不全診療をサポートしていける体制を構築していきます。

患者さんと伴走できるやりがい、チームでいろいろな仕事をする喜び

初めに、「循環器内科は女性では厳しいよ」と言われたことがあるとお話ししましたが、なってみると性別はあまり関係なかったなと思いました。患者さんには当然女性もいるし、患者さんに寄り添える男性・女性、両方の医師がいた方が絶対良いです。

循環器内科のなかでも重症心不全の領域では、比較的若い患者さんの治療にあたることが多いのですが、そのようなときによく思うのが、「自分たちは、患者さんと伴走している」という意識です。心不全は、「完全に治る」ということはありません。チームで患者さんと伴走し、患者さんに治療の選択肢を提示し、患者さんと一緒に考えながら治療をすすめていきます。良いときも悪いときも患者さんと向き合い、患者さんとの付き合いは長く濃いものとなります。それに伴う責任も大きいですがやりがいも大きいです。

その人にあった治療を提供できたり、目的としたところまでたどり着けたりしたときに得られる喜びは非常に大きいものです。このような喜びを得られるのは、この分野ならではのやりがいと言えると思います。

この道を進もうとする学生さん・研修医の方へ

循環器内科を志そうとしている学生さん・研修医の方に対して言いたいのは、「東京女子医科大学は、心臓に関する全ての治療の選択肢を提供できる病院である」ということです。

大学病院は病気を治す場所であると同時に研究施設でもあります。また、カテーテル・画像診断・リハビリ・病理などの専門の先生も多くいます。多くのチームメンバーで構成されるチームであり、若手医師も積極的に発言できる環境が整っています。若手医師の育成にも力をいれています。チームで治療をしていった先に得られる喜びは、1人で治療にあたったときよりも何倍も大きいです。うまくいかないときもチームに支えられることも多いです。「一緒にやっていきたい」「ここで循環器内科医としての一歩を始めたい」という方に対して、私たちはいつも門戸を開いているので、チームの一員になってくれると嬉しいです。

Q & A

Q1.心不全の予防や、なりやすい人について教えてください

心不全の早期発見は難しいですが、血圧・むくみ・体重など自己管理として記録をとっていき、「いつもと違うこと」に気づけるようにしておくと、早めに対処でき増悪を防ぐことができるかもしれません。「むくみがひどい」「階段を1階上っただけで息切れする」というのは危険信号です。なお、心不全は男性・女性どちらにも起こり得ます。高血圧や糖尿病、加齢は危険因子の一つとして知られています。

Q2.心不全増悪を防ぐためにはどのような生活を送る必要がありますか?

まず、もっとも大切なのは「無理をしないこと」です。息苦しくなるような活動はやめ、頑張りすぎないようにしてください。塩分の取りすぎはよくありません。食事の内容に気を使い、処方された薬を飲み忘れないようにしてください。また、きちんと通院してください。心不全を発症していない方は健康診断を受けるようにしましょう。

Q3.家族が心不全で入院した場合、家族ができることはありますか?また退院後はどのような点に気を付けたらよいでしょうか?

退院後も生活は続いていきます。患者さんに対して行う栄養指導にはご家族も可能な限り同席していただいています。患者さんが気をつけなければならないことをご家族も知っておくことは大事だと思います。入院中や退院後に患者さんがご家族に弱音や愚痴をこぼすこともあると思います。話を聞いていただき、家族としても治療や薬、通院の必要性を伝えたり、患者さんをサポートしたりしていただけると嬉しいです。

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