ごあいさつ
この度、2021年6月15日付けで東京女子医科大学 内分泌内科学分野 教授・基幹分野長に就任いたしました。私は群馬県出身で、山形大学医学部卒業ですが、医学部6年生の時に東北大学でIL-6を発見された大阪大学医学部第三内科教授の岸本忠三先生の講演に感激し、臨床に加え基礎研究もしたいと思い、1992年大阪大学医学部第三内科に入局しました。大阪大学医学部附属病院、大阪逓信病院での臨床研修後、1995年第三内科の内分泌代謝研究室(チーフ 笠山宗正先生)に戻り、2000年に医学博士を取得、同年スウェーデンカロリンスカ研究所に留学、核内受容体研究の権威であるGustafsson教授の下、エストロゲン受容体βの心血管における役割の研究に3年間従事しました。帰国後は、診療科再編に伴い、下村伊一郎教授の主宰される内分泌・代謝内科学所属となり、臨床では内分泌・代謝内科学の内分泌疾患診療の中心として、研究では下垂体疾患、副腎疾患などの症例分析、臨床研究、また核内受容体であるグルココルチコイド受容体の基礎研究を行なってきました。対外的には、日本内分泌学会の種々の診療ガイドライン作成に関わり、また厚生労働省の間脳下垂体機能障害に関する調査研究班の研究代表者、副腎ホルモンに関する調査研究班の分担研究者として活動しています。
私が臨床医として理想とする医師の姿勢を示しているハーバード大学教授Jerome Groopmanの「医者は現場でどう考えるか? How doctors think」の「はじめに」の部分を以下に抜粋します。
「アンドッジという若い30代の患者は身体が食べ物を受け付けず、いくら食べてもやせ細り、複数の専門家に診てもらって拒食症、過敏性腸症候群、ついには精神的疾患を疑われ、15年間苦しんでいた。あるときファルチャクという医師を受診した。彼は来院した彼女が持参した分厚いカルテには目もくれずこう言った。
「私はあなたの物語が聞きたい。あなた自身の言葉で」
そして彼は、彼女がセリアック病であることを突き止めた。これは15年間積み重ねられた複数の医師の先入観から離れ、患者自身の物語を虚心に聞くことで病気を突き止めることができたのである。
私は「私はあなたの物語が聞きたい。あなた自身の言葉で」というファルチャク医師の言葉を本当に美しいと思いました。現在はあらゆる疾患にガイドライン、診断基準が提唱され、それにあてはまるかどうかが検討され、自分で考えることがなくなってきています。しかし我々の領域である内分泌疾患は、そのようなガイドライン、診断基準に当てはまらない患者さんが数多くおられます。ファルチャク医師のように先入観にとらわれることなく、患者さんと真摯に向き合い、その中で患者さんのunmet needsに応えることができるphysicianを育てる教室として、東京女子医科大学 内分泌内科学分野を育て、発展させていきたいと考えています。
基本方針 各メンバーの個性を尊重し、かつ相互に尊敬し合い、目的に向かって協力し、最善を尽くす。 Always My Best ! です。