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東京女子医科大学 救命救急センター

主任教授  鈴木 忠

メインテーマ:

    医療現場における急性血液浄化法の普遍化と専門性を目指して

 血液浄化法はもともと腎不全患者のmechanical renal suportを目的として出発し、主に腎臓領域で進歩普及してきました。その技術的進歩は目覚ましく、その後様々な方法も開発され、多種多様の病態、特に急性病態治療手段として臨床的意義が大きくなってきました。今や慢性腎不全患者さんに対する維持透析とは全く別の立場を確保したとも言えます。
 
 現在ではどこの施設でも、またいつでも施行できる普遍性が求められ、同時に高度の医療技術の一つとしての専門性も求められます。「普遍化・普及」と「専門性」は一見すると相反するように見えますが、よく考えますと、この二者は必ずしも相反することではなく、同時進行的、あるいは平行的に達成できると思われます。それが達成して初めて標準的治療として確立すると考えますが、そのためには特に医療現場で解決しなければならない多くの問題があります。
 そこで今回は普遍化と専門性を合わせて一つのキーワードとし、それに直結する様々な問題点の検討を特別企画のテーマとしました。

シンポジウム1「診療科別にみたPMX治療の実態と評価」は多くの施設の複数の診療科の患者がPMX治療の対象となってきた今こそと考え、企画いたしました。診療科による患者の特徴と問題点を検討していただくようお願い申し上げます。

シンポジウム2「急性血液浄化法と倫理的問題」については本学会では、これまで第15回学術集会で特別講演として取り上げられたのみであり、それ以外の特別企画は組まれませんでした。しかし、日頃の診療に直結する重要な問題です。例えば最終的には救命困難と考えられる患者さんに対する血液浄化法をいつまで続けるか、そしてその根拠をどこに求めるか、そのような場合のインフォームド・コンセントをどの様に行うかとか、外国人患者や経済的弱者の患者さんにどの様に対応するか(我々のセンターでは、重症急性膵炎による死者の中に経済的理由により治療途中で治療を拒否した東南アジア人2名がいました)など、様々な倫理上の問題を検討していただきたいと思います。

パネルディスカッション1「急性血液浄化法におけるFutilityと対応」につきましては、急性血液浄化法と一口に言っても、施設によりそのシステムやスタッフ構成が大いに異なり、施設ごとに担当者のストレスや満足度が大いに異なると考えて企画しました。Futilityの観点からどの様な問題点があり、どの様に対処しているかを示していただければと思います。急性血液浄化法に伴う様々な困難を我々仲間の共通認識にすること、そしてその解決を企ることが各々の施設に求められるはずです。そして、それは急性血液浄化法を担当するスタッフが少なくとも便利屋的立場ではなく、主体的立場で業務するシステムの確立のために重要です。

シンポジウム3、シンポジウム4、パネルディスカッション2なども一部にFutilityを念頭にして企画しました。
なお、ワークショップ1「急性血液浄化法における抗凝固剤の問題点と選択」につきましては欧米への我国からの発信を考えました。我国ではメシル酸ナファモスタットが広く採用されています。そして、大変に有用と考えられています。しかし欧米では採用されていなく、私自身も5〜6年前からヨーロッパの研究者に伝えていますが状況は変わりません。そこで本学会でその有用性と根拠を明らかにし、低分子ヘパリン、ヘパリン以外に有用な抗凝固剤があるという重要な情報を発信すべきであると考え企画しました。
 
 以上の考えをご理解の上で多数の応募をいただき、学会当日には活発な議論が展開され、明日の急性血液浄化法の普遍化と担当者の地位の確立がさらに進むことを願っています。
多数の会員諸氏のご参加を期待しております。