我が国で腫瘍診断にFDG-PETが広く使用されるようになって、すでに10年以上の歳月が経過しました。他の画像診断法と比べて、FDG-PETの診断上の利点のみでなく、限界点も同時に認識されるようになってきました。
臨床使用に当たっては、個々の腫瘍に対するFDG-PETの診断特性を充分理解しておくことが大切ですが、、普遍的な特性を一言で表すとすれば、biological surrogate marker(生物学的な代理指標)となるのではないでしょうか。
- ●FDG-PETは、全身(通常は頭頂部から大腿まで)の範囲でとりあえずの異常部位を見いだすのに適しています。また、全く予想しなかった病変をしばしば発見します。これで見つけた部位をさらにPET/CTのCT部分の情報で位置を同定したり、他の画像診断や生検などで追加確認をします。
- ●FDG-PETの集積程度は、病変のブドウ糖代謝の生物学的活性を反映します。この事は、腫瘍の分化程度、増殖性や、炎症の程度に関連します。治療に伴う代謝活性の変化は、治療効果判定や遺残病変の評価に役立ちます。
- ●FDG-PETの空間分解能はCT, MRIに比べてかなり低いです(通常4〜6mm程度)。このため20mm以下の大きさの病変では、集積程度はブドウ糖代謝活性を正確には反映しなくなります。9mm未満の小病変の評価は臨床的な適応となりにくいです。
- ●腫瘍と非腫瘍の間には、明確な集積程度の差異による判別基準は設定できないというのが最近の考え方です。むしろ、集積程度の差異により、腫瘍である可能性が連続的に変化すると考える方が実態に近いです。FDG-PETを行う前に得られている他の臨床情報(危険因子、血液マーカー、画像診断など)によって評価対象の病変がどの位の確率で腫瘍らしいか(あるいはらしくないか)を推定しておくことは、FDG PETの結果を得た後の総合判定に大きく影響します。
- ●悪性リンパ腫においては、治療効果判定にFDG-PETが有効であるとするエビデンスが示されています。ただし、先行する治療によるFDG集積への影響があるため、化学療法後の場合は治療終了後から最低3週間、できれば6〜8週間あけて行い、放射線療法、化学放射療法後の場合は8〜12週間あけて行うべきとされています。
東京女子医科大学病院 総合外来センター 核医学・PET検査室
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「必携!がん診療のためのPET/CT読影までの完全ガイド」 編集 日下部きよ子 ISBN4-307-07079-8
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