「不安」が、「笑顔」「できる」に変わっていくのを見る喜び

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「不安」が、「笑顔」「できる」に変わっていくのを見る喜び
お名前 鈴木 詩織
担当部署 リハビリテーション部
役職 作業療法士主任

作業療法士は、リハビリに携わり、患者様が日常生活を送る手助けをする仕事です。

「多くの人は、リハビリを初めて開始する前には不安を抱くことがあると思います」と、作業療法士である鈴木さんは語ります。
「そしてその不安が、リハビリを続けていくなかで、『できる』という自己肯定感や笑顔に変わっていくのを見るのが、この仕事のやりがいです」と続けられた鈴木さんに、作業療法士になったきっかけや東京女子医科大学病院で働く魅力、そして同じリハビリテーション職である理学療法士・言語聴覚士との違いなどについてお聞きしました。

図書館で出会った「なるにはBOOK」がこの道に入るきっかけになった

私が作業療法士になったのは、1冊の本が理由です。

進路に悩んでいた高校時代に、図書館で「〇〇になるにはBOOK」をいろいろ読んで、医療従事者になりたいなぁと考え始めました。また、「患者様とたくさん関われる仕事だ」と漠然と思ったのがきっかけです。

その後大学の説明会に行って、作業療法士の道に進むことに決めました。


福祉住環境コーディネーター2級の資格も持っています。学生時代に興味を持ったのがきっかけで、在宅支援などに生かせると思い取得しました。

関われる疾患が多く、さまざまな年齢の人と関われるのが大学病院で働く魅力

作業療法士の担当領域は多岐に及んでいて、身体障害領域・精神障害領域・発達障害領域・老年期障害領域、就労支援などその他さまざまな領域で活躍されている方がいます。そのなかでも、私自身は身体障害領域・精神障害領域・発達障害領域でのリハビリを担当しています。同じ身体障害領域でも、疾患によってリハビリの内容が違います。東京女子医科大学の場合は大学病院という特性から、多様な疾患の方々が入院されており、さまざまな疾患の方を担当しています。

また年齢層も多岐にわたっていて、小さなお子さんから100歳のご高齢の方までいらっしゃいます。このように、さまざまな年齢・疾患に関われるのが、当院で働くメリットだと考えています。


また、東京女子医科大学病院リハビリテーション科では、研究や発表、大学院に行きながら働くといった多様な働き方が認められています。さらに、地域連携医療に関わっている人もいますし、男性も女性も子育てしながら働き続けています。先輩方がそのような働き方をしてきたので、相談しやすい環境が整っていると思います。「大学院に行きたい」などの相談をすることもできます

リハビリテーションに関わる仕事、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士

リハビリテーションに関わる代表的な仕事として、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士があります。このあたりについてお話します。


作業療法士は、着替えや歯磨きなどの日常の生活ができるように練習をしたり、字を書く練習など指先の細かい作業も行います。また、記憶力の低下や、集中できないなど注意力の低下といった高次脳機能面の問題に対しては脳トレのようなリハビリも行います。

理学療法士は、みなさんがイメージしやすいリハビリを行っていることが多いかと思います。立つ・歩く・座るなどの基本動作に関わるリハビリを行ったり、呼吸機能改善ためのリハビリ循環機能改善のためのリハビリなどに関わります。

言語聴覚士は、さまざまな原因で起こる言葉に関するコミュニケーション障のリハビリを行います。たとえば発声・発音・読み書きの練習などです。さらに、食事に関して食べたり飲みこんだりするのが難しい方には、飲み込み(嚥下)の評価や訓練も行います。


このようにしてリハビリテーション職は3つの役割に分かれていますが、実際の現場では職務領域が重なることもあります。お互いに進捗状況を共有しながら、一人の患者様に対していろいろなリハビリテーション職が関わって訓練していくわけです。

「不安」が、「笑顔」「できる」に変わっていくのを見る喜び

医師の処方の元、リハビリテーションが行われる

作業療法士の仕事の流れについてもお話します。

病院によって異なりますが当院の場合は、

  1. 患者様が入院している科の医師から、リハビリの依頼が来る
  2. リハビリテーション科の医師が診察を行う
  3. リハビリテーション科の医師が、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士に対して、どんな訓練が必要かの処方を出す
  4. その処方に基づき、リハビリを行う

という流れを取ります。


1日の仕事としては、まず9時にスタッフ全員が参加する会議を行い、連絡事項を共有するところから始まります。そのあと患者様のところに行き、リハビリを開始します。

また、患者様とリハビリを行う以外にも、多職種によるケースカンファレンスや、委員会に参加します。日々のカルテや転院に伴うサマリー(申し送り書)を記載することもより良いリハビリを行うためには大切な業務になります。

「こんなこともできる」という患者様の喜びが、自身の喜びとなる

作業療法士として働く一番のやりがいは、「患者様の前向きな変化」にあります。


病気によって多少異なりますが、リハビリでは何らかの制限がある患者様に対して、能力の回復のための訓練を行ったり、現状の生活をサポートする方法を一緒に考えたりしていきます。


