体幹部の腫瘍の検出に関しては、18F-FDG-PETはすでに一定の評価が確立しているが、脳腫瘍に関してはこれだけでは診断が困難な症例が多い。脳腫瘍も他の悪性腫瘍と同様に悪性度とFDG集積は相関することがわかっているが、脳はもともと糖代謝が活発であるため、正常でもFDGは高度に集積する。従って腫瘍部分が必ずしも陽性描画できるとは限らず、むしろ周囲の正常組織に比べて低集積として描出されることもある。 外科的摘除や放射線治療の計画をする際の腫瘍境界の判定を目的とした場合、18F-FDGは診断精度において11C-methionineに明らかに劣る。methionineは集積機序として、アミノ酸トランスポーターにより血液脳関門を通過し、蛋白合成により腫瘍細胞の一部として取り込まれるものとされており、アミノ酸代謝の指標となる。一般に正常脳組織はアミノ酸代謝が低いため、腫瘍細胞への集積のコントラストは非常に良い。またこれまでの報告でもmethionineの集積範囲は、FDGの集積やMRI, CTの造影範囲よりも広範であり、腫瘍の範囲を適切に評価しているとされている1)。これまでFDGは組織学的悪性度の診断に有用で、methionineは腫瘍の存在範囲診断に有効であるという考えが多かったが、Katoらはmethionineの集積も、gliomaの生物学的増殖能の指標であるMIB-1 indexとの間にも正の相関があることを示した2)。従って悪性度の診断にも有用であることがわかっている。以上のことより脳腫瘍診断の臨床面で特に応用が期待される核種である。 しかし11Cの物理学的半減期は約20分であり、サイクロトロンの併設が必須であり、施行できる検査数も限界がある。また欧米では保険適応になっている国が多いが、現時点では本邦の保険適応ではなく、限られた施設での検査となっている。