内分泌外科
診療内容
当科では、甲状腺、副甲状腺、副腎などのホルモンを作る臓器に発生する腫瘍、またホルモン過剰症の診断と治療を専門としています。そのため、周術期のホルモン動態の変化に対応できるよう、内科的知識も持ち合わせている稀有な外科医でもあります。「内分泌外科」は聞き慣れない診療科かもしれませんが、海外ではEndocrine Surgeryとして確立されています。頻度が決して高い疾患ではないですが、故に専門性が高く、スペシャリストとしての自覚を持ちながら診療を行っています。そして高度な医療を提供できる大学病院の特徴を生かし、患者さんに安全な医療を提供できるように心掛けています。
対象疾患
甲状腺
甲状腺癌の手術方針を決めるには癌の進行度合いを見極めることが重要です。我が国の診療ガイドラインに即し、適切な管理方針を選択しています。1cm以下の経過観察も可能な乳頭癌には、手術または経過観察の選択を患者様と相談し決定しています。甲状腺良性腫瘍については頚部からアプローチする従来法に加えて、前胸部から内視鏡的にアプローチする内視鏡下甲状腺手術 Video-assisted neck surgery (VANS) を2022年から導入しました。
副甲状腺
原発性副甲状腺機能亢進症は我が国でも有数の手術症例数を経験しています。摘出すべき病変の位置を正確に診断することにより完治を実現し、手術成功率(治癒率)は99%です。極めて稀な副甲状腺癌症例も40例以上の経験を有し、的確な診療の確立に努めています。
副腎
副腎腫瘍に対しては腹腔鏡下手術を標準術式としています。二次性高血圧の原因となるアルドステロン症、クッシング症候群、そして褐色細胞腫の外科治療が主ですが、副腎皮質癌の診療も行っています。
多発性内分泌腫瘍症
遺伝性疾患である多発性内分泌腫瘍症(Multiple Endocrine Neoplasia: MEN)の診療も行っています。MEN1型の副甲状腺機能亢進症では過不足のない治療を目指して適切な術式を個別に検討・判断します。消化器科や内分泌内科と連携し治療に当たります。MEN2型では遺伝子診断を行い、甲状腺髄様癌では腫瘍マーカー正常化を目指した根治手術を行う一方、両側副腎褐色細胞腫では機能温存の可能性を念頭に置いて管理方針を決め、治療に関しては当科で全て完結できます。また遺伝子陽性・未発症の保因者に対しては専門医として的確な医療情報を提供し、慎重な対応を心掛けています。
診療実績
2021年 | 2022年 | 2023年 | ||
甲状腺 | 乳頭癌 | 52 | 42 | 63 |
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濾胞癌 | 3 | 0 | 1 | |
髄様癌 | 2 | 6 | 3 | |
癌再発 | 13 | 9 | 11 | |
その他の悪性腫瘍 | 2 | 1 | 1 | |
良性結節 | 16 | 31 | 31 | |
バセドウ病 | 6 | 10 | 14 | |
その他の甲状腺腫瘍 | 11 | 5 | 13 | |
副甲状腺 | 原発性副甲状腺機能亢進症 | 39 | 55 | 57 |
続発性副甲状腺機能亢進症 | 2 | 4 | 4 | |
その他 | 2 | 4 | 1 | |
副腎 | 原発性アルドステロン症 | 10 | 2 | 4 |
クッシング症候群 | 6 | 6 | 6 | |
褐色細胞腫 | 9 | 5 | 4 | |
その他 | 5 | 2 | 1 | |
計 | 178 | 182 | 214 |
部門HP
2024年4月1日現在
緑文字 =予約外 紫文字 =救急当番 茶文字 =予約外+救急当番
★:教授 ☆:臨床教授 ◎:准教授 △:臨床准教授 ◆:講師 ◇:准講師
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | |
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午前 |
◇吉田 有策 |
◎堀内 喜代美 柳田 充郎 |
◆尾身 葉子 |
◆尾身 葉子 中居 伴充 |
◎堀内 喜代美 ◇吉田 有策 |
山梨 裕希 |
午後 |
◎堀内 喜代美 柳田 充郎 |
◆尾身 葉子 中居 伴充 |
◇吉田 有策 山梨 裕希 |
-
准教授
堀内 喜代美ほりうち きよみ
専門分野 内分泌腫瘍(甲状腺・副甲状腺・副腎)
認定資格 日本外科学会 認定医・専門医・指導医
日本内分泌外科学会 内分泌外科専門医・指導医
日本乳癌学会 乳腺認定医・専門医
日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍指導医
小児慢性特定疾病指定医(東京都)
乳がん検診超音波検査実施・判定医師 -
講師
尾身 葉子おみ ようこ
専門分野 内分泌腫瘍(甲状腺・副甲状腺・副腎)
認定資格 日本外科学会 認定医・専門医・指導医
日本内分泌外科学会 内分泌外科専門医・指導医
日本乳癌学会 乳腺認定医・専門医・指導医
日本甲状腺学会 専門医
細胞診専門医 -
准講師
吉田 有策よしだ ゆうさく
専門分野 内分泌腫瘍(甲状腺・副甲状腺・副腎)の外科治療、内視鏡手術
認定資格 日本外科学会 専門医・指導医
日本内分泌外科学会 内分泌外科専門医・指導医
日本甲状腺学会 専門医
日本がん治療認定医機構 認定医 -
助教
柳田 充郎やなぎだ じゅうろう
専門分野 内分泌腫瘍(甲状腺・副甲状腺・副腎)
認定資格 日本外科学会 専門医
日本内分泌外科学会 内分泌外科専門医 -
助教
中居 伴充なかい ともよし
専門分野 内分泌腫瘍(甲状腺・副甲状腺・副腎)
認定資格 日本外科学会 専門医
日本内分泌外科学会 内分泌外科専門医 -
助教
山梨 裕希やまなし ゆき
専門分野 内分泌腫瘍(甲状腺・副甲状腺・副腎) 認定資格 日本外科学会 専門医
研究内容
- 甲状腺乳頭癌中間群(Intermediate risk)の外側区域リンパ節転移陽性(cN1b)症例における治療方針
- 縦隔副甲状腺腫瘍の手術における頚部操作適応症例の検討
- 原発性副甲状腺機能亢進症患者の尿中カルシウム排泄量が尿路結石発生におよぼす影響について
- 副甲状腺異型腺腫についての臨床病理学的検討
- 原発性副甲状腺機能亢進症における腫瘍体積を術前臨床データから予測する
- 縦隔リンパ節転移のある甲状腺分化癌の予後と、系統的リンパ節郭清範囲決定の試み
- 非手術・経過観察中の原発性副甲状腺機能亢進症における、患者視点からみた健康状態
- 無症候性甲状腺乳頭癌の臨床病期と予後
- 副腎腫瘍の良悪性鑑別診断における単純CT値の妥当性と再現性
- 遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群(HPPS)の遺伝子解析の方法と評価に関する研究
- がんの診断、治療、予防を目的としたウイルス発がん機構の研究
- 患者視点から見た無症候性微小乳頭癌の治療法別横断的/縦断的アウトカム研究(多施設共同)
- 甲状腺癌のオンコマイン Dx Target Test マルチ CDx システム解析結果の多機関共同集積研究(多施設共同)