ただ、すべての患者様が、自分の身に起きたことをすぐに受け入れて、リハビリに積極的に取り組めるかというとそうではありません。

ショックを受け、「何もできない」という気持ちにとらわれることもあります開始当初はリハビリに対しても、「あまりやりたくない」という場合も決して珍しくはありません。

そのような辛い思いをしている人に寄り添いながら一緒にリハビリを行っていきます。


入職して間もないときに担当していた患者様も、やはり初めは不安感が強く、リハビリにも消極的でした。私自身もまだ若く、うまくいかないことも多くて手探りな状況でもありました。

ただリハビリに取り組んでいくなかで徐々に笑顔が見られるようになり、今後の目標「これをやってみたい」という希望も聞けるように変化していきました。特に調理訓練のときに、「こんなこともできるんだ、うれしい」と話され、外泊の際「この前、リハビリでやってみたから料理作ってきたよ」と、実際に家でも調理をしたことを嬉しそうに報告してくださいました。また、ご家族からも感謝のお言葉を頂き、とてもうれしかったです。

このような患者様の「変化」を経験させていただいたことは、いまでも忘れられない思い出です。

一朝一夕で終わるものではないからこそ ~関係性構築と傾聴が重要

リハビリは一朝一夕で終わるものではなく、長い時間が必要です。

そうした長いお付き合いの中で、私が大切にしていることは、患者様とよりよい関係性を構築することです。


関係が浅い段階では、患者様もなかなか率直な気持ちを吐露することができません。そのため、まずは関係性の構築に努める必要があります。お話しをきくときは傾聴の姿勢をとり、「話を遮らない」「頷きを入れる」「否定しない」などの原則を意識しています。加えて、ノンバーバルコミュニケーション(「言語」ではなく、表情や声のトーンを介したコミュニケーションのこと)も大切にしています


また、リハビリスタッフには直接話せないことや、リハビリでは見せない患者様の側面などもあるため、ほかの医療従事者や、ご家族とも情報共有を行っています。


さらに、関係性構築後も、当然のことですが、スタッフ主体のリハビリとならないように、「医療者ではなく患者様が主体になるのだ」ということを常に意識し、患者様の気持ちや思いを尊重した形でのリハビリを患者様と一緒にできるように心がけています。

患者様へ ~「不安」を、遠慮なくリハビリスタッフに伝えてください

リハビリは最近はメディアでも取り上げられていることもあり、身近な存在になっています。

ただそれでも、ご自身が取り組まれるときには不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうかそうした気持ちが生じることは当然のことだと思います。ご不安があれば、担当のスタッフに伝えてください。その上で、一緒に能力が改善する方法や、快適に過ごせる方法を一緒に考えていきますので、一人で抱え込まないで大丈夫です。

Q & A

Q1.作業療法士、理学療法士、言語聴覚士って違うものですか? また、脳卒中のリハビリとはどんなものですか。

脳卒中の場合は、当院では発症早期からSCU(脳卒中集中治療室)にてリハビリを行っております。

脳卒中の症状は人それぞれで多様にあります。その症状に応じて異なる職種の療法士がリハビリを行っていきます。

例えば、麻痺があってうまく歩けない場合には理学療法士が担当し、歩く練習を行います。指先の感覚が弱くて、箸がもてない場合には作業療法士が担当し、箸の練習や指先の細かい動きの練習を行います。また、言葉がうまくいえない場合には言語聴覚士が担当し、お話の練習を行います。

このように、療法士によって担当する分野は異なります。一方で、例えば食事がうまくできない場合には、座る練習を理学療法士と、箸の練習を作業療法士と、飲み込みの練習を言語聴覚士と行うなど、一つの動作を獲得するために、異なる分野の療法士が協力しながら、リハビリを行っていくといった側面もあります。

脳卒中以外も、各疾患や症状によってリハビリは異なります。簡単にではありますが、当院当科のホームページにも記載しておりますので、ご参照いただけると幸いです。

Q2.リハビリをするときに痛みはありますか?

必ずしも痛みが生じるというものではありませんが、痛みが出てもリハビリをやっていかなければならないこともあります。
ただ、痛みを我慢していただく必要はありません。痛いと感じた場合は担当の療法士に相談してみてください。この場合は、「どこが」「どんなタイミングで」「どれくらい(10段階)」痛いのかを伝えてもらうと、とても助かります。痛みの原因を考え、より良いやり方を模索していきやすくなります。

Q3.家族がリハビリに行きたがりません。どのような声かけをしたらよいでしょうか?

「行きたくない」という気持ち自体は否定せず、「なぜ行きたくないか」の理由を聞いてみてください。「外出が嫌」「ベッドから出るのがおっくう」「改善がみられなくてやる気が出ない」「スタッフの対応が合わない」など、「行きたくない理由」はそれぞれ違いますし、その理由によって対応方法も異なります。
リハビリスタッフに相談が難しい場合は、ケアマネージャーや看護師など、相談しやすいスタッフに相談していただいても大丈夫です。ご家族だけで抱え込まないようにしてください。

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