歯科口腔外科
部門HP
診療内容
歯科口腔外科では、歯・口・顎の疾患の治療を行っています。
当科には、口腔外科、口腔がん、顎変形症、顎関節症、歯科インプラントなどの専門医が所属しており、親知らずの抜歯、口腔がん、顎変形症、顎関節症、歯や口の外傷、顎の骨折、歯が原因の炎症などの口腔外科疾患の診断と治療を専門的に行っております。
睡眠時無呼吸症候群の治療においては、睡眠科と連携して口腔内装置の作製を行っており、心臓病、糖尿病、腎臓病、血液疾患などを有する患者さんの抜歯は院内の関連する診療科と連携して行っています。
外科処置後の義歯の作製や歯周病、虫歯治療などや定期的な口腔内のメンテナンスなどは地域の歯科医院に紹介を行うことがあります。
対象疾患
口腔がん
顎変形症
歯科インプラント治療
親知らずの抜歯
顎骨のう胞・腫瘍
顎関節症
薬剤関連顎骨壊死、放射線性顎骨壊死
口内炎・口腔粘膜疾患
唾液腺疾患(顎下腺・舌下腺)
歯や口の外傷、顎の骨折
歯が原因の炎症、感染症
口腔機能低下症
睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置作製
診療実績
令和5年度 | 令和4年度 | 令和3年度 | |
---|---|---|---|
口腔がん | 17例 | 32例 | 26例 |
顎変形症 | 49例 | 46例 | 20例 |
のう胞・良性腫瘍 | 81例 | 83例 | 85例 |
顎骨骨折 | 18例 | 26例 | 18例 |
歯科インプラント治療 | 55例 | 61例 | 55例 |
口腔がん(舌がん・歯肉がん・頬粘膜がん・口底がん・口唇がん・唾液腺がん)
- 口腔がんとは
舌、上下の歯肉(歯ぐき)、頬の粘膜(ほっぺたの粘膜)、口蓋(上あご)、口底(舌と下の歯ぐきの間)、口唇(くちびる)など、口の中にはどこでも癌ができます。
口腔がんのうち約60%は舌がんです。
最も発症する年齢は60代ですが、20~40代の若年者の発症も近年増加しており注意が必要です。
90%は扁平上皮癌という種類の癌で、その他には唾液腺癌、悪性リンパ腫、悪性黒色腫(メラノーマ)、肉腫などが発生します。 - 原因
口腔がんが発症する原因は明らかになっておりません。
危険因子として喫煙や過度の飲酒、虫歯や適合の悪い詰め物、入れ歯、傾いた歯などが粘膜にあたることによる物理的な刺激、口の中の不衛生などがあります。
また、口の中にできた白板症や紅板症,扁平苔癬,乳頭腫などの粘膜の病気は悪性化(癌化)する可能性があるため切除や経過観察が必要です。 - 症状
腫瘍の広がりの特徴から表在型(粘膜の表層で広がるもの)、内向型(内側に向かって広がるもの)、外向型(外側に向かって広がるもの)に分けられています。
病状が進むにつれて食べる、飲み込む、発音する機能が障害されていきます。
また、首のリンパ節に転移した場合はリンパ節が腫れます。
さらに進行すると、肺、骨、肝臓などの他の臓器に転移していきます。
以下のような症状がある場合は、速やかにかかりつけの歯科医院や口腔外科を受診されることをお勧めいたします。- 口内炎が2週間以上経っても治らない
- 舌やほっぺたの粘膜にしこりがある
- 舌や口の中の粘膜が白くなっている
- 表面がざらざらしたできものがある
- 出血しやすい口内炎がある
- 抜歯した後の歯茎の治りが悪い
- 治療
口腔がんの治療は、手術、放射線治療、抗がん剤治療、免疫療法を単独もしくは組み合わせて行います。
当院は日本がん治療認定医機構、日本口腔腫瘍学会、日本口腔外科学会などの認定研修施設であり、口腔がんの治療は口腔癌診療ガイドライン、頭頸部癌診療ガイドラインに準じて行っております。
また、形成外科、耳鼻咽喉科、放射線腫瘍科、化学療法科、リハビリテーション科、集中治療科などの関連診療科とともにチーム医療で診療にあたります。
手術
がんは目に見える範囲にとどまらず周囲に広がっています。
そのため、がんの周囲の正常な組織もある程度含めた切除が必要です。
当科ではCTやMRI、PET-CTなどの画像検査に加えて、手術中にヨードによる生体染色や迅速病理診断(ゲフリール)を組み合わせることで確実ながんの切除を行います。
また、術後の口腔機能を考慮し、切除が広範囲になる場合は形成外科の協力のもと再建手術を行います。
首のリンパ節に転移の疑いがある場合などは頸部郭清術も同時に実施します。
口腔がんの手術は、食べる、飲み込む、発音するなどの口腔機能に大きく影響を与える可能性が高いため、当科ではリハビリテーション科や言語療法士等とともに術後のリハビリテーションに積極的に取り組んでおります。
放射線治療
がんが大きく、手術では切除が困難な場合や術後の補助療法(再発予防のための治療)として放射線治療を行います。
当院では強度変調放射線治療(IMRT)という、正常な組織への放射線照射をなるべく抑えつつ、がんに集中して照射ができる放射線治療装置を用いた治療を行っています。
放射線腫瘍科へ
抗がん剤治療・免疫療法
がんが他の臓器に転移してしまった場合や術後の補助療法として抗がん剤による治療を行います。
抗がん剤による治療は、場合によって抗がん剤治療を専門とする化学療法科や各専門領域の内科などとともに治療にあたっております。
顎変形症
顎変形症とは、上下顎骨の劣成長または過成長によって①審美的障害②咬合障害(かみ合わせの不具合)③口腔機能障害(話しにくい等の症状)④精神心理障害などの症状を示します。
顎の骨に原因があるため、歯列矯正治療だけでは改善が見込めません。
診断法
レントゲンや歯列模型等の資料から分析を行い、手術を併用した矯正治療が必要であるかを判断します。
診断は口腔外科医と歯科矯正医の連携の元で行われます。
治療法
- 治療の流れ
- 診断
- 術前矯正治療
- 全身麻酔下に外科的治療(顎骨を切断し、金属プレートで正しい位置に固定する手術)
- 術後矯正治療
- プレート抜去術、オトガイ形成術等
- 外科的治療の種類(当院で行う代表的なもの)
- 下顎枝矢状分割術(SSRO:Sagittal Split Ramus Osteotomy)
下顎骨を矢状方向に分割し、金属プレートで固定する手術。
適応範囲が広く、術後の顎間固定が必要ない等のメリットが多いため、最も多く行われる手術です。 - 下顎枝垂直骨切り術(IVRO:Intra Oral Vertical Osteotomy)
下顎骨を歯のない部分で縦に分割する手術です。
金属プレートでの固定は行いません。
そのため顎関節に負担の少ない手術ではありますが、一般的に術後に上の歯と下の歯を数週間にわたって固定し(顎間固定),噛み合わせを定させる必要があります。
顎間固定中は,口を一切開くことが出来ないため身体への負担が大きいだけでなく,顎間固定中に嘔吐をすると窒息のリスクがあります。
そのため,当科では顎間固定は行わず,ゴム牽引のみ行っています。 - Le FortI型骨切り術(ルフォーI型 骨切り術)
上顎骨切り術として最も多く行われます。
通常、下顎枝矢状分割術を併用します。
上顎骨を鼻の下で水平に切断し、金属プレートで固定する手術です。 - 上顎前方歯槽骨切り術
上顎の左右の犬歯から犬歯間の歯槽骨を骨切りしてプレートで固定する手術です。
上顎前突に対する手術として行われます。
Wassmund法をはじめ、Wunderer法やCupar-Epker法などさまざなな方法がありますが、当科では前歯を後上方に移動させることが多いため(著しい上顎前突症例)、Cupar-Epker法を主に行っています。 - Le FortI型骨切り術+馬蹄形骨切り術併用術
上記のLe fortⅠ型骨切り術に馬蹄形骨切り術を併用する手術です。
上顎の上方移動あるいは後方移動量が大きい場合に上顎骨の口蓋部分の馬蹄形骨切りを併用することで骨同士の干渉を減らして移動しやすくすると同時に骨の削合量を減らすことができます。 - Le FortI型骨切り術+ASO(上顎前方歯槽骨切り術)
上記のLe FortI型骨切り術にWassmund法を併用する方法です。
上顎の前方と後方で異なる動きをすることができます。
- 下顎枝矢状分割術(SSRO:Sagittal Split Ramus Osteotomy)
親知らずの抜歯
一般的に「親知らず」と呼ばれる歯は「智歯(ちし)」といい、前歯の中央から数えて8番目の歯を指します。
抜歯は一般の歯科医院でも行っている治療ですが、智歯が顎の骨に深く埋まっていたり横向きに生えていたりすると、抜歯が困難になることがあります。
一般的な埋まっている親知らずの抜歯方法
歯の周りの歯茎を切開して、歯槽骨(歯の周りの骨)を削り、歯をいくつかに分割して抜歯します。切開した歯茎は縫合します。
埋伏歯の位置や角度など状態によりますが、抜歯時間は10分〜1時間程度です。
抜歯後は腫れ、痛み、開口障害が発現する場合があります。
抜歯後の注意事項
抜歯当日は激しい運動や長時間の入浴、飲酒は控えましょう。
出血や痛みの原因となるため、血行が良くなる行為、傷口を手や舌で触れて刺激を与える行為は避けてください。
抜歯後なかなか出血が止まらない時は、清潔なコットンやガーゼを小さく切って丸め、抜歯した部分において10分程度強めに噛んでください。
歯科インプラント治療
インプラント治療は、歯を失った際に行われる治療の一つです。
正確には”歯科インプラント治療“ですが、単にインプラント治療あるいはインプラントとも一般に呼ばれるほど普及してきています。
入れ歯やブリッジの代替となる新しい治療法であり、あごの骨(歯茎の骨)に埋め込む人工の歯根のことをインプラントと呼びます。
埋め込み処置後、通常2-3ヶ月で骨と一体となり結合してきますので、その後に”かぶせ物“を装着します。
入れ歯やブリッジと違って、隣の歯に負担が掛からないため、隣の歯の寿命を縮めることがないのが一番の利点です。
そのかわり、土台となる骨がしっかりとしていないと(骨の幅や高さ、あるいは密度が確保されていないと)インプラントを埋め込むことはできません。
しかし、当科では口腔外科の治療技術を応用して、土台となる骨を造る治療(骨造成術、いわゆるGBR)にも対応しており、一般歯科医院で断られたようなあごの骨の痩せた患者さんでも治療可能となっております。
1歯の欠損に対しては1本のインプラントを埋め込みますが、複数歯の欠損に関してはインプラント同士でブリッジにして埋めこみ本数を減らすことも可能です(残念ながら、インプラントと自分の天然歯をつなげる設計はできません)。
他にも、総入れ歯が安定しないような患者さんでは、インプラントを最小で2本埋め込んで、つけ外し式の入れ歯とアタッチメントで脱着させることによって、入れ歯を劇的に安定させる方法もあります(インプラントオーバーデンチャー)。
基本的に治療には保険の適応はなく自費診療となりますので、検査代や薬代も自費となります。
後述しますが、腫瘍や炎症、外傷によって歯が失われた場合や、先天異常による歯の欠損に関しては、保険が適応となっており、当科も保険のインプラント治療にも対応しています。