卒後臨床研修センターだより

さまざまな説明会やオリエンテーション、学会に参加する研修医たち。
貴重な体験報告や、臨場感あふれる行事の様子など月毎にお知らせします。

2015年2月号

自分自身の研修を振り返って、何ができたか、何を学んだか、将来どんな医師になりたいか

卒後臨床研修センター 2年次研修医 飯田達郎

 私は、この初期研修医の間に東京女子医科大学病院の様々な診療科をローテーションした。大学時代は、6年間基礎医学、臨床医学を座学で学び、1年間臨床実習を行った経験があったため、今思えば、医師になってからも何とかなるであろうという軽い気持ちが、心の片隅にあった。しかし、実際には自分が思うように臨床の世界は甘くないことを実感した。今まで6年間必死に勉強してきた膨大な量の医学的知識は、ほんの一部でしかなく、それを土台として根拠に基づいた最新の医療が当然のように繰り広げられていた。今まで学んできた医学知識を復習して自分のものにしつつ、実際臨床で行われている最新の医学知識を新たに学ぶことに必死であった。


 しかし、それだけでは一人前の医師になれないこともわかった。同じ人間である患者を相手にする職業であるため、患者とのコミュニケーションが非常に重要になってくる。患者は、疾患によっては自分の将来に関わることであるため、医師に身体のすべてをゆだねる。これは患者にとって、計り知れない思いの決断であり、医師に対して最大の信頼があってこその決断である。私たちはこれに全力で答えなければならない義務がある。入院時、初対面の医師に対して患者が信頼をおけるはずがない。経験が浅い研修医が患者の信頼を得ることは簡単ではないことを実感した。そのため、入院中のコミュニケーションが鍵となってくる。患者の現病歴、既往歴等基本的な情報を短期間ですべて頭に入れるのはもちろんのこと、時には患者の人間関係や社会的問題、経済的問題にまで踏み込まなくてはならない。患者と接する時間が長ければ長いほど、また、コミュニケーションを築けば築くほど、患者から重要な訴えを得ることができることも学んだ。

 

 しかし、それだけではまだ一人前の医師にはなれないことがわかった。医療は医師と患者だけで成り立つものではない。看護師、薬剤師、臨床検査技師など、大勢のメディカルスタッフの方々に支えられて成り立っている。私たちの見えないところで、私たち医師のために必死で働いているスタッフがいる。周囲のスタッフの方々とのコミュニケーションも患者の治療にとって非常に重要になってくることも実感した。患者のそばに常に寄り添う看護師は、医師よりも患者の今の状況を知っている場合がある。患者にとって、医師には言えないが、看護師には言えることもあるだろう。このような情報は、周囲のスタッフとの信頼関係を築けなければ、得られないことがわかった。


 この初期研修医2年間は非常に短かったが、医学的知識のみならず様々なことを学んだ気がした。患者からの信頼を得ることはもちろんのこと、医療を支えているメディカルスタッフの方々からの信頼も得る医師にならなければならない。そのためには、正確かつ、その場に応じた的確な指示を出せる、生きた医学的知識を日々更新し続ける医師に、私はなりたい。

卒後臨床研修センター 2年次研修医 鈴木智子

 私は、仕事の要領も決して良い方ではなく、手技が極めて上手な方でもなく、研修生活が始まってすぐは、同期の仲間と比べて自信のかけらも持てなかった。しかし、人と会話することは昔から大好きなので「患者さんと接する時間」を誰よりも大切にし、濃密にしようと心掛けた。毎日欠かさず患者さんの訴えを聞き、診察をし、他愛もない会話もたくさんした。忙しいと心に余裕がなくなることも多々あったが、そんな時こそ患者さんの一つ一つの言葉や笑顔に癒され、人間としての温かみを感じ、明日へのモチベーションへとつながっていった。


 新しい診療科の研修が始まる時は常に、その科特有のこれを学びたい、この手技を経験したいなど具体的な目標をたて、それに向けて努力した。研修医の間にあれもこれも学ばなければと焦った時期もあったが、実際の症例を目の前にして困ったり、知識不足を実感した時こそ勉強し、また学ぶことが多いと感じた。知識も経験も豊富で尊敬している指導医が「医者になりたての時に指導医から"無知は罪"と教わり、痛感した。」と話してくださり、とても印象的であった。自分が無知であることが患者さんの命にかかわるのだと肝に銘じて、謙虚に勉強を続けようと思った。


 指導医に叱責されたり、患者さんとうまくコミュニケーションがとれなかったり、自分の未熟さに痛感して涙することもあり、自分は医者という職業にむいていないのではないかと自問自答する日々もあった。しかし、それは自分への言い訳であり、つらい時こそ自分への試練だと思い直し、今の自分に何が足りないのか、何を直せばさらにステップアップできるのかを考えるようにした。"人間万事塞翁が馬"は私の座右の銘であるが、研修医の2年間は楽しい経験もつらい経験も、日々の些細な業務も、全てこれからの医者人生につながっていくのだと信じ、何事においても誠実に真摯に取り組むように努めた。


 女子医大で研修し、目標にしたいと感じる先生方と出会うことができた。共通していることは、知識と経験が豊富で、患者さんにも若手医師にも安心感・信頼感を与え、検査結果に固執するのではなく、患者さんを診察することを大切にする、スペシャリティがあり、自分のやりたいことを情熱的に思う存分にされており、なんといっても謙虚である、という点である。私にとってはすぐに達成できることではないが、このような先生方と出会うことで深い感銘を受け、尊敬する先生方を目標に、生涯医師を続けたいと感じ、また、人間として成長していきたいと感じた。


 大学時代に抱いていた医者という職業への憧れ、国家試験に合格した時の喜び、研修医1年目4月の病棟勤務初日の当直で、心肺停止状態の患者さんを目の前に立ちつくし、何もすることができなかったあの時の自分。いつまでも初心を忘れず、純真に堅実に精進していきたい。

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