活動報告

マンスリーセミナー

マンスリーセミナー Vol.5 イベントレポート

【開催報告】 未来医学研究会 幹事 関谷佐智子

令和2年の初回の講師講演・マンスリーセミナー(“教えてセンパイ”未来医学のマンスリーセミナー令和2年初回は1月9日でした)は東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター分子病態医科学部門 宮崎 徹 教授の講演だ。本年はインフルエンザの大流行や厳しい寒さまだ無く、会場のイノベーション会議室はBMC24, 33, 37,40,42,48,50期また、現役51期のカリキュラム生等が30名近くひしめき合い、盛況だ。

定刻18時半になり、清水会長の紹介からいよいよ宮崎先生のご講演が始まった。トークもスライドも、ご自身も非常にスマートな先生で、お話がすっと耳にはいってくるのが第一印象だった。先生はもともとは消化器内科の医師で、研究のご専門は免疫学、その中でも、ロシアの微生物学者・動物学者のメチニコフが提唱したことに起源するマクロファージ等の貪食効果に注目されてとのことだ(メチニコフは晩年ヨーグルトが体にいいと提唱したらしい。)タイトルの“身体のゴミ”とは何かと言うと、自分自身の通常の生命活動を行う中で蓄積する物質”セルフ・パソジェン”(パソジェン(病原体):Pathogen)のことらしく、例えばアミロイドβ、細胞の死骸などがこれにあたるそうだ。今メディアでもアミロイドβの話は盛んに出ているがこれを掃除するという。こういったゴミが臓器内部蓄積、身体の免疫反応を慢性的に活性化されることで、組織機能が劣化することが慢性疾患の原因となっている。生きている限り溜まるこのゴミ、いかんともし難い。

一方で先生の研究の要、AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)はいつも身体の中では免疫グロブリンIgMに結合している。従って通常には血中にAIMは沢山あるものの、IgMとの複合体なのでうろちょろしていない。ところが、急性の腎不全などの緊急事態が生じるとIgMからポロッと外れて、AIMがゴミの細胞の死骸などにラベルのようにつく。これで身体の元々もつ掃除屋“貪食細胞”が“食べ物”と認識して食べることで掃除しているそうだ。ところがネコ科動物はIgMとAIMの結合が外れないために多くが腎不全になるが、この腎障害のネコに、単体AIM蛋白を血中投与することで腎機能が改善、一方でもう腎障害が進行し、血中の尿毒素(ゴミ)が溜まっているネコにも掃除機能が功を奏し、体調が改善するということで、末期腎不全での透析代替効果もあるそうだ。

さらに、脳についての実験結果は、急性障害により脳に生じたゴミをAIM投与がキレイするという結果を見せて頂いた。しかしながら、急性期には脳―血液関門という脳のバリケードが緩んでいるが、通常は閉まっているので、慢性疾患では脳にAIMを到達させるDDSの必要性も説明いただき、聴講しているBMC卒業生、現役生(未来医学セミナーのネタが得られた?)らと今後なんらかの共同開発が始まるかもしれない。

質疑応答も非常に活発で、その中で先生の研究には、様々な場所での異分野の先生との交流などが発展につながっているなど、様々な方々とのコミュニケーションの重要性についてもお話頂き、非常に感銘を受けた。セミナーのあとは、ご存知会長の馴染みの曙橋付近で、さらに参加者との交流を深めて頂き、とても熱気ある交流会となった。

